18歳の女子児童3
第10章 初登校の朝
目覚ましの音で虹歩は飛び起きた。いつもより早いまだ午前6時だ。緊張で長い間眠れなかった事は記憶しているが、いつの間に眠ってしまったのだろう。
枕元にはいつもの様に洋服は置かれていない。今日用意されたのは下着だけだ。上着は・・・そう、虹歩は壁にかかっているハンガーに目を移す。そこに掛けられているのは桃鳳学園初等部の女児制服、自分が今日これから着て登校する衣装だ。全身に風邪をひいたような悪寒が走る。この服を着て外へ、それも人前に小学生として出なければならないのだ。分かっていた事とはいえ、虹歩は何もかも捨てて逃げ出したい気分だった。
既に理音は起きている様で、階下から物音が聞こえる。虹歩はいつもの様に髪を整えると、パジャマのまま重い足取りで降りていった。
「あらっ、まだ制服は着てないの?」
「・・・う、うん」
「覚悟決めちゃえばいいのに。」
学校が始まってからは朝食は理音が作ってくれる事になっていた。食卓に座った虹歩に理音が軽い朝食を用意するが、食欲は全く無い。
「色々用意しないといけないんだから、早く食べないとだめよ。」
その色々を考えると、ますます食事が喉を通らない。
「おはよっ!なんだ、虹歩まだ着替えてないのか。早く可愛い制服見せろよ。」
対照的に、いつもと変わらぬ明るい様子で律月が顔を出した。律月はもう制服に着替えていた。真新しい紺色のジャケットに長い足に似合う同色のズボン。いうまでもなく桃鳳学園高等部の男子制服である。律月も今日から男の子としての初めての登校だが、緊張を隠しているのか表面上はいつもと変わりなかった。
気がつけばもう7時前になっていた。虹歩は覚悟を決め、食事をそこそこにして自室に戻った。壁の制服を手に取り、意味の無い行為だと分かっていたがドアに鍵を掛ける。ゆっくりとパジャマを脱いで、用意された下着を身に付ける。桃鳳では小学生といえども派手な下着は禁止されているので、今日の下着はピンクのリボンの付いた丈の長い女児用ショーツと胸にフリルの付いたスリップだ。学校指定のワンポイントのハイソックスを履くと次はいよいよ制服だった。大きな丸襟のブラウスに手を通す。この半月で左ボタンには大分慣れたので戸惑う事は無かったが、内側に付いているタグに書かれた『桃鳳小学校 3年 みずの にじほ』の文字が虹歩にとっては酷く恥かしい。持ち物には全て名前を書く事は初等部の校則だった。昨日理音が制服から教科書、文房具に至るまで用意してくれたのだが、『低学年の子に『虹歩』って漢字は難しいわね』と面白がって全部ひらがなで書いてしまったのだ。もちろん、ショーツとスリップのタグにも虹歩の名前は入っている。その小さなタグは虹歩の恥辱心を素肌から刺激していた。
少し躊躇した後、虹歩は手を震わせながらハンガーから吊りスカートを取り、震える足をくぐらした。半月間スカートを穿いていたとはいえ、やはり制服という衣服はどこか特別な感じがする。吊り紐を肩に掛けると、誰にも見られていないにも係わらず虹歩は全身が真っ赤に染まる様に感じた。最後にボレロ風の丈の短いジャケットを袖に通す。ハンガーにはそのジャケットに付けるべき黄色のリボンが残っていたが虹歩にはその結び方は分からなかった。
目を閉じて深呼吸すると虹歩は自室のドアを開け、階下にゆっくりと降りていった。
「おっ、やっと着替えたか。理音さん、可愛い小学生のお出ましだよ!」
リビングに入るなり律月がからかう。
「ほらほら、お兄ちゃん、あんまり苛めちゃだめよ・・・虹歩ちゃん泣きそうじゃない。」
事実、不安と緊張で虹歩は目を真っ赤にして泣き出す寸前だった。
「ご・・・ごめんごめん。大丈夫だよ、どこからみても違和感ないから。」
さすがに謝る律月だったが、その言葉は虹歩にとって何のフォローにもならなかった。
「あら、リボンは結べなかったの?」
理音が時計を気にしながら虹歩の前にかがんで、リボンを結び始める。
「一応3年生って事になってるんだから、リボンぐらい自分で結べないと恥をかくわよ。今日帰ったら一緒に練習しようね。」
その姿は傍から見ると本当の姉妹の様だった。しかし時間は残酷に虹歩を襲う。
「さて、じゃあそろそろ出掛けるわよ。これもきちんと付けなさい。」
理音は虹歩に名札と通学帽を手渡す。リボンとお揃いの黄色い名札と同じく、黄色一色の顎紐の付いた帽子。それも虹歩にとっては屈辱的な衣装だった。その昔ながらの通学帽は今風の可愛い制服とはちぐはぐな感じだったが、低学年の児童は安全上の理由でその帽子の着用を義務付けられていた。
「ほら、持ってきてやったぞ。」
とどめを刺す様に、いつのまにかランドセルを取ってきた律月が虹歩の後ろに立っていた。
「新しいランドセル嬉しいだろ?」
律月は虹歩が背負いやすい様に背中で肩紐を広げて笑った。今更抵抗するわけにもいかず虹歩は素直に手をくぐらせる。虹歩の華奢な肩に教科書やノート以上に重い物がのしかかる。
「準備できたわね?じゃあ車出すから。」
今日は初日で教職員への挨拶もあるので理音が車で送ってくれることになっていた。高校生ならともかく、小学校低学年の子を転校初日に一人で行かせるのは不自然だという理音の判断だった。
『いよいよ外に出るんだ・・・この格好で・・・』
重い足取りでやってきた玄関に用意されていたのは、これも学校指定のローファーだった。小学生らしく丸っこいデザインで、ご丁寧に内側には学年と名前が書かれている。それを履けば、もう通学準備は完全に完了である。しかし、虹歩にはまるで玄関に目に見えない壁があるかの様に感じられ、とてもでは無いが外に出る勇気は無かった。
「初日から遅刻する気か?行くぞっ。」
虹歩の気持ちを見越してか、自分にも言い聞かせているのか、律月が手を強く握って玄関から連れ出した。四月の太陽が浴びせる穏やかな日差しさえ虹歩には辛く感じる。さほど強くない風でもミニのスカートが気になって仕方なく、虹歩は慌てて車に飛び乗った。
「今日は車で送ってあげるけど、明日からはちゃんと二人で登校するのよ。」
