首輪をはめられた親友




 ※注意!
  男の娘×男の娘、があります。
  男の娘×フタナリ、があります。
  クセの強い作品ですので、ご理解いただける方のみ閲覧をお願いします。


-------------------------------------------------------



               1.

 幼いころから一緒だった親友は、三か月ほど前から様子がおかしかった。
 急によそよそしくなり、遊びに誘っても断られるようになった。
 最初は彼女でもできたのではないのかと疑ったのだが、そうではなかった。
 春休みが終わると、親友はとある女子生徒のオンナになっていたのだ。
 セーラー服を着て、髪を伸ばし、言葉使いや仕草までも女の子らしく振舞うようになった。
 しかも首元には隷従を意味する“首輪”。
 気が付いたら親友は女装奴隷となり、女子生徒のペットになっていたのだった。





「やっほー、しおんちゃん。 昨日は“お楽しみ”だったねぇ。 また今度もいっしょに仲良くさせてねぇ?」

 どこにでもありふれた通学途中の朝のこと。
 意味深な言葉と共にいやらしい目で、親友“有坂詩音”を取り囲む女子生徒たちの声。 けれども、首輪をかせられた詩音は明るく「おはよう、佐藤さん」と平然と返すものだから、エロスティックな雰囲気は、そのまま泡となって消え失せた。

「うーん。 しおちゃんって、顔がちっちゃくて、身体もすらっとしてて、ホントお人形さんみたい・・・・・・ くんかくんか、なんかいい匂いがするしぃ」

「ちょっとアンタ変態っぽいわよ。 ねえ、しおんちゃんしおんちゃん、こっち向いて。 新作のリップ塗ってあげる。 きゃあ、やっぱりしおんちゃんのお顔には、ピンクが一番良く似合っているわ」

「ねえねえ、そのウサギさんとクマさんのストラップお気に入りなの? かわいいね、わたしもお揃にしていい? どこで買ったの、教えてよ?」

 口を開けば可愛いだの愛くるしいだの、右も左も詩音に夢中な女子生徒たちは姦しい。
 重なる鼻息に圧倒され、詩音は少し困った表情を浮かべる。 やんわりした声を奏でると、そのくすぐるような微笑みにまた、黄色い歓声が上がった。

「もう、一度に話しかけられたらボクも困っちゃうよ。 でも、皆、ありがとう」

「「「きゃああああああああああ♪」」」

 甘栗色のセミロングヘアの毛先をイジリながら、女子生徒たちと戯れる詩音。
 華奢な鎖骨と無駄な膨らみのない胸。 背は女子生徒たちよりも少し高い。 男子生徒でいうところの中肉中背の身体つきは、清楚なセーラー服をより美しく際立たせている。
 中学生時代から冷静沈着な性格ではあったが、やんちゃしていたころから垢が抜けすぎた詩音は今、学園全体のペットでありマスコットとして愛されていた。
 少々セクハラじみた質問やスキンシップに難なく対応するが、時折見せる儚げな表情。
 一年生、二年生のころはまだ普通の学生ではあったが、三年になったころ、とある人物の愛玩奴隷になったことから、詩音の立場は大きく急展開した。 
 ―― しかし、ただ一人それを快く思わない人物がいる。

「それでね、しおんちゃん、今日はさ――」

「お前ら、いい加減にしろよっ! 朝からうっとうしいぞ!」 

 詩音の親友であり幼馴染である“海藤夏樹”は苛立っていた。 10年以上ものらりくらりと惰性で歩いていた通学路が、今や懐かしく思える。
 有坂詩音が普通の女の子であるならば、たとえ夏樹が恋人であったとしてもここまで苛立つことはない。 だが、そうではないのだから彼は激昂した。
 声を大きくして叫び、一瞬女子たちは怯んだが、すぐに口を尖らせ夏樹を口撃する。

