幼児衣装で絵画封印
4.
もし仮に自分がスーパーヒーローであれば、秘めたる力を解放し、最強の悪霊を払うことができるかもしれないのに。
もしマンガの主人公であれば、もしドラマのような奇跡が起きれば、絵にされた人たちもみんな救えるというのに。
「まかさ、コロしてもらえるなんて、思いあがってはいないだろうね」
しかし、イサミはそうではないらしい
「苦しみもがく姿で、わたしを楽しませろ」
この物語のページをめくっても、ハッピーエンドはない。
覚悟して挑んだはずなのに、本当は全く覚悟なんてできていなかった。
「今度の私は、優しくはないぞ」
決して悪霊と目を合わせない。だが肩を叩かれたその瞬間、イサミはヒーロー候補から悲劇のヒロインにもなれない。
このまま誰にも知られることなく、祈る神様すらいない空間で、その他大勢の犠牲者の一人として消えていく。
「うわぁああぁあっ!あ゛っ!ああああああっ!」
身包みを剥がされ、100ほどお尻を叩かれたとき――
イサミは昔、同じ幼稚園のお友達を、たたいてしまったことを思い出した。
「はぁー、はぁーっ、はぁあぁぁ……っ!」
発狂させられ、犬のように徘徊させられ、悪霊の靴を舐めさせられながら――
イサミは、クラスのイジメを見て見ぬふりをしたことをまた、思い出す。
「うぐぁ、あ、あがあぁぁぁぁああああっ」
さらに、また、折檻、折檻――
お尻を滅多打たれ――
一時は皮がめくれたかと思うほど、赤々とした痣はもう二度と消えない――
イサミはさらに子供のころ、捨てられていた子犬を見捨てて帰ってしまったことを思い出す。
「……お゛ぇっ!」
次に、口の中に水道のホースを挿入される――
「おっ、んぉ、おっ、んぅおぉぉおおおおおおおおおお!」
蛇口が回る。大量の水が流し込まれる――
「んおごごごごごっごぉぉぉおおぉ、おおおおおおおおおおおおお!」
それと同じことを罪のないカエルにしたことがある。幼い幼馴染と一緒に、腹を破裂するまでポンプで水を入れ、残酷な遊びで死なせてしまった。
「あばばばばばばばばばばばばっんばばばばばあぁっっっ!」
あの時のカエルと同じ姿で、お腹が、パンパンに膨らむ――
水風船と化した胃袋が、肺や心臓をも押しつぶしていく――
苦しい。あふれた水が逆流し、口や鼻からこぼれ――
「――――――――――っ!」
罰。
これは罰。
きっとバツ。
イズミはこれを、運命だと思うことにし、すべて受け入れる覚悟だった。
「ぐっふっ……」
そしてようやく、自分の首を吊るための準備に入った――
かつて悪霊に逆らった三つ編みの女の子と同じく、それよりもさらに悲惨な末路をたどることとなる。
体型は変わるほど水を注ぎ込まれて、丸々とふくあがった畜生のお腹。
今もまだペットボトル十数本を入れたお腹を抱え、苦しみ呻いているイサミ。吐き出したい気持ちを乗り越えて、裸の彼に新しいお洋服を渡された。
「ぅっぷ、これ、くっ、くるしぃ……っ」
イサミが着せられたのは、ピチピチのレオタード。
巨大ソーセージのごとく肉と脂肪を詰め込んで、息苦しいほど締め付けられる。
レオタードの色合いは紺色と紫が入り混じったビビッドカラーのデザインだったが、スレンダーが魅力の新体操も見るに堪えない。奇形に孕んだお腹を抱えながら鈍痛に耐え忍ぶ姿は、誰しもが目をそむけたくなるほどの卑屈な姿となっていた。
膨らんだお腹に対して脚はおぼつかず、腫れあがったヒップには醜い肉模様が浮かんで見える。
前髪は、オールバックにシニョンというベビーフェイスだったが、大きく広げたおでこには苦悶の表情と大粒の汗が彩り、瞳はかすんでいた。
「どれ、手を貸してやろう」
「あ、あぐ、あ……」
急に紳士的になった悪霊の手を借り、それを阻止ためにやってきたイサミが、自らその足で首吊り台にのぼった。
水を孕んだイサミは自ら自殺用のロープを首に巻き、自らそれを締める。膨れ上がったお腹のせいで足元がよく見えないことが、そのときは妙に気になった。