制服に制帽に名札、そしてランドセルまで背負い、全身これ以上ないぐらいの女子小学生ルックに身を包まれた18歳の男の子虹歩と、高校の男子制服が似合いすぎている本当は虹歩の妹である律月。二人を乗せた車は虹歩にとって恥辱に満ちた日常の舞台となる桃鳳学園に向け走り出した。
第11章 始業式の失態
車が学園に近づくにつれ、ちらほらと桃鳳の生徒らしい人影が増え始めた。律月と同じ制服を着た自転車に乗った高等部の男子生徒、セーラー襟のお嬢様ワンピースの中等部の女子生徒。そして、虹歩と同じ制服の初等部女児の子が仲良く手をつなぎながら登校する姿に虹歩は頬を染めた。
『僕はあの小さい子供達と同じ学校で勉強するんだ・・・。』
その横を少し大きな児童が通り過ぎて行く。制帽をかぶっていないところを見ると高学年の様だ。初等部では高学年は制帽の着用は自由で、更に4年生まではこれも安全性の理由で、背負っていても両手が自由に使えるランドセル登校義務になっているが、5年生からはそれも無くなり、自由な鞄で登校してよい校則になっている。つまり、黄色い制帽をかぶってランドセルを背負っているのは、まだ一人前の小学生扱いもされていない様な低学年の児童だけなのだ。本当は18歳の虹歩にとって、この格好は目が眩むほどの屈辱だった。
「さあ着いたわよ。」
理音がゆっくりとハンドルを切り、専用の入り口から学園内に車を乗り入れた。都心にもかかわらず桃鳳学園には広大な駐車場がある。生徒の自立を高める意味で通常は車での送り迎えは禁止されているが、運動会や学芸会の日は保護者の車で一杯になる。
「ねえ、やっぱり僕・・・」
弱音を吐こうとした虹歩の声を急ブレーキの音が掻き消した。
「さて、いよいよね。律月、虹歩ちゃん。用意いい?」
少し真面目な顔で理音が二人に聞いた。
「もちろんだよ。折角だし、人の経験出来ない男子高校生ってやつを楽しまないと損だからね。」
律月が親指を立てながら笑う。呆れたほどのプラス思考だ。
「虹歩ちゃんにもちょっと分けてあげたい元気ぶりね。」
理音が苦笑して虹歩の肩を叩く。
「さて、時間もあまり無いわ。私は虹歩ちゃんを送っていくから、お兄ちゃん一人で行けるわね。」
「高校生なんだから保護者同伴なんて笑われちゃうよ。じゃ、虹歩がんばれよ。」
律月はそういうと、さっさと高等部の敷地に小走りで去って行った。
「私たちもいきましょうか。」
理音はなかば引きずり出す様に虹歩を車から出させると、足が震えて歩くのも困難な虹歩の手を引いて初等部の校舎へ歩き出した。転入試験は別棟で行われた為、各学年の教室のある本校舎へ行くのは虹歩にとって6年振りだ。
「見て、綺麗な桜ね。」
先日入学式のあった校門前には、たくさんの桜が満開に咲き誇っていた。理音に促され、ようやく顔を上げる虹歩だったが、その目に飛び込んできた懐かしいはずの学び舎は、虹歩が通っていた頃とは全く違う新しい校舎に建て替えられていた。『一度通った学校だから大丈夫』との自己暗示さえ壊れていく様に錯覚し、虹歩はこのまま散ってくる桜に埋もれたい気分にかられた。
「あら、あの子転入生かしら?」
校舎に近付くにつれ、次第に多くなる初等部の児童の中からそんな声が聞こえてきた。背の高い律月が目立つこともあり、二人は注目の的となっていた。
「理音さん・・・恥ずかしいよぉ・・・。」
虹桜の花びらと共にスカートを揺らす風に晒され、虹歩は理音のぎゅっと握り、かろうじて歩むのが精一杯だった。
「すいません。今日から転入します水野と申しますが。」
校舎の入り口に設置された受付で理音が係の女性に尋ねた。
「はい、水野虹歩ちゃん・・・3年生ですね。そちらの職員室へどうぞ。」
二人は案内された通り職員室に向かう。校舎内は子供らしい元気な声が響き、虹歩は少しだけ懐かしさにとらわれた。
「優しい先生が担任だといいのにね。」
理音が緊張をほぐすようにいう。虹歩の正体を知らされているのかわからないが、どちらにしても怖い先生では無いようにと、虹歩は本当の子供の様に祈った。
「水野さんですね。」
二人が職員室のドアを開ける前に中から、理音と変わらないほどの長身の眼鏡をかけた女性が顔を出した。
「初めまして、虹歩ちゃんを担任させて頂きます杉原と申します。」
受付から連絡でもあったのだろう。杉原と名乗ったその教師は、用意よく手にした名刺を理音に手渡した。教師から名刺を渡されるとは思っていなかった理音は、少し戸惑ったがすぐに笑みを返した。
「水野と申します。こちらがお世話になる虹歩です。色々面倒をお掛けすると思いますがよろしくお願い致します。」
虹歩をほったらかして大人二人の会話は続いた。虹歩が理音の手を覗き見ると、名刺には
《桃鳳学園初等部教諭 杉原理沙》
と書かれていた。理音と同年代だろうか、20台半ばと思われるが二人揃って妙な落ち着きがある。怖そうな男性教師でなく少しだけほっとした虹歩だったが、それも束の間だった。
「早速ですが、今日はこれから始業式があります。虹歩ちゃんを全校生徒に紹介しなければいけませんので講堂に来て頂けますか?」
『ぜ・・・全校生徒に紹介!?』
教室でクラスの皆の前での挨拶ぐらいは覚悟していた虹歩だが、全校生徒・・・初等部には500人もの生徒がいる・・・に紹介とは予想だにしていなかった。
『ああ、どうしよう・・・・心の準備ができていないよ・・・」
虹歩が戸惑っている間にも二人は歩を進め、気が付くと講堂の舞台裏に立たされていた。傍には同じ転入生だろうか、2年生の名札を付けた虹歩より小さい女の子と、5年生の名札を付けた大きな男の子が立っていた。
「下から見ているからしっかりね。」
理音はそういうと、虹歩の制帽とランドセルを預かり小さく「がんばってね」と声をかけた。
「みなさん、春休み良い子で過ごしていましたか?」
壇上では既に校長の挨拶が始まっていた。虹歩の頭の中で校長と面接したあの日の事が思い出され色々な思いが駆け巡った。
「さて、ではみなさんの新しいお友達を紹介しましょう。」
いつのまにか校長の話は終わり、校長が舞台裏に顔を向けた。彼女は虹歩と目が合うと、かすかにニコリと微笑んだ様に見えた。
「さあ、行ってらっしゃい。」