「な、なにを怒っているのよ、夏樹。 びっくりしたじゃない」

「そうよ、せっかくみんなでしおんちゃんことを可愛がっていたのに、邪魔しないでよね、なっちゃん」

「なっちゃんいうなっ! お前ら全員可笑しいと思わないのか?」 

 今日という今日はもう我慢できない。
 親友の胸倉をつかんでは人だかりならぬ女だかりから引きはがし、詩音のスカートを捲りあげ、再び犬歯をむき出しにして怒号する。

「詩音は男! 男なんだ! 括目してよーく見やがれこのふくらみを!」

 スカートの下、詩音の股間には女性ものの可愛らしいショーツで覆われている―― しかし、そこには男にしかない陰茎がはっきりと浮かび上がっていた。

「きゃあ!」

「きゃあじゃねぇよ、どこまで女になりきっているんだよ、詩音。 いい加減目を覚ませ」

 可愛らしい悲鳴を上げて下着を隠した男の娘。 恥らう顔はどの花よりも愛らしいが、有坂詩音は正真正銘18歳の男である。
 もちろんペニスも標準サイズのものがついている。
 いくら見てくれは良くとも、この厳然たる事実を直視すればきっと女子生徒たちの熱も冷めるだろうと夏樹は踏んだのだが、

「やめなさいよ、夏樹。 しおんちゃんが嫌がっているじゃない」

「そうよ、スカートめくりなんて小学生がすることよ、夏樹のエッチ!」

「だからこいつは男なんだって。 スカート履いていること自体変なんだって」

 熱が下がるどころかますます白熱する女子生徒たちに、夏樹は呆れながらも切実に訴えかける。 女生徒たちが憎いわけではない、ただ自分の嘆きと苦しみをわかってもらいたかった。
 しかし想いは伝わらず、女生徒たちは夏樹が悪者だと言わんばかりに反論する。

「女装だぞ、女装! いいのか、お前らそんな変態が学校にいて!」

 夏樹が厳しい言葉を投げかけるも、女子生徒たちに鼻で笑われた。

「いいじゃない、可愛いんだし、それに似合っているんだから」

「羨ましいのなら夏樹もすればいいじゃない・・・・・・」

「なんでそうなるんだよっ! この分からず屋!」

 想いが伝わるどころかあさっての方向に流されてしまう。
 それに元々、夏樹は気が長い方でもない。 教師であることを鼻にかけてネチネチ陰湿なイジメをする男を殴ったこともあれば、道路を渡れない老人のために授業をさぼって家まで送り届けたこともある。夏樹はそういう男だった。
 そして親友であるはずの詩音は本来、冷静かつ大人びた言動で彼を援護し、時に諌めたりもしてくれるので、最高の相棒だと夏樹は思っていた。

「夏樹、その、ボクのことは気にしないでよ。 えと、女の子の恰好するのもさ、いやじゃないっていうか、馴れれば別に恥ずかしくなし・・・・・・」

「詩音、お、お前、マジなのかよ」

 信じられないっといった表情でかつての親友の姿を視る夏樹。
 これだけ怒りを露わにしても、詩音本人さえ何も感じてもらえていない。
 小学校、中学校、そして高校生と彼の男らしい部分を知っている夏樹としては受け入れ難いショックだった。 映画館で二人ハリウッド俳優にも負けないような男になろうと約束し合ったこともあったはずなのに。共にプロテインのジョッキを乾杯したこともあったはずなのに、裏切られたような気分に陥った。

「ほらほら、本人がこう言っているんだから諦めなさいよ夏樹。 親友なんでしょ?」

「そうよ、自分が相手にされないからって嫉妬なんてカッコ悪いよ」

「あぁん!?」

 油を注ぐような一言に鋭い眼差しを返すが、女子生徒たちはやはり一瞬怯むものの、すぐにまた距離を取って非難の声を上げた。

「べーだっ、悔しかったら夏樹も女装して可愛くなったらどうなの?」

「そうそう、なっちゃんだって素材はいいんだから磨けば光るよ」

「むっはぁー、いいね、それ。 想像したらあたしも興奮してきちゃった」

 確かにそれは事実だった。 女子生徒たちよりもさらに低い夏樹は小学生と間違われてもおかしくない体躯で、顔つきもあどけない。 学ランを不良っぽく着崩しているのもそのためで、私服だとよく女の子と間違えられ、男に声をかけられることもしばしば。
 なぜなら、伸びた黒髪はカワイルドに整えられたコシのある髪質。
 杏子型の瞳は自分より大きいものにも決して負けないぞと、常に生意気に吊り上っている。
 ほのかに赤い頬を膨らませてしまうのは。小学生からの悪癖で、そのせいでより幼く見られることも多い。
 詩音とはまた違ったタイプの美少女に見えるが、彼はそのことで昔イジメられていたこともあって、揶揄する言葉には非常に過敏だった。

「お、オマエらなぁ・・・・・・」

 夏樹は怒りの矛先を探していた。精緻な顔が見る見るうちにさくらんぼとなり、長い睫毛が忙しく震えだす。
 このとめどなく溢れる熱い淀みの感情を、すぐにどこかへぶつけなければならない。