「手をあげろ……両手ともだ」
「……」
イサミはいうとおりに右手を上げて、天井から伸びたロープに縛られる。
左手もまたロープで釣られ、バンザイしているような格好になる。
「いいぞ。最後は、その足だ」
ゆっくり、股を割るようにして、レオタードのVラインから延びる右脚が持ち上がっていく。
だが、手の時のようにうまくはいかない。
イサミの体は実際の新体操選手のように柔らかくなく、それでも悪霊がロープを引くと、イサミの足の腱に激痛が走った。
「い、いだっ、いだぃ……いだっ!」
「まだだ。そのままもっと高く上げろ」
「あ、あしが、ああああっ!あしが!」
足だけでなく、両腕もまた、これで三方向から延びきっている。美しさよりも今にも切れてしまうなほど痛々しさが残り、肩や股関節も外れるほど鋭利に上がってしまい、太腿の裏がつり、イサミは悲鳴をあげた。
首吊り台に残された片方の足も、決して楽ではない。
それでも悪霊はマリオネットのようにイサミを操り、彼が痛むのも気にせず、いつでも彼の身体をバラバラにすることができる権利を持っていた。
「痛みはやがてなくなる。腕の感覚からなくなり、血が通わなくなり、やがて腐る……だが、関係ない。きみはもうわたしのものなのだから」
「――――っ!」
生きたまま標本にされ、実質的に手足をもがれて青ざめるイサミ。
大量の水で孕まされたお腹を無謀にさらけ出しながら、レオタード服もまた悲しいくらいにイサミの身体を引き立たせる。
「これでいい、これだ……このまま動くな、絶対だ」
「は、は、はい……」
とうとうイサミは顔しか動かせなくなり、頷くことしかできなかった。
そして悪霊は絵を描くために、イーゼルとキャンパス、椅子をおいてそこに座る。
ぐるるるるるるるる……
「あ、はっ……!」
イサミは汗をにじませ、目を激しくしばたたかせ、せりあがる便意にも耐えなくてはならないことを知る。
ぐるるるるるるるるる
「はっ、はっ、はぁ……!?」
今はまだ、耐えられるけど、今は、まだ――
悪霊が絵をかきだしてから、しばらくたった。
当然だがなんの茶番もなく進む。
ヒーローのつもりだったイサミだが、今度はヒーローを待つ側の気持ちとなり、だがそれもすぐに諦めの気持ちで覆いつくされた。
「いい表情だ……」
悪霊は機嫌よく筆を進めていた。
「もっと苦しむといい……きみの苦しむ姿が、わたしの創作意欲をかきたててくれる」
生きたままレオタードの剥製にされて、四肢を引き抜かれる痛み。生に執着するあさましい姿がキャンパスに描かれていく。
「その醜く膨らんだ腹も、すべて描いてやろう」
イサミは悲壮な気持ちに陥る。
「同性である男たちが躍起になるほど、いやらしく描いてやろう」
耳を防ぐことさえできず、イサミの心は、悪霊に魅入られ崩されていく。
「そうだな……確かに……きみの顔は、美しいと、いえる……」
「……」
イサミはその言葉に最初、目を閉じたまま、あまり反応をしなかった。
「どうした?このわたしが褒めてやっているのだぞ?お礼くらいいえないのか?」
「え、えと……あ、あり……が、と……?」
首に巻かれたロープが喉にひっかかった。
「……それだけか?」
「……え?」
他意はなかった。
イサミは、こういうときにどう返せばいいのか、本当にわからなくて、考えることも億劫で、ひどく薄っぺらい返事をした。
「話にならんな」
当然のように失望を露わにする悪霊。
「せっかくのわたしの言葉を、蔑ろにする気か?」
「そ、んなこと、いったって……」
不満以上に不安を露わにするイサミに、悪霊は語尾を強めた。
「従順になれないのであれば、きみが大事に想うあの絵に火をつけ、今すぐ燃やしてやってもいいんだぞ?」
「――っ!」
「言っておくが、絵が消失後、彼女がどうなってしまうのかはわたし自身にもわからない。わかっているのは、彼女はもうニンゲンには戻れないということだけ」
最悪の中の最悪が、イサミの足元から這い上がってくる。