理沙が虹歩の肩を叩いた。生徒全員の大きな拍手の中、虹歩は生まれて味わったことの無い緊張を抱え、同じ転入生の小さな少女の後について壇上に上がっていった。
「2年生に転入する川原さん、3年生の水野さん、5年生の栗原君です。」
校長が簡単に紹介を済ます。壇上が明るい為、逆光で舞台の下ははっきりと見えなかったが、まさに今1000個もの瞳が自分を見ている・・・高校生の男の子の癖に小学校に女の子として転入してきた自分を見ているのだと思うと眩暈がした。
「さて、それでは順番に挨拶してもらいましょう。」
『あ・・・挨拶?!』
ただでさえ極限の緊張の中、突然の展開に虹歩はパニックになった。
「では、まず川原さんから。」
それでも始業式は進行する。校長がマイクを虹歩の右に立っている少女に渡すと、その小さな女の子はよく通る声で話し出した。
「こんにちは。川原愛実です。今日はこの桃鳳学園に転入できてすごく嬉しく思います。・・・。」
さすがに桃鳳の転入試験に合格した児童だ。まだ2年生というのに、詰まりもせず淡々と飛び出すセリフに虹歩は益々青くなった。
『下級生の子かこんなにきちんと挨拶しているのに・・・・僕は何て話せば・・・・。』「上級生のお兄さんお姉さん、よろしくお願いします。」
虹歩が困惑している間に自分の挨拶が終わったらしく、気が付くと隣の少女がマイクを虹歩に差し出していた。
「あっ、あっ・・・」
無意識にマイクを受け取った虹歩だが、全く言葉が出てこない。マイクを持つ手がガタガタと震える。
「あっ、あの・・・あの・・・」
いつまでも始まらない虹歩の挨拶に、次第に舞台の下の児童たちが騒ぎ始める。
「おい、どうした?」
その時、予期せぬ出来事が起こった。左隣に立っていた5年生の男の子が虹歩の背中を強く叩いたのだ。
「ひっ!」
そのショックは虹歩の筋肉を弛緩し、膀胱から水分を溢れ出させた。虹歩の可愛いおちんちんの先から少量のおしっこが零れ落ちる。それは「おもらし」とはいえない量だったがショーツの前部分を濡らし、一滴の恥ずかしい液体がスカートの中から足首まで流れ落ちた。
『も・・・漏らしちゃった・・・僕お漏らししちゃったよ!』
虹歩は太股に伝わる恥ずかしい感触に身震いした。
「水野さんが緊張して話せないようなので、栗原君お願いします。」
気付いてか気付かずか、校長が虹歩にマイクを廻すようにジェスチャーする。
「ほら、マイクマイク。」
気付いてない様子の少年が虹歩の手からマイクを取り去った。舞台の下の児童達からもざわめきが消え、虹歩は少し安心する。
『よかった・・・気付かれていないみたいで・・・。』
実際に、この時皆が虹歩のお漏らしには気付いていなかった。たった一人を除いて・・・。
「では今学期もしっかり、勉強に励んでください。」
校長の言葉で、虹歩にとってとてつもなく長かった始業式は終わった。しかし大勢の児童の前で「挨拶もできない3年生の女子転入生」という烙印を押され、ショーツに恥ずかしいシミまで付けてしまった事実は虹歩の高校生男子としての自信を崩壊させるのには十分だった。
第12章 初めてのおともだち
「もうっ。しっかりしないとダメじゃない。私の方が恥ずかしかったわよ。」
講堂の前で待ち構えていた理音が叱責する。
「まあまあ。水野さんちょっと緊張し過ぎたのよね。」
理沙は虹歩の前にしゃがみ込むと、右手で優しく頭をぽんぽんと叩いた。子ども扱いされるのは恥ずかしかったが、この状況ではどうする事もできず虹歩は黙って頷いた。
「優しい先生で良かったわね。じゃあ私は先に帰るから・・・。一人で帰って来れるわね。」
『えっ!』
内心驚いた虹歩だったが、ここで「一人で帰るのが嫌」等と言ったら初対面である理沙に益々子ども扱いされる事になる。
「う、うん・・・大丈夫。」
そう言わせたのは、虹歩の心にほんの少し残ったプライドだった。
「じゃあ先生、虹歩をお願いします。」
「ええ、近所の子もいますので一緒に帰らせますからご安心下さい。」
結局理音は虹歩に少しの交通費を手渡し、一人で帰ってしまった。
『この格好で電車で帰るのか・・・。』
大丈夫だといったことを虹歩は早くも後悔し始めていた。
「じゃ水野さん。教室に行くわよ。」
「あっ、はい!」
虹歩は理沙に連れられ新校舎に向かう。スタスタと歩く足の長い理沙に比べ、スカートが気になって仕方ない虹歩は必死に付いて行く。
「あっ、ごめんなさい。少し早かったかしら。」
この女性は自分の正体を知っているのだろうか?虹歩は一瞬、聴いてみたい衝動にかられたが、その勇気はなかった。
「ここが3年生の教室よ。場所は覚えた?」
「は、はい。」
頷く虹歩だったが、自分が校舎内のどこにいるかなどさっぱり分からなかった。分かった振りをしたのは、これ以上「出来ない子」扱いされるのが嫌なだけだった。教室の中からはざわめきが聞こえる。これから虹歩の同級生となる子供達のはしゃいでいる声だ。
「じゃ、ここで少し待っててね。」
理沙は虹歩を置いて教室のドアを開けた。
「起立!」
さすがに桃鳳の児童だ。先生が入ってきた途端にざわめきは消え、日直であろう児童の声が響いた。
「礼!」
「おはようございます!」
「着席!」
虹歩にとって懐かしい教室での朝の挨拶だったが、感傷にひたっている暇はない。
「はい、じゃあ初めに、転入生を紹介します。」
理沙の声に子供達が再びざわめき出した。
「うちのクラスだったんだ・・・」
「ひょっとして、あの挨拶も出来ない子と一緒のクラスになるの?」
理沙にとっては予想された事だったが、教室の前で待つ虹歩には同級生たちのその言葉が突き刺さった。
「じゃあ、水野さん入って来なさい。」
虹歩はおずおずと教室に入る。先程より遥かに少ない人数とはいえ、短い距離で好奇の目にさらされ虹歩に緊張が走る。
「今日からみんなのお友達になる水野虹歩ちゃんです。」
理沙は虹歩を教壇の脇に立たせ、軽く肩を抱くと小さな声で囁いた。
「挨拶・・・できるわね?」
ここで再び挨拶も出来ないなんて事になれば大変な事になる。虹歩は意を決して声を発したが、先程の失敗が思い起こされ、極度の緊張で巧く話すことが出来ない。
「み・・・みず・・・みずの・・・に・・にじほです。・・・」