「ねえ、しおんちゃんもそう思うよね?」

 そう尋ねられると、詩音はゆっくりとうなずく。 昔と同じく、幼馴染は夏樹の目をまっすぐに見つめながら、

「う、うん・・・・・・ ボクも、その・・・・・・ 夏樹と一緒だったら・・・・・・」

「「「きゃああああああああああああああ♪」」」

 また、割れんばかりの歓声が夏樹を巻き込んで上がる。
 夏樹がキレる理由としてはそれで十分だった。

「詩音、てめぇ―――― っ!」

 感情のまま、悲しみを握りつぶして拳を振り上げる。
 夏樹は女を殴らない。 だがしかし、女の皮をかぶった卑しい親友には容赦しない。
 ところがその手は詩音に届く前―― 正確には振り上げたところで止められてしまう。

「・・・・・・ なに・・・・・・ して・・・・・・ いるの?」
 
 寒気がするような抑揚のない声とともに、現れた身長180cmの女子高生。
 夏樹と並べばそれは大人と子供といってもおかしくなく、ちょうど目線の位置にバストが来ることを夏樹は屈辱としてとらえている。
 彼女の登場により場の空気は一変し、全国的にも春麗らかな明るい日だというのに、急に気温が下がったような気がした。
 遠い異国の血を引いた藍色の瞳と色素の薄い髪色。 氷像のように長くしなやかに伸びる手足と、高すぎる腰の位置。 鋭利な顎と、彫の深い中性的な顔立ちをしたポーカーフェイスは、セーラー服でさえ子供じみて見える。
 彼女は空手を習っていた夏樹の手をいとも容易く掴んだまま、憂い気な瞳でみんなを見下ろしていた。
 そして彼女こそ夏樹の親友“有坂詩音”に首輪をかけ、彼を女子生徒たちの愛玩奴隷にした張本人であり、夏樹が真に憎むべき本当の相手。

「・・・・・・ 喧嘩は・・・・・・ だめ・・・・・・ 暴力・・・・・・ よくない」

「くっ、天原ノエル」

 夏樹は高身長ハーフの女子生徒―― ノエルに対し、飢えたオオカミのような目を向ける。 だが、彼女は臨戦態勢の夏樹のことなど目もくれず、詩音の方に向かっていく。

「大丈夫・・・・・・ けが、ない・・・・・・ 詩音・・・・・・?」

 まるでお姫様を助けに来た白馬の王子様のごとく、詩音の頬を撫でる。 口元だけで微笑み、当然のごとく手を繋いだ。

「はい・・・・・・ ありがとうございます・・・・・・ ご主人様」

(ご、ごしゅじんさまぁだと!?)

 ぽっと頬を染める詩音は、夏樹の知らない顔をしていた。 自分がノエルの所有物であることをどこかうっとりとした表情で肯定し、夏樹は怒りを忘れて愕然としてしまった。 

「「「きゃあああああああああああ♪」」」

「うわっ―――」

 途端に夏樹を突き飛ばし、詩音とノエルの二人に群がる女子生徒たち。
 ご主人様と奴隷という異常なカップルであるにもかかわらず、学園内でも黙認された人気者。 二人とも銀幕の女優のように見目麗しいものだから、目の抱擁とまで言われ、女子生徒たちからは熱烈に支持されてしまっている。
 特に天原ノエルは1,2年のころから学園の王子様と呼ばれ、天原グループという財閥の令嬢であることから、浮世絵離れしているのも今に始まったことではない。
 クールでミステリアスなご主人様に束縛されたいという女子は悲しいことに意外と多く、隷従を示す人間首輪も婚約指輪と同等の価値として見られているのかもしれない。

「くっ、くそ・・・・・・ おい天原!」

 弾き飛ばされた夏樹は懲りずにすぐさま回り込んで、仔犬のようにキャンキャン叫ぶ。

「・・・・・・」

「お前いったい詩音に何をした! 詩音が可笑しくなってしまったのは、全部お前が原因だろ?」

 夏樹は周囲から白けた目で見られていることには気づいていたが、己の正しさを信じて疑わない。 人を犬猫のように扱う女子生徒を、たとえそれが巨大企業と戦うことになろうとも、黙って見過ごすことはできなかった。
 しかし、ノエルは詩音を抱いたまま黙って夏樹の横を通り過ぎようとした。