「わたしと同じような霊となって束縛されるか、あるいは無となって消えるのか、そもそも生きたまま焼かれる苦しみというもの、きみには理解できるかな」
「や、やめ、て……そんな、かわいそうな、こと」
ぐるるるるるるるるるるる
便意にも耐えながら「あぐっ」と顔をしかめ、イサミはそれでも嘆願した。
「ならば、素直になれ。わたしに、従うのだ……」
「……う、う」
「わたしのものになるのだ」
はっきりと告げられてしまい、迷うことももうできなくなっていた。どうしようもなく、情けなさいっぱいのまま、イサミは瞼を閉じ観念した。
「は、はい……」
「くくく、『はい』、か」
「……」
イサミはわかっていた。
本当は、悪霊がコレクションであるはずの絵を燃やせないこと。
それだけでなく戻れないのであれば燃えてしまったほうが、ある意味永遠を生きることよりマシだったのかもしれないと、知っている。
「わたしに顔を褒められて、うれしいか?」
「は、い……うれしい、です……」
――だが、イサミは悲嘆に暮れて、そんな“考え”を“考えない”ようにした。
「わたしの絵のモデルになれて、うれしいだろう?」
「はいっ、うれしい、です」
これはいわば、イサミのエゴ。
自分への、言い訳。
「……卑しい奴だな、お前は」
「は、はい、わたしは……いやしい、子、です」
好きだった幼馴染。
そんな彼女を守れなかったイサミは、今もまだ彼女を守っている……そういうことにしたかった。そうでなければ、自分が生まれてきた価値も、努力も、全部無に帰ってしまうとおもったから。
いわば、身勝手な欲。
しかし、悪霊には見抜かれていた。
「光栄に思うがいい。きみのような羞恥心のない愚かな人間を、この天才が使ってやろうとしているのだ。心からわたしに感謝するのだ
「……はい、と、とても……かんしゃ、し、ます……モデルに、なれ、て……つかっていただき……ありがとう、ござい、ます」
顔をあげさせられたまま、涙をこらえるのが精いっぱいの抵抗で、イサミは復唱するたびに別の邪な感情が芽生えていくのを感じ取っていた。
「……やはり、美しいのは顔だけだな、きみは」
「は、い」
息が詰まる。
「きみの頭は、小学生以下だ。いや、幼稚園児のそれにも劣る」
「ぼくのあたま、は……ようちえん、いか、です」
声が震えた。
「きみは、幼稚園児以下だ」
「ぼっ、ぼ、ぼくは、ようちえんじ……」
吃音と、舌さえ痺れて発音もおかしい。
それはもうどこからが言わされていて、どこからがイサミ自身の言葉だったのかわからない。
心さえも身体と同じマリオネットにつくりかえられ、自分の愚かさにも気づかされてしまって、言葉にするのも耐えがたいほどの恥辱。
悪霊の手で、脳の中を直接まさぐられているような気さえした。
綺麗な思い出も、恥ずかしい思い出も、生きる意味さえ、今つけられたばかりの悪霊からのキズ・痛み・苦しみによって変えられてしまう。
「赤子に戻りたいといえ、今までの人生すべて、ゴミだったと」
「ぐすっ、あかちゃん、に、もどりたいです」
嗚咽交じりに言って、やがて悪霊のいう通り吊り上げられた手足の感覚はなくなり、痺れ、肥大に発達した心臓が内側から激しく胸を叩いてくる。
自分でもわけがわからなくなりそうなのに、イサミは興奮しているようだった。
――そこへまた、グルルルルルルと、一番きてはいけないものが来た。
「あっぐ、うぅうううう!あああああ!」
グルルルルルルルルルルルルルルル
「どうした?」
「お、おなかが、あああああっ、と、といれに……!」
急にきた。
すごくきた。
悲しいとか、後悔に老け込む感情よりも速い、怒涛。
「といれ、だと?」
「は、はい、……といれです、お、おねがいっ、と、といれにいかせてっ」
今まで経験したことのない、身体が破裂するのであないかと思うほどの排泄欲求。ひとたび解放されればどれだけ気持ちいいか。
鮮やかなレオタード越しに、水で充填されたお腹が荒れ狂う。