そこかしこから失笑がおこる。その笑い声に虹歩はますます萎縮してします。
「あ・・・あの・・・・みんなと・・・友達に・・して下さい。」
もはや何を喋っているのかパニックになっている虹歩に、さすがに呆れ顔の理沙が助けを出した。
「もういいわ、座っていいわよ。あなたの席はそこね。」
『ああ、なんてことに・・・こんなことじゃあみんなから馬鹿にされちゃうよ。』
本当は18歳の男子として、最低限のプライドを持って学校生活に挑みたい虹歩だったが、その希望は初日から打ち砕かれつつあった。
「よく桃鳳に転入出来たわね・・・」
「1年生の間違いじゃねえの?」
同級生の辛辣な言葉が虹歩の胸に突き刺さる。虹歩はとぼとぼと指定された自分の席に向かった。
「ランドセルは後ろのロッカーに入れるのよ。」
優しく教えてくれたのは虹歩の隣席の少女だった。
「わたし白川梨愛(りあ)、よろしくね、水野さん。」
その微笑に、どん底にある虹歩の心は少し救われた。梨愛と名乗る少女はまるで本当の天使の様な可愛らしい顔立ちをしていた。律月の少し大人びた可愛さとは違い、背は高くないが、長い髪を可愛いヘアアクセサリーで束ね、可愛い制服を上品に着こなしているその姿に虹歩は心を奪われた。
「ちょっと失敗しちゃったね。んでも、気にしない気にしない。わたし副委員長もしてるから何でも聞いてね。」
自分より10歳も年下の子供に慰められている事に気付き、虹歩は少し赤らんだ。
結局その日は理沙の話だけで授業は終わりとなった。日直の挨拶も終わり、同級生たちはそれぞれ仲の良い友達と教室を去っていく。しかし「挨拶もできない」虹歩に声を掛ける同級生は誰もいなかった。
「水野さん。」
この格好のまま帰る事に躊躇し、どうしようかと一人ぽつんと席に座っている虹歩の肩を叩いたのは理沙だった。
「はっ、はい。」
虹歩は驚いて顔を上げた。そこに立っていたのは理沙と・・・先程まで隣に座っていた梨愛だった。
「水野さん、A町だったわよね。白川さんが同じ町だから一緒に帰りなさい。」
既にランドセルを背負った梨愛がニコリと笑い、右手を差し出した。
「水野さん一緒に帰ろっ。」
虹歩は思わずその手を掴んで立ち上がる。梨愛の身長は虹歩と同じくらいだった。
「じゃあ頼んだわよ白川さん。」
「はい先生。」
理沙が出て行き、教室には虹歩と理沙の二人きりになった。梨愛と一緒に帰れることになり少し気が安らいだ虹歩だったが、女子小学生の格好のまま電車に乗って帰らなければならない事に違いは無かった。そして、梨愛に自分が本当は男の子だと気付かれないかという新たな心配事もあった。
「虹歩ちゃんって可愛い名前ね。これから虹歩ちゃんって呼んでいい?」
「う、うん・・・。」
「わーい!じゃあわたしの事も梨愛って呼んでね。」
屈託無く笑う「初めて出来た同級生の友達」に虹歩は喜びと恥ずかしさの入り混じった複雑な思いだった。しかし、梨愛が発した次の言葉に虹歩は凍りついた。
「虹歩ちゃん・・・・わたし知ってるのよ。」
天使の様な梨愛の唇から、悪魔の様な尖った八重歯がちらりと覗いた。
第13章 梨愛の秘密
「な・・・なんの事っ?」
虹歩は心臓をバクつかせながら答えた。思えば学校に来てから、きちんと話すのは初めてだ。虹歩は練習した通り、女の子っぽいアクセントで精一杯の笑顔を作った。
「講堂で挨拶してるとき、お漏らししちゃったでしょ。」
梨愛が笑顔を崩さずに言った。それは子供らしい可愛いいものであったが、どこか威厳のある声だった。
『見られてた!・・・気付いてたんだこの子・・・』
男の子であるということを知られるという最悪の事態にはならなかったものの、小学生にもなりながら、みんなの前でお漏らしをしてしまった事をこんなに小さな子に指摘され虹歩は狼狽した。
「う、ううん。何を言ってるのよ?わたしそんなの・・・。」
これ以上子供扱いされるのは絶対に嫌だ。虹歩は必死に否定した。
「んふふ、本当に?」
梨愛は相変わらず笑顔を絶やさない。
『大丈夫・・・足だってとっくに乾いているし、靴下だって汚れていないのをさっき確認したし・・・。』
「何いってるのよ。3年生にもなってお漏らしなんてする筈無いじゃない。」
口に出すのは恥ずかしい言葉だったが、虹歩はあえてそう表現した。しかし、その言葉を虹歩は直後に後悔することになった。
「ふーん・・・。じゃあパンツ見せて。」
「パ・・・パンツ!?」
思わず虹歩は大声をあげてしまった。素足を流れ落ちた水分は乾ききったとはいえ、ショーツを濡らしたおしっこは、乾いていたとしても恥ずかしい黄色いシミを残しているだろう。それよりも、ショーツをじかに見られてしまっては、いかに虹歩のおちんちんが小さいとはいえ男の子であることがばれてしまうかもしれない。
「そ、そんなの恥ずかしいわ。」
「どうして?女の子同士じゃない?それとも何か見せられない理由があるの?」
『女の子同士』という部分に虹歩はビクリとする。
「お・・・女の子同士でも恥ずかしいわよ。と、とにかく嫌だわ。」
虹歩の顔は青ざめ、絞り出すその声は震えていた。
「ふーん。じゃあ、みんなに虹歩ちゃんがお漏らししちゃったって、言いふらしちゃおうかな・・・」
「や、やめてよ!わたし・・・お漏らしなんて・・・。」
虹歩の目から涙が溢れ出す寸前、梨愛が今までとは違う低い声で言った。
「いいかげん観念しなさい。わたし全部知ってるんだから・・・・虹歩ちゃんのココの事もね!」
言うが早いか、梨愛は左手で虹歩のスカートを捲りあげた。
「きゃあーーっつ!!」
「ほーら、こんなに黄色くなってるわ。これでもお漏らしなんてしてないって言い張るの?それに、何かしらこの小さな膨らみは?」
「あっ・・・あっ・・・。」
突然の展開に虹歩は抵抗することができなかった。
「『女の子同士』って言ったわよね?女の子にどうしてこんなのが付いてるのかな?」
梨愛は右手で虹歩の股間を握った。ショーツの上からおちんちんを鷲づかみされ虹歩は悲鳴をあげる。
「うぎゃーっ!!痛い!痛いよー!」
「あら?女の子なのに何が痛いのかしら?こんなのは女の子には邪魔だから潰しちゃおっかな♪」
梨愛は更に右手に力を込める。