「無視するな! 答えろよ、天原!」

「・・・・・・ 別に。 ・・・・・・ 君には・・・・・・ 関係ない」

「なんだと!」

「・・・・・・ 君は、詩音のことを・・・・・・ なにもわかっていない」

「こいつ!」

 侮辱ととらえ、夏樹は力づくでノエルに掴みかかろうとしたが、その前に今度は詩音が立ちはだかった。

「やめて、夏樹!」

「詩音どうして!」

 身体を張って止めに入る親友に、言い様のない悲しみが押し寄せてきた。 詩音はいつも夏樹の味方で、誤解や行き違いから他の全員が敵にまわった時も彼だけはいつも “笑顔”で支えてくれていた。
 にもかかわらず今、夏樹の目の間に立つ詩音は寂しげに眉を下げ、胸を痛めている。

「どうしてだよ、詩音! お前、本当ににどうしちゃったんだよ」

「・・・・・・」

 心配する夏樹に詩音は答えない、ただ首を横に振るばかり。

「なんで何も言ってくれないんだよ! 俺たち、親友だろ!」

「夏樹・・・・・・ いいんだ、もう、いいんだ。 ボクと、ご主人様のことは放っておいて・・・・・・ これ以上なにかしたら・・・・・・ ボクは、ボクは夏樹を敵にしなくちゃいけない」

「し、詩音・・・・・・」

 夏樹は何も言えなくなる。 詩音の瞳に浮かんだ涙に、親友としてどう対処すればいいのかわからない。 親友のことがわからないなんて、今までかつて経験したことのないことだった。
 そこへノエルが、見せつけるように詩音を抱き寄せ肩を抱く。

「・・・・・・ 詩音は・・・・・・ いい子ね・・・・・・ いい、奴隷・・・・・・」

 詩音の耳元で甘く囁きながら、ノエルは悠然と去っていく。 その表情に驕りも喜びもなかったが、当然夏樹には目もくれない。

「あ、あ、ちょと、まて・・・・・・ 待てってば」

 未練がましく引き留めようとするが、夏樹はあまりにも脆弱だった。
 さらに追い打ちをかけるようにノエルは、心配して一瞬夏樹の方を振り返った詩音の首を強引に寄せて、

「――――っ!?」

 天下の往来で、見せつけるように二人はキスしていた。
 行き交う人々は唖然とし、あるいはそれを羨むような表情で見守っている。
 勝者の余裕か、挑発か、夏樹にはとうとうわからなかったが、歯牙にもかけられない自分を情けなく思った。

「・・・・・・ あ、あのさ、夏樹」

 すると、先ほど夏樹と口論した女子生徒たちが3人。 その場で残って、夏樹に声をかけてきた。

「あ、あんまり気にすることないよ。 あの二人は特別っていうかさ、わたしたちとはもう住んでいる世界が違うっていうか、そんなにしょげないでよ」
 
 一人が勢いに任せて肩をバシバシ叩いてくる。 同時に他の二人も夏樹に駆け寄ってきた。

「そうそう、夏樹には夏樹のいいところがあるんだし。 ほらアンタはさ、天原さんと違って友達がたくさんいるじゃん」

「人一倍図太い神経しているアンタが落ち込むなんて、らしくないぞ、気晴らしに遊ぶんだったらあたしたちも付き合うからさ、ほら、カラオケでもバッティングセンターでもさ、夏樹の好きなところでいいよ」

 背の小さな夏樹は同情されることを暗に嫌ってはいたが、優しく慰めてくれる人そのものを無下にしたことは一度もない。 そのときもまた、ちょっとぶっきらぼうになりながらも彼なりに感謝を表した。

「ああ。 さっきは、その、言い過ぎた。 悪い。 それから、ありがとう」

 イマイチ子供扱いされていることは不満だったけれども、夏樹はまた男らしく胸を張って歩みだした。







 高校1年生の春。 夏樹は初めて告白したが、結果は残念。 好きな相手がいるからといって断られた。 その告白した相手が好きな人というのが天原ノエルであり、二人目に告白した相手にも同じことを言われた。 以降、彼はなにかとその名を聞くことになる。

(ノエル、詩音・・・・・・)