ぐるるるるるるるるるるるる
破水した妊婦のように、イサミは唸り声を上げて目を見開く。
両手と右脚を縛られどうすることもできないのに、瞳孔が開ききったまま痺れていた。
「あっ、はぁ、も、もれちゃう、あっ、はぁ、はぁ……」
顔を土気色に変色させて、イサミは目を開いたまま悪霊を見失い、それが不安で、強烈にやってくる便意にその場でもんどりうつ。
不自然なほどシンと静まり返った空気。
イサミは悪霊さえ無視してしまい、呼吸を乱しながらイサミはお腹を揺らす。はしたなく鼻孔を広げなら酸素を求めて、口を開けてはまた閉めた。
「わたしの前で言葉を選ぶな、もっと、はっきりといえ」
「う、う、う……」
グルルルルルルルルルルル。
せりあがってくる便意は、今は悪霊よりも恐ろしい。
グルルルルルルルルルルルルル
そこで悪霊がイサミのお腹をゆっくりと、はっきりと、さすってくる。
「あっ、あ、ああ。う、うんち……うん、ち、で、す……でちゃう、あ、うんちに、いかせでください。くるしいですぅ、あ、ああっ!」
「また、わたしに、命令するのか?」
「ち、ちがいます……そんな、つもり、じゃ、なくて」
イサミはあらゆるものに対して焦っていた。叱られるのが怖くて、媚びるような目線を送る。
「ぼくは、ただ……うんち、し、たくて……うんちが、その、うんちが、うんち」
「下品なやつめ。繰り返すな、みっともない」
「ごめん、な、さ、い……う、ぅぅぅ」
一番見られたくない相手に、自分の醜いところ弱いところをすべてさらけ出されてしまい、もはや目を合わすことさえ劣等感を抱いてしまう。
ロープで釣り上げられてしまった手足はもう役には立たない。レオタードで覆われた身体はただ、悪霊を楽しませるためだけにある。それを認めたくはないが認めて、眦を下げて許しを乞うた。
しっとり滲んだ汗さえ引っ込むほど、イサミは焦燥していた。
「……どうしてもしたいというのか?」
仄暗い目をした悪霊。
「は、はぃ。後生、です、から、イサミにうんちさせてください」
悪霊相手に、後生とは本来生まれ変わりを意味することを彼は忘れた。
「条件がある。今からわたしと同じ言葉をいえ」
「はい、ありがと……、うございます」
イサミはイヤな予感がした。
同時にこれが、自分の最後になることも同時に確信した。
そして、そんな自分の最後のおねだりは、最低にして下品だ。
グルルルルルルルルルル
だが、この便意には逆らえない。
再び悪霊に膨らんだお腹をさすられて、首にロープが絞まるのも気にせず、イサミはY字バランスをとったまま深くうなずいた。
グルルルルルルルルルルルルルル
人間として、超えてはならない、道が、くる。
「いいな、わたしと同じ言葉をいうのだぞ」
「は、はい」
「『どうか』」
「ど、どうか……」
「『わたしの』」
「わた、し、の……」
「『おちんちんを』」
「お、おちんちんを……?」
「『握り、潰してください』」
「………………」
「どうした、なぜ、いうのをやめてしまう……」
イサミは即答することができなかった。
「……だ、だって」
「わたしは、なぜやめるのか、と聞いているんだ」
「あああ、ちょっと、まって」
お腹をさすっていた悪霊の手は、そのままイサミの肌をなぞりながらおりていき、陰茎をなぞりながら睾丸に行きつく。最初は優しく揉みしだかれて不本意にも気持ちよかったが、だんだんとその力を強めていき、痛いのが、苦しいのが、はっきりとイサミを支配する。
彼は睫毛の先に涙をため、今にも泣きだしてしまいそうに顔をたわませながら、イヤイヤと首を振った。
「言わないか?なら、今からお前が二度とトイレできないように、そのお尻の穴を塞いでやろう」
「あっ、やっ、だめっ、だめっ、それだけ、は、だめ」
「では、お前の大切な絵を炎にくべることにしよう」
「それも、あっ、だめぅ、いや、いやぁ!」
「わがまななやつめ」
「うわぁああんっ!」
イサミは半狂乱になりつつあった。