「ぎゃーっ!!ごめんなさい!!嘘ついてごめんなさい!!僕本当は・・・。」
「んふふ・・・そんなの初めから知ってるわよ。高校生の、み・ず・の・に・じ・ほ君っ。」
「ど・・・どうして・・・!」
ようやく梨愛の手が緩められた。しかし、あまりの恐怖に虹歩はふたたび少量のお漏らしをしてしまっていた。梨愛が自分の右手を一瞥する。
「また漏らしちゃったの?恥ずかしい高校生ね・・・ほら自分が汚したんでしょ?自分の口で舐めとりなさい。」
梨愛はそう言うと、虹歩の顔の前におしっこで汚れた手のひらを差し出した。あまりの急な展開に虹歩はパニックになっていた。
「・・・そ・・・そんな・・・。」
「あら?出来ないの?自分で出したものでしょ?」
梨愛は虹歩の頬をぺちゃぺちゃと叩く。
「あっ・・・いやっ。」
虹歩は思わず顔をそむける。
「ふーん。あくまで抵抗する気なのね・・・。わかったわ、じゃあしょうがないわね。みんなに虹歩ちゃんの秘密・・・」
「ま!待ってっ!」
そんな事をされてはたまらないとばかりに、虹歩は慌てて梨愛を制止した。
「そうだよね。まさかこんなのがついてるなんて、みんなにばれたら大変な騒ぎだもんね。」
梨愛は虹歩を体ごと壁に押さえつけると、今度は自分の右膝を股間に押し付けた。
「んあっ・・あっ・・・。」
少女の膝の柔らかい感触に虹歩は思わず声を漏らしてしまう。
「あははっ、可愛い声出しちゃって。何おちんちんいじられて感じちゃってるのよ。」
「ああんっ、そんな・・あぁんっ!」
「んふふ、本当に女の子みたいね。梨愛、虹歩ちゃんの事気に入ったわ。これからは私のペットにしてあげる♪」
「ああっ・・・そんな・・・ペットだなんて・・・。」
「口答えしないの。これからは私が虹歩ちゃんのご主人様よ。わかったら、さあ早くこれを綺麗にしなさい!」
梨愛は先ほどからは信じられない厳しい声でそう言うと、左手で虹歩の頭を押え込んだ。
「ほらっ、ペットらしく4つんばいになるのよ。」
豹変した梨愛の勢いに虹歩はなすすべなく、教室の床に両手両足を付いてはいつくばってしまう。梨愛はそれを見て満足気に椅子に座った。
「はいっ。」
差し出された、自分のおしっこで汚れた手を拒否することはもう出来なかった。虹歩はゆっくりと小指から梨愛の手を舐め始めた。それは死んでしまいたくなる様な屈辱的な仕打ちだった。小学校3年生の女の子の命令で、18歳の少年が小学校女児の制服で女装させられたまま、4つんばいになり犬のように手を舐めさせられているのだ。
「これからたっぷりと可愛がってあげるからね。二人きりの時は私のことは『ご主人様』って呼ぶのよ。」
いつのまにか優しい声に戻った梨愛が、面白いおもちゃでも見つけたかの様な子供の笑顔を浮かべた。
「じゃあ、私のペットになったお祝いに尻尾を付けてあげようかな。」
『しっぽ?何の事?』
戸惑う虹歩を気にもかけず、梨愛は虹歩の頭をぽんぽんと叩きながら言う。
「ほら!そのまま後ろを向いてお尻を向けるのよ。」
虹歩は言われるがまま、体を回転させる。梨愛の方にお尻が向けられ、制服のミニスカートから覗いたお尻があらわになる。
「んふ、やっぱりお尻も可愛いわね。」
梨愛は虹歩のお尻をなでながらゆっくりと立ち上がる。何をされるのか不安で、顔を必死に後ろに向けていた虹歩が見たのは信じられない光景だった。
「ん・・・んっ!」
なんと、梨愛は自信のスカートの中に手を入れると、ショーツの中から一本のおもちゃの様な物を取り出したのだ。虹歩がいくらウブでもそれが何に使うものかぐらいは理解できた。
『何故この子、こんなに小さいにこんなものを!?』
しかし虹歩にとって、今はそれどころではなかった。
「お兄様からもらった大切な物だけど、虹歩ちゃんあんまり可愛いから貸してあげるわね。どう嬉しい?」
虹歩は青ざめた顔でブルブルと首を振る。しかし梨愛が止める筈もなかった。
「さて、力を抜くのよ。私ので濡れてるから大丈夫だと思うけど、抵抗すると余計に痛いからね。」
そういうと、梨愛は虹歩のショーツをずらし、一気にお尻にそのバイブを突き立てた。
「いやーーーーーーっ!!!!」
それは、お尻用のほんとに細くて小さなバイブだったが、お尻に異物が入ってくる初めての感触に虹歩は言いようのない違和感を覚えた。
「ひーーっ!やだー!気持ち悪いよ!抜いて!抜いてよー!」
先程まで梨愛の中に入っていたであろう、その生暖かいモノの異物感に虹歩は涙を流しながら懇願する。
「だーめ、せっかくのご主人様からのプレゼントでしょ。私が抜いていいって言うまで、ずっとそのままにしてるのよ。」
「そ・・・そんな!」
「勝手に抜いたりしたら・・・・わかるわね?」
それを言われると虹歩には返す言葉が無かった。
「ご返事は?」
虹歩は黙って頷くしかない。
「うん、素直でよろしい。じゃあ、帰るわよ。もちろんお尻はそのままでね♪」
「こ!このままで外に出るのっ!!」
虹歩の目にはもはや、梨愛が悪魔にしか見えなかった。
第14章 お兄ちゃん
「梨愛ちゃん、お尻気持ち悪いよ・・・。」
二人は校舎を出て校門に向かっていた。虹歩のお尻の穴にはさきほど梨愛に挿入されたバイブがすっぽりと入っている。
「んふ、ショーツは穿かせてあげたんだから我慢なさい。それに、「梨愛ちゃん」じゃなくて「ご主人様」でしょ。」
ところどころにくびれの入った棒状のそれは、完全にお尻に入ってしまわない様にするための根元のストッパーを除いて虹歩のお尻にすっぽりと収まっており、ときおりこれまで感じたことのない感覚を虹歩の下半身に与え続けた。
「ほら、早くついてこないと置いてくわよ。」
お尻の恥ずかしい感触のため虹歩は歩くことさえままならず、小学3年生の梨愛の歩調にも遅れがちだった。
「どう、小学校へ初登校した気分は?」
梨愛は「小学校」に力を込めていった。お尻に気を取られていた虹歩だったが、自分が小学生の女の子の格好をしている事を思い出しドキリとする。長い間教室に残っていたため初等部の敷地内に人影はまばらだが、気がつけば校門はもうそこに迫っていた。
「も、もうすぐ外に出ちゃう・・・ど・・・どうしよう・・・。」
虹歩が助けを求めるように口からそんな言葉を漏らした。
「何言ってるのよ、こんな格好で小学校に通っちゃって。こんなモノ付けてる癖にね・・・」
梨愛はそう言うと、虹歩のスカートの前部分をひらりと捲った。
「きゃっ!!」
まさか校庭でそんな事をされるとは思っていなかった虹歩が悲鳴をあげた。
「な・・・何を・・・するの・・・よ。」
人目を気にして虹歩が女の子の様に言う。
「あは、大丈夫よ、見られても小さな女の子がじゃれあってるとしか思われないわ。それに、そんな小さなおちんちんがばれるとでも思ってるの?」
「ううーー・・・」
虹歩は小学生の女の子に、これほどまでに馬鹿にされても文句一つ言えない自分の立場がうらめしかった。
「どう?男の子の癖にスカート穿いて、お外歩く気分は?」
梨愛は止むことなく虹歩に恥辱の言葉を浴びせる。校門を出ると、梨愛の言う通りそこはもう完全に『お外』だった。車の中でもなく、理音も律月もいない。傍にいるのは梨愛という『同級生』だけだ。」
『大丈夫かな・・・ちゃんと女の子に見えるかな・・・。』
平日の昼間とはいえ、学園に面している大通りは無人という訳でもなく、虹歩にはそれらの人々が皆自分を見て嘲笑しているかの様に感じられた。
「ほら!ちゃんと歩かないと変な子って思われるわよ!」
梨愛が虹歩のお尻を軽く叩く。それだけで敏感になっている虹歩は「ひっ!」と声を出し内股になってしまう。
「ねぇ・・・梨愛ちゃ・・・いや・・・ご・・・ご主人様・・・。」
そのとき虹歩が初めて自分から梨愛に話しかけた。
「ん?どうしたの?抜いて欲しいっていうならだめよ。」
「い・・いや・・・違うの・・・。」
「じゃあどうしたのかな?言ってみなさい?」
俯いたまま歩いている虹歩に梨愛が微笑みかける。四月の淡い日差しに照らされたその表情は先程・・・いや、今も自分がこの少女に辱めているのが信じられないくらいの無垢な笑顔だった。
「そ・・・その・・・わ・・・・わたし・・・。」
「ん?又お漏らししそうなの?」
「ち・・・違うの。・・・わ、わたし・・・ちゃんと・・お・・女の子に見える?」
虹歩はうわずった声でようやくそう言った。理音や律月のいない今、皮肉な事に唯一自分の正体を知っている梨愛だけが虹歩にとって心の支えだったのだ。
「・・・・やっぱり変?」
沈黙している梨愛に不安になった虹歩が恥ずかしげに上気した顔で上目遣いに聞き返す。
「んもうっ!可愛いっ!!」
そう叫ぶと、梨愛は人目もはばからず虹歩を抱きしめると耳元で囁いた。
「大丈夫よ。どこから見ても可愛い小学生だから・・・・男の子どころか凄い美少女よ♪」
そこまで言われると虹歩は返って恥ずかしくなる。望んでこんな格好をしている訳では無いのだ。
「でも、ほんとに虹歩ちゃん可愛いわね。高校生の男の子だなんて信じられないわ。妹にしたいぐらいよ。」
梨愛が虹歩を抱きしめたまま頭をなでなでする。虹歩が梨愛の胸に顔をうずめ、恥ずかしいが不思議な安心感に包まれている時、虹歩のお尻のものが激しい振動をはじめた。
「はひいつっ!!」
たまらず虹歩は大声をあげて地面にしゃがみこんだ。
「どう?気持ちいいでしょ?」
梨愛は即座に何が起こったのか理解した様に、虹歩の頭上から話しかける。
「・・・あ・・あ・・・あんっ・・・り・・・梨愛ちゃん・・・こ・・これって!?」
「んふふ、それって離れたところから操作することができるのよ。ほら、早く立たないとみんな見てるわよ。」
地面にへたりこんだまま虹歩が顔を上げると、確かに道路の向かい側の歩道からこちらを見ている数人の人影が目に入った。
「大丈夫?どうしたの?」
声を掛けたのはOL風の若い女性だった。女性は膝に手を当ててかがみながら、心配そうに二人を見ている。
「あっ、大丈夫です。ちょっと疲れただけなんで。ほら、立てるわね?」
梨愛は悪びれもせずそう答えると、虹歩の手を掴んだ。騒ぎにでもなったら大変な事になる。虹歩はいまだ振動を続けるバイブを気にしながらもゆっくりと立ち上がった。
「そう?じゃあ早くお家に帰るのよ。」
心残りそうにしている女性に梨愛はとっておきの笑顔で答えた。
「お姉さん、親切にありがとうございました。」
女性は『小さいのにしっかりした子だな』という顔をして、「どういたしまして」といいながら、梨愛の頭をポンと叩いた。その時、梨愛の頭にちょっとしたいたずら心が芽生えた。
「ほら、虹歩もちゃんとお礼を言いなさい。もう2年生なんだからしっかり挨拶できないとダメよ。」
先程からバイブの振動に耐え、立っているのがやっとの虹歩の後頭部を梨愛が押して、無理矢理頭を下げさせる。
『に・・・2年生!?』
「あら、妹さんだったの?なら安心ね。」
女性は再びかがみ込んで、梨愛と視線の高さを合わした。
「じゃあ、しっかりしたお姉さん。可愛い妹さんをお家まで連れてってあげてね。」
「うん、わかりました。」
梨愛は小さく頷いて答える。女性は今度は虹歩の方に向き直る。
「にじほちゃんていうの?可愛いお名前ね。優しいお姉ちゃんの言うことを聞いて気を付けて帰るのよ。」
すっかり梨愛の妹扱いされ、虹歩は恥ずかしさで一杯だったがお尻の刺激はそんな事はおかまいなしに震え続ける。虹歩は早く女性が立ち去るように頷くしかなかった。
「んふふ、さっきの人完全に私たちが姉妹だって信じてたよね。」
梨愛がクタクタに疲れた風の虹歩に向かって笑う。ようやくバイブの動きも止まり二人は駅に向かって再び歩き出していた。
「り・・・ご、ご主人様・・・酷いよー。僕・・・僕・・・2年生なんかじゃないもん。!」
「はいはい、虹歩ちゃんはもう小学校3年生のお姉ちゃんだもんねえ。もうバイブは止んだの?」
「う、うん・・・ねえ、ご主人様はどうしてこんなの持ってるの?」
虹歩は先程から気になっている事を思い切って聞いてみた。なにしろ自分の正体を知っているこの少女の事を虹歩は何も知らないのだ。
「さっきも言ったでしょ。『お兄ちゃんにもらった』って。お兄ちゃんはね私のご主人様なの。バイブを動かしてるのもお兄ちゃんよ。」
意外とあっさりと梨愛は答えた。少なからず驚いた虹歩だったが、それよりも本当は聞きたい事があった。
「じゃ、じゃあ・・・どうして僕の事を・・・。」
「知りたい?別に隠す事でも無いから教えてあげるわね・・・ママに聞いたのよ。」
一瞬虹歩は頭がこんがらがった。
「ママ?」
虹歩は自分の正体を知っているかも知れない人物を頭に浮かべる。理音・律月の他に・・・
「あっ!」
「分かった?」
梨愛は虹歩の方に振り向くといたずらっぽく笑った。
「そう、桃鳳小学校の校長先生。それが私のママよ。『虹歩ちゃんの学校生活を助けてあげてね』ってママが教えてくれたのよ。」
校長にとっては親切のつもりかも知れなかったが、梨愛の本当の姿や、兄との関係は恐らく知らないのだろうと虹歩は考えた。
「私もね、初めはどんな子が来るのかなって思ってたんだけど、虹歩ちゃんったら挨拶も出来ないわ、お漏らしをするわであんまり可愛いからちょっといじめたくなっちゃったんだ。いつもお兄様に攻められばかりだから気付かなかったけど、私って攻める方が向いてるのかな?」
小学生とは思えない言葉に虹歩は驚愕する。虹歩は急に不安になって問いただす様に梨愛に尋ねた。
「ママやご主人様は・・他に誰にも話して無いよね?!」
「う〜ん・・・一人だけ話しちゃった。だってお兄ちゃんは私のご主人様だもの。そうそう、駅で待ち合わせしてるから今からお兄ちゃんに紹介するね。」
『ええ〜っ!!』
梨愛は思い出したように言ったが、最初から計画していたのだろう。バイブが下校途中に振動したのも偶然とは思えない。
「そ、そんな・・・いや・・・いやだよ・・」
本当は男の子である事を、梨愛に知られているだけでも恥ずかしさの極みなのに、同性の・・・しかも梨愛とそのような関係にある少年と顔を合わすなど考えられない事だった。しかし、虹歩に逃げ出す暇はなかった。
「あ、いたいた。ほら、あそこで待ってるわ。」
梨愛は手を大きく振る。虹歩は動けずに、ただ足を振るわせて地面を見つめた。
「遅れてごめんね、この子とちょっと遊んでたから。」
梨愛が舌を出す。『遊ぶ』という事がどういう意味を表すのか二人では通じるのだろう。
「ふーん、この子か・・・例の転入生は。」
その声に虹歩は聞き覚えがあった。
『えっ!そ・・・そんな』
虹歩は恐る恐る視線だけを上に上げる。
「久しぶりだな、水野」
「しっ・・・慎二っ!!」
その少年は以前の友人・・・入院する前の虹歩の同級生だった。
第15章 妹として・・・
「どっ、どうしてお前が・・・」
そう言ってから、虹歩は自分のしている格好を思い出し羞恥心で一杯になる。
「それは俺のセリフだよ。同級生でおぼっちゃまの水野がこんな格好してるんだもんな。」
宮野慎二は虹歩の中学生時の同級生だった。慎二は裕福な家庭の子供が多い桃鳳学園には珍しく普通の家庭の育ちだったが、高い授業料を免除されていた程の頭脳と運動能力の持ち主だった。慎二にとって、実力もないのに桃鳳学園内でも飛び抜けて「おぼっちゃま」であった虹歩は虹歩が意識するしないに関わらず「嫌な奴」であった。
「こ、これは、やむをえない事情で・・・。」
「あははは!知ってるよ。勉強が出来ないから小学生からやりなおす事になったんだろ。中学の時も酷かったもんなぁ。小学生の制服似合ってるぜ。」
頭一つ分も背の高い慎二は、そう言いながら虹歩の頭をぽんぽんと叩いた。悔しさで一杯の虹歩だったが、今の姿では何も言い返せる事は無かった。
「そうそう、お前が入院してから、俺こいつの家に養子にもらわれてさ・・・。」
慎二の話によると、梨愛の家・・白川家も男子が後を継ぐ決まりになっていたのだが、梨愛の後子供が出来ない母親・・・初等部の校長は学園内から優秀な生徒を養子にもらう事を思いついたらしい。良家の子女が多い桃鳳学園の中で慎二が選ばれたのは当然の成り行きかもしれない。
「まっ、そういう訳で血はつながってないけど、こいつは俺の妹ってわけ。」
慎二は梨愛の方肩を抱き寄せた。梨愛は照れながらも嬉しそうに慎二の腕を掴む。
「あ、あのさ・・・慎二・・・・。」
「うん、なんだ?」
「こ・・・このことは黙っててくれるよな・・・」
慎二の唇の端が少し上がる。それは先程の梨愛と同じ動きだった。
「ふーん、そーだろなー。そりゃあ18にもなってこんな格好で小学校に通ってるなんてみんなに知れたら恥ずかしいよなあ・・・。」
意外に優しい慎二の言葉は一瞬で覆された。
「でも、人に物を頼むには態度ってものがあるんじゃないか?うん?」
「ご、ごめん・・し・・慎二君。お願いだからこの事はみんなに内緒にして下さい。」
虹歩は必死に頭を下げる。
「お前何年生?」
「えっ!?」
意外な慎二の質問に戸惑う虹歩。
「何年生かって聞いてるんだよ。」
慎二が何を言わせたいのかは明白だった。
「ほら、ここに書いてあるじゃないか。それとも、にじほちゃんは自分で学年も言えない幼稚園児なのかなあ?」
「・・さ・・・さん・・・三年生・・・です。」
「よく聞こえないなぁ。中学三年生か?」
「・・・・うう・・・しょ・・・小学・・・小学三年生です。」
慎二と梨愛は顔を向き合って笑い合った。これ以上ない恥辱に虹歩は拳を握りうなだれる。
「あはははは。お前本当に小学三年生なんだぁ?おい梨愛、お友達にお兄ちゃんへの挨拶の仕方を教えてやれよ。」
「ほら虹歩ちゃん、耳貸しなさい。」
梨愛が虹歩に耳打ちする。
「そ・・・そんな・・・そんな事恥ずかしくて言えないよ・・なぁもう許してよ。」
「ダメだ。言えないならお前の正体は明日には学校中に広がってるね。」
弱みを握られている虹歩には抵抗する術はなかった。
「・・・・わ、わかった・・・言う。言うから・・・本当に約束だよ。」
少し躊躇した後虹歩は、片足を下げてかるく腰を落とすと両手でスカートの裾を少し掴んだ。それが梨愛の指示した挨拶のポーズだった。
「・・・しょ・・・小学三年生の・・・みずの・・・・にじほです・・・・。し・・・しんじ・・・・お・・・お・・お・・おにい・・・おにいちゃん。にじほを・・・い・・・いもうととして・・・可愛がって・・・・下さい・」
決して女性化願望や男性趣味があるわけではない虹歩にとって、かつての同級生に向かい『妹として可愛がって下さい。』などというのはとてつもない屈辱だった。
「よしよし、そんなに可愛がってほしいか。なら、梨愛と一緒に・・・いや梨愛より後だから梨愛にも妹としてもらったらいいよ、あっはははは。」
慎二は笑いを押さえきれない様子だった。
「じゃあいつもの儀式をするか?」
「うんお兄ちゃん。」
梨愛が満面の笑みを浮かべて嬉しそうに頷く。
「ついてこい虹歩。」
慎二はそう言うと梨愛の手を取り、駅の構内へ向かった。
「ちょ、ちょっと・・・こんなことしたら怒られるよ。」
連れて行かれたのは構内のトイレだった。子供連れでも入れる3畳ほどもある広い個室のため、3人が入ってもそれほど狭くはなかった。
「大丈夫、平日の昼間だし誰も来ないさ。」
慎二はそう言いながら洋式便器の蓋を閉じると、そこに腰掛けた。
「な・・・何するんだよ・・・こんなところで。」
「何をって?お前が俺たちの妹になるためのテストだよ。お前で4人目かな?それより口の利き方に気をつけろよ。」
「テ・・・テスト?」
「そっ。テスト。ほら、梨愛見てみろよ、もうたまんないって顔してるだろ。」
虹歩が振り向くと、梨愛は先程までの冷静な顔とはうってかわり、目を潤ませ顔を紅潮させていた。
「お、お兄ちゃん・・・梨愛もう・・・我慢できないよ。」
あろうことか梨愛は自分のスカートに手を差し入れ、股間をまさぐっている様だった。
「よしよし、今やるからな。」
慎二が制服のベルトを外し始める。虹歩にはようやくこれから起こることがおぼろげながら想像できた。あっけにとられる虹歩をよそに、慎二はてらいも無くズボンとトランクスをずりおろした。そこには虹歩のモノとは比べようもない大きなモノがそそり立っていた。そして次の瞬間慎二の口から出た言葉は虹歩を硬直させた。
「ほら、虹歩おしゃぶりさせてやるよ。」
まさかの言葉に虹歩は面食らう。
「な!どうして僕が慎二のなんかを!!」
「ん?だってお前は今日から俺の妹として欲しいんだろ?今までの子はみんなうまそうに舐めてくれたぜ。」
「お・・・お兄ちゃん・・・。」
相変わらず紅潮した梨愛がたまらず声を上げる。それは小学生とは思えない色っぽい声だった。
「梨愛はもうちょっとおあずけだ。今日の主役は虹歩だからな。」
慎二は虹歩の髪を掴んで自分の股間に引き寄せた。
「ほらどうした?女の子なんだからこれぐらいできるよな?うん?それとも本当は女の子じゃないいのかな?だとしたらみんなに教えてあげないとな。」
慎二にも同性愛的趣味があるわけではなかった。彼はただ極端なサド、自分の気にくわない人間を虐めることに至福を感じているだけだった。
「ほら、後がつかえてるんだから早くしなさい!ペットの癖に!」
梨愛が靴の裏で後頭部を押さえ、虹歩の顔を慎二の股間に押し付けた。虹歩の小さな口に慎二の匂いが広がる。虹歩はむせかえるが、口いっぱいに広がる慎二のモノの為にそれもできない。
『ぼ・・・ぼく・・男の子なのに・・・ちんちん咥えさせられてる!!』
あまりの屈辱に虹歩は涙を流す。気持ち悪さに口を離そうとするが、髪の毛を慎二に掴まれ、後頭部は梨愛が足で押さえつけているため逃げることもできなかった。
「ほら、丁寧におしゃぶりするんだぞ。」
息ができないほどの苦しさに、虹歩ができることは一刻も早く慎二を満足させる事だけだった。覚悟をきめ、虹歩はゆっくりと慎二のモノに舌を這わす。
「ようやくあきらめたようだな。しかし、あの虹歩がおれのチンポをしゃぶってるなんてな。」
慎二は満足そうに笑みを浮かべる。
「ほら!もっち心をこめて舐めなさい。」
梨愛は虹歩の後頭部を押さえつけ、無理矢理ピストン運動を促す。その度に喉の奥に慎二のモノが当たり虹歩は吐きそうになる。
「もういい、このへたくそ!梨愛代わっていいぞ。」
地獄の責めが5分も続いた時慎二が声をあげた。どうやら虹歩の口では慎二を満足させることはできなかったらしい。解放されてほっとする虹歩だったが、望んでした訳でもないのに侮蔑の言葉を浴びるのは酷い仕打ちだった。
「ほら、代わりなさい。この役立たず!」
梨愛が虹歩をおしのけ慎二のモノを愛おしそうに咥える。みるみるうちに慎二のモノは更に大きくなっていった。
「やっぱり虹歩なんかとはくらべものにならないな。おい、虹歩お前興奮してんじゃないか?スカートめくってみろよ。」
慎二の指摘は事実だった。初めて見るそのいやらしい光景に虹歩の股間は、女の子にあろうことか堅くなってしまっていた。
「ほら、命令よ!早くめくりなさい。」
梨愛がいったん口を外して虹歩を責め立てる。虹歩はゆっくりとスカートまくり上げた。
「んふふ、一丁前にちっちゃいちんちん大きくしちゃって。」
「あはは、お前小学生に「ちっちゃいちんちん」なんて言われちゃってるぞ。よし、特別に一人でしていいぞ。ほら、ショーツずらせよ。」
虹歩自身が我慢できなくなっているのを慎二は的確に指摘した。虹歩は操られるようにショーツをおろすと、慣れない手つきで自分のモノを上下運動始めた。
「よし、梨愛そろそろいかせてくれ。」
梨愛は頭を激しく動かし始めた。慎二は満足そうな表情をしながら右手で携帯を操作する。
「虹歩、お前は女の子だからお尻でいかないとな。」
次の瞬間虹歩のおしりに入ったままだったバイブが振動する。それは今までなかった大きな動きだった。
「いやーーっ!!」
梨愛の口に慎二の精が放出される前に、虹歩の可愛らしいおちんちんから少量の白い液が飛び散った。
「よし、梨愛。虹歩にお裾分けしてやれ。」
さっさと一人ズボンまで穿きおえた慎二が梨愛を促し。梨愛はこくりとうなづくと放心状態で床に座り込んでいる虹歩に無理矢理キスをする。
「ん!んんーーっ!!」
虹歩の口に入り込んできたのは、梨愛が口に溜めていた慎二の大量の精液だった。その苦い味に虹歩は吐き気を催す。
「ほら、出しちゃだめ!飲み込みなさい。」
梨愛は虹歩の口を押さえ、それを無理矢理飲み込ませてしまった。
「じゃ、俺は寄り道して帰るからな。梨愛、そいつにフェラの練習させとけよ。今度もあんなのだったら承知しないからな。」
たった十数分ほどの個室での出来事は虹歩のプライドをズタズタに引き裂いてしまった。