 夏樹たちが通う学校は最近まで女子高校だったせいか、男子は全体の5%しかない。 その中で最も背が低いのが夏樹で、女子生徒の中で一番背が高いのがノエルだった。
 体力測定でも、芸術コンクールでも、文集でも、音楽祭でも、僅差のところでいつも夏樹はノエルに敵わなかった。 定期試験考査においてはダブルスコアで負け、家柄や財力においては話にもならない。
 夏樹がノエルに勝てるものは何もない、これは夏樹自身が認める事実。
 しかし、周囲の学生が面白がって囃し立てていても、夏樹はそれを別段気にしたことはない。 むしろ、いつも一人で行動する彼女のことを“変わったやつ”と思うだけだった。

(アイツが、詩音に手を出しさえしなければ俺は・・・・・・)

 噂では、ノエルの奴隷となった詩音は、日夜口にするのも憚られるような淫らな行いをしているとか。

(絶対何かあるはずなんだ、あいつが、詩音があんなふうになってしまったのにはなにか理由があるはずなんだ)

 夏樹が苦しんでいるかもしれない、それが夏樹を突き動かす。
 必ずやノエルが詩音に乱暴しているという証拠を見つけ、警察に突き出してやると躍起になる――
 奇しくもこの場に詩音がいたのであれ、間違いなく彼を止めたであろう。



 そして夏樹は一人、天原家に忍び込み、案の定ノエルに捕まってしまうのだった







               2.


「夏樹、すまない。 ぼくは、ぼくは・・・・・・」

 ホテルのような豪華な一室で、夏樹は裸のまま手を後ろに拘束されている。 キングサイズのベッドの上に座らされ、その 肩を彼の親友が逃げられないようしっかりと抑えつけていた。

「お前は謝らなくていい。 俺が勝手にやってヘマしただけなんだから・・・・・・」

 夏樹は親友を恨むことはなく、逆に震える詩音を優しく労った後、再びその瞳に闘志を燃やした。
 二人の目の前にはバスローブ一枚を羽織った天地ノエルが佇み、夏樹の怒りと冷たい視線とがぶつかり合っていた。

「驚くべき執念・・・・・・ 君は、勇気がある・・・・・・並外れた行動力・・・・・・他の人たちとは・・・・・・ 少し、違う感じがする・・・・・・ バカだけど・・・・・・でも見直したよ・・・・・・」

 意外な高評価ではあったが夏樹には褒め言葉には聞こえず、むしろ煽り文句と思い込んで、こちらも負けまいと笑いを返した。

「はっはっはっは。 それはどうも。 汚い真似しやがって・・・・・・ 聞いたぞ。 詩音の親父さんたちの借金を肩代わりする条件に、詩音を引き取ったんだってな」

 有坂家の会社が倒産したのは半年前。
 その多額の負債を背負ったのが天地ノエルの親が経営する会社であり、そして詩音の態度が急によそよそしくなり始めたのもそのときで、時期はぴたりと重なる。
 急に女装を初めて女らしくなったり、急に後輩をご主人様と呼び出したり、きっとお金で脅して淫らなことを強要したに違いないと夏樹は思った。 でなければ、兄弟同然に育った親友が、何も言わずに自分の前から去っていくわけがない。

「あっ、夏樹、それは、ちょっと違――」

 詩音は何かを言いかけたが、それをノエルが手で制止して、

「・・・・・・ そう思うのなら、別に、構わない・・・・・・ だけど、今日・・・・・・ わたしは・・・・・・ 夏樹、君を新しい奴隷にするよ・・・・・・?」

 その手には詩音と同じデザインの首輪がもう準備されていて、重みのあるベルトとバックルが鈍い光を放っている。 一口に奴隷といっても労働奴隷と呼ばれるものもあるが、ノエルが言っているのは愛玩奴隷のこと。 すなわち夏樹もまた女の子のように可愛く着飾り、辱しめ、身体を使った性的な奉仕までを望まれていた。

「はっ、俺を奴隷にするのか? 調子に乗るな! 俺は、お前なんかに買われるほど安い男じゃない」

 極めて絶望的な状況下において、夏樹はかつてないほど輝いていた。 己を鼓舞するためにも力強い言葉を吐いたのも、友達を助けるために行動した自分を褒めてあげたい。 捕まってしまったことは間抜けと言われざるを得ないが、詩音と一緒ならば地獄の底で木の棒しかなくても戦える。

「お金じゃないよ・・・・・・ これから・・・・・・ 君は調教されるんだ・・・・・・ わたしと、詩音に・・・・・・ そして、君は・・・・・・ みっともなく喘いで・・・・・・ 二人とも、同じ・・・・・・ 奴隷に・・・・・・ 堕ちる・・・・・・」

 ゾクリと背筋が震えたのは、やはり詩音の名前がそこにあったから。 横を向くと、詩音は『ごめんなさい』するみたいに顔を伏せて、震えていた。

「大丈夫・・・・・・ 安心、して・・・・・・ 痛いのは最初だけ・・・・・・ すぐに、たまらなくなるから・・・・・・」

 穏やかに語る調教師は、バスローブを外して肌を露出させた。

「なぁ!」

 ノエルの全裸が露わとなったその瞬間、夏樹は言葉を失ってしまった。
 天を突くようにいきり立つのは紛れもなく男の逸物。 鎖状に太い血管を浮かび上がらせながら、猛々しいその肉棒を握りしめていた。

「・・・・・・ これが私の秘密・・・・・・ 私のオチンチン・・・・・・ おっきい、でしょ・・・・・・?」

 麗しく端正な容姿とはあまりにも似つかわしくない、魔物のような生殖器。 獲物を睨みつけて脈動する様に、夏樹は反射的に唾を飲みほした。

「ふ、ふたなりってやつか」

「怖がらなくてもいいよ・・・・・・ すぐに・・・・・・ 夏樹も・・・・・・ これのこと、好きになるから・・・・・・」

 緊張して身構える夏樹に対し、ノエルは涼しげに微笑むことで余裕を露わにする。

「言いたい放題言いやがって、覚えてろよ」

 しかし威圧感を湛えたノエルの生殖器は信じられないことに、夏樹を見て欲情し、猛りを強くしていた。

(きっと、コイツで詩音にも乱暴を・・・・・・ ぐぅ、なんて業の深い女)

 平時であれば今すぐ拳を振るっているところであるが、両腕を縛られた上に肝心の詩音に身体を抑え付けられている。夏樹は凶悪なペニスに向き合わされ、顔を背けることも許されなかった。

「ち、近寄るんじゃねぇ! このオカマ野郎! テメェ自身の身体でファックしてろ、このボケ!」

 夏樹の叫び声が虚しく室内に響き渡る。 無論、その願いが聞き入れられることはなく、脚の間に割って入られると、ノエルはそそりたつフタナリペニスを、夏樹のペニスに押し当て比べるように並べてきた。

「・・・・・・ くすっ、大きな声で騒ぐわりに・・・・・・ 夏樹のは・・・・・・ かわいい、おちんぽ、だね・・・・・・ 」

 キスしているみたいにくっついている二つの男性器、けれどもその差は歴然だった。 夏樹は青ざめると、自分の倍以上ある男根を見つめたまま凍りつく。 綺麗なサーモンピンクをした夏樹のペニスとは異なり、ノエルのものは赤黒く生命力に満ち溢れていた。 これに比べれば夏樹のモノはまるで綺麗なナメクジ。
 オスとして優れているのはどちらなのか、女性を真に悦ばすことができるのはどちらなのか、フタナリペニスはお子様サイズにのしかかりながら、そう語りかけてきた。
 同じ男に負けるのなら受け入れられたかもしれないが、相手が綺麗な女の子で、それも親友の敵になるべき相手に敗れたことは、想像以上にショックが大きかった。

「・・・・・・ わたしの、圧勝」

 腰を少し動かし、ノエルの巨根が自慢下に反り返りながら短小ペニスを威嚇する。 夏樹のペニスから伝わってくる、熱さ、固さ、脈動の大きさは、いずれも男である夏樹に平伏と奉仕を強要してくる。

(うぅぅぅぅぅ。 化け物め・・・・・・)

 女子高校生の股間から生える臭みのある男性器。 夏樹は男としてのプライドを踏みにじられているというのに、心臓の鼓動はむしろ早くなった。 嫉妬とも羨望ともつかない正体不明の感情が芽生え、小さな亀頭がフタナリペニスに怯えるように蠢いていた。

「その顔は、悔しいの・・・・・・? それとも悲しい・・・・・・? でも、夏樹のチンポはピクピクってして・・・・・・ これって、どういうこと・・・・・・?」

「うあ・・・・・・ ひゃん・・・・・・」

 信じられないほど情けない悲鳴が口から漏れた。 おもむろにノエルは腰を押し付けて、二本のペニスを絡め込む。 固くゴツゴツした巨根の竿と、フニフニした夏樹の短小の竿が擦り合い、お互いの敏感部分を刺激し合った。 カリ首や、裏筋、玉袋を押し合って、先に腰を引いたのは男である夏樹の方だった。

「ふふっ・・・・・・ 小さいだけじゃなくて・・・・・・ 軟弱な・・・・・・ おちんちんだ・・・・・・」

 ノエルには夏樹のどの部分が敏感で、どの部分が弱いのか、自分の経験から見抜いているようだった。 切ない疼きがじわじわと上りつめ、亀頭をぶつけあうだけでもペニス全体に気持ちいい力が流れ込んでくる。

「や、やめろ、ヘンタイ・・・・・・ やめ―――― うわぁあ、な、なにすんだっ!」

 股間の方ばかりに気を取られて油断していると、背後から詩音が胸のあたりを揉みしだき出した。 指で乳輪をなぞり、脂肪を寄せたり上げたりして、あるはずのない女の子の乳房を形作って、屈辱に顔を真っ赤に染めた。

「し、詩音、なにして!」

 驚き目を見開く夏樹だったが、そこには泣きそうな顔をした親友の姿があった。

「だって、ご主人様の命令だから、その、えぇい」

「うひぃいいいぃううう」

 詩音の指は絹のようにすべらかで、くすぐったいような、気持ちいいような感覚を広げられていく

「詩音・・・・・・ 夏樹のおっぱい・・・・・・ どう?」

「・・・・・・ 思ったより、敏感でした。 すごく、感じてるみたい」

「ば、ばか詩音! おっぱいとか、い、いうんじゃねぇ!」

 夏樹は自分の身体が、他人の手で変えられていくことに、深く戸惑い始めていた。 我慢ならないはずなのに、身に起こる掻痒が甘い響きとなって伝播する。

「ほら・・・・・・ ほら・・・・・・ 気を抜いちゃ、だめ・・・・・・ 兜合わせはまだ・・・・・・ 終わっていない・・・・・・ このペニスで・・・・・・ 夏樹のペニス・・・・・・ 完膚なきまで・・・・・・ 負かして、それから、イカせてあげる・・・・・・」

 男のプライドをかけた勝負も、圧倒的な質量の前に短小ペニスはなすすべなく押し返されて、裏筋に食らいついた巨根の亀頭がぐりぐりと押し潰そうとしてくる。
 負けたくない、認めたくないと抗う夏樹ではあったが、漲るフタナリペニスの感触にいやらしい妄想が広がる。 巨根とヘソの下の間に自分の肉棒が挟み込まれると、抑えつけていた性的な興奮が急に高まっていった。

「う、うわ、ううう・・・・・・」

 しかし早漏を露呈して苦しむ夏樹を見て、ノエルは不気味なほど優しく笑う。

「・・・・・・ クス・・・・・・ 仕方がない。 ・・・・・・ 手加減、して、あげる・・・・・・ このままイクの・・・・・・ イヤ、でしょう?」

「え・・・・・・?」

 不意にペニスに圧力を感じなくなり、二つのペニスは拮抗する。 ビクビクと、すでに先走り汁を垂れ流しているのは短小の夏樹の方で、ノエルの巨根を先端から根元まで粘着性のある体液で塗りたくっていた。

「少しの間、動かないであげるから・・・・・・ 夏樹ので、イカせてみてよ・・・・・・わたしのオチンチン ・・・・・・ 男の子、でしょう・・・・・・ できる、よね・・・・・・?」

 余裕たっぷりで。馬鹿にされているのは分かったので、なりふりなんて構っていられない。夏樹は不恰好に腰を突き出し、自分のペニスでノエルのペニスを押し返そうとした。 それだけでも滲み出す肉の悦びにうんざりする。
 しかし、巨根が逆方向に傾いたのは一瞬のこと。 すぐにひしゃげてしまい上手くいかなかった。

「う、くっ、つぅ」

「くす。 ・・・・・・ 全然、ダメダメね・・・・・・ 大きさや長さだけじゃなくて、固さが足りない・・・・・・ お子様、クスクス・・・・・・ クスクス、お子様・・・・・・」

「うっ、うっ、うぅぅぅぅぅ」

 ノエルの静かな嗤い声がいつまでも耳の奥で鳴り響き、夏樹はかつてない劣等感に苛まれる。なんとかしようとしてもペニスはくちゅくちゅ水音を遊ばせるだけで、極太ペニスはまるで動じない。

「あ、あの、ご主人様・・・・・・」

 夏樹が苦戦しているとき、詩音は遠慮がちに主人の名を呼んだ。

「ふふふ・・・・・・ 詩音も・・・・・・ 夏樹のへたれっぷりに呆れている ・・・・・・ いいよ・・・・・・ それじゃあ・・・・・・ 慰めてあげて」

「えっ、あ、はい・・・・・・あむ」

「――――っ!?」

 赤くなった耳朶を甘噛みされると、再び詩音の手によって胸の愛撫がはじまる。 豊胸マッサージのような手つきから、今度は脂肪を燃焼させるように荒々しく揉みこんでくる。 それも素直に反応してしまうはしたない勃起乳首に向かって、詩音は夏樹の脇の下から顔をだし、膨らみのついた乳輪ごと口で吸い上げてきた。

「おあぁああぁぁっンン、し、しおん・・・・・・ おま! やめぇぉ・・・・・・」

 敏感になっていた乳首を無造作に吸引され、烈しい電気が胸神経に流れた。 なおも詩音は舌を泳がせて、夏樹を女の子として指導してくる。 元々男でありながら筋肉のつきにくかった彼の身体は、雪に桜が舞い込んだような色を付け、身体のラインも官能的なしなりをつくるようになった。

「くうん、ああああん ・・・・・・ も、もう、いい加減にしろよ・・・・・・ ううう」

 揉まれるのも、つままれるのも心地よくて困っていた。 親友に乳首と乳房の両方をねっとり愛撫され、断続的に繰り返される桃色の刺激にあえぐ。 下腹部ではノエルの巨根が悪戯に短小ペニスを嬲り、完全に受け身の態勢になってしまった夏樹。 声にも息にも切なさが混じり、ぐったりと首を詩音に預けながら、彼の腕の中で悦楽の波を高くさせる。
 イジメられていることに興奮して全身から汗が滴りおち、それもただの汗ではない。 妖しい色気を漂わせた、異性の気を惹くフェロモンのようなものが含まれている。 今の夏樹は、盛りのついた雌猫と変わらなかった。

(はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・ おっぱい、できあがっちゃう・・・・・・ ま、また、チンポもゴリゴリ押し込んできて・・・・・・ うわっ、今度こそ、つ、つぶされちゃうよ)

 ノエルと詩音は夏樹に考える時間を与えず、異常とも屈辱的とも感じさせる間もないくらい執拗に調教を早めた。 ノエルは鐘打ちのように巨根で短小ペニスを擦りつけ、詩音も胸を揉むことが病み付きになっている。

「も、もう、もう・・・・・・ ん、んんんん――――!」

 命令もなく、詩音が夏樹の唇を塞いだ。 それは男同士のキスであり、夏樹にとっては初めてのキス。 だが、口内いっぱいに酩酊するほどの甘露が染みわたり、活発な舌が歯列や歯茎を事細かくなぞってくる。 夏樹は甘味とその感触しか考えられないほど身体は脱力し、詩音の舌に口内を犯された。

(〜〜〜〜っ!? し、詩音の舌、や、やわらかぃ、こいつ、ほんとに男なのかぁ!? って、何考えてんだ、俺の馬鹿!)

 キスという行為がこれほど凄いものだとは考えたこともなかった。 魂すら痺れさすような愉悦感。 表情は瞬く間にふやけ、息をすることも忘れ、理性を埋没させていく。 四肢や胴体が溶け出して、口と頭だけのお化けになったような気がして、あらゆる感覚が幸せに思えてしまう。
 断で侵入してきた詩音の舌に導かれ、やがて二つの舌は口内で激しくまぐわう。 最初は遠慮がちだった夏樹の舌も一生懸命動き回り、口の端からは赤子のように涎を零していた。

「んん、んむ・・・・・・ んぐぅ・・・・・・ んぅ? ・・・・・・ んんんんんんっ」

 詩音の舌から流れてき唾液と夏樹の唾液と混ざり合って、大量の体液が白濁し口腔を占有する。 呼吸も苦しくなって、それらを一気に飲み込むと、強いアルコールを摂取したように舌が麻痺して身体が火照った。
 頭の奥で詩音は親友ではなくはじめてキスした女と自覚し、夏樹自身もまたただの男子高校生ではなくなっていた。

「・・・・・・ トロンってしている・・・・・・ 詩音も、夏樹も・・・・・・ ちょっと、羨ましい」

 嫉妬かどうかはクールな表情に隠れてわからなかったが、夏樹が忘れかけていた兜合わせの戦いがまた、激しさを増