最悪の便意を抱えるなかで正常な思考回路は溶け落ちて、秒ごとに彼の精神は切迫していく。焦って、追い詰められて、そしてついに主導権を手放した。
「あああああっ!い、いさみは、いさみはもう、どうすればいいんですか!?」
降参だった。
喉を震わせ、悪霊の情けにすがった。
死にたくても死ねなくて、狂いたくても狂うことができなくて、でも排泄はしたい。人としての最低限の尊厳がなくなっても、それだけは許してもらいたい。妖精のような愛らしい姿で、 自分の卑しさを改めて認めた。
「すでに、オマエの身体はわたしの作品なのだ……わたしに従うのだ」
「うぅぅぅ、う、く、ううう……」
どこまでも冷たく無慈悲なその声が、イサミに立場というものをわからせる。怒りもなく、哀しみもなく、悔しいという感情を抱くことさえもはやおこがましい。
こらえきれずに漏らした涙が一つ、熱い頬を伝う。
「さあ、いえ、いさみ」
「……-…………………………は、い」
名前を呼ばれ、今までバラバラだった心が急に一つの檻の中に閉じ込められた気がした。
心臓が再び息を吹き返し、幼馴染との淡い恋心以上の鼓動を刻んだ。
最後の最後ではじめて、イサミは、自分の主を見つけてしまったのかもしれない。
「どうか、どうか、わたしの……」
顎を無理やり動かして、声を震わせたまま、今からいうことの恐ろしさを十二分に理解しながらも、それでもいう。
「どうか……、わたしの……、おちんちんを……つ、つぶし、てください」
「なんのためだ?」
「〜〜〜〜っ!」
息を失った。
「もう、ゆるしてっ!」
「だめだ」
即答だった。
交渉する余地はなく、イサミは明らかにその声と迫力に気おされていた。
ぐりゅるるるるるるるるうるるるるるる
「ああっ!ああっ!あああああっ!」
ヒーローなんて、いなかった。奇跡など、信じた自分が愚かだった
「いさみ、もう、たえられない、もうがまんしたくない! ですから」
便意を思い出し、使命を覚え、それ以外のことを全部放棄。ずっといいたくて我慢していたリミッターが外れた。
「ウンチです、ウンチがしたいんです!いさみはへんたいだから、ウンチがしたくてたまらないんです!」
清々しいほど簡単に言葉が口から飛び出し、鼻孔を膨らまし続ける。
「だからっ!どうか、ごしゅじんさまっ!イサミの使い道のないおちんちんを、壊れるまで思い切り、ひねりつぶしてやってください!」
すると、悪霊は答えた。
冷たい声に、もう一度背筋が戦慄する。
「わかった、では望み通り――シネ」
「ふぎい――――っ!」
子ブタのような自分の声を聞くと同時に、鷲掴みにされた睾丸は第二の心臓のように脈動を開始し、イサミは目を剥き、歯を食いしばり、恐怖する。
「ぎぎっ、ぎ、んぎぎぃ―――」
ほんの一瞬でも耐えられるかもと思ってしまったことを、イサミは心の底から後悔した。
「ぎぃぃぃいいいいいああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――」
アメ玉を噛み砕くかのように易々タマは軋んで、そして派手な音を立てて割れる。
光の速さで激痛が走り――死に直結した苦しみが解き放たれ、全身の内臓が裏返るかのような痙攣を起こして泡をこぼす。
しかし、それさえもまだ頂きの半分しかたどり着いておらず、激痛はさらなる激痛となって超えていく。イサミが気をやってしまったあとも、狂気の沙汰はその身に刻み込まれる。
最後の瞬間までいきり立っていた肉竿は悪霊の手の中で激しく痙攣し、さらには盛大な潮をふいて生命力を誇示した。
「ああ、あ、ああああ……」
イサミは立ち尽くしたまま果てた。
だが、最後の最後で彼が享受したものは痛みでも苦しみでもなく、この上ない極上のエクスタシーだった。
「……ぁりがとぅござぃました……ご、ごしゅじんさま」
その瞬間――
イサミのあらゆる口から、泥水の如く噴き出した――
(選択肢)
絵画封印される
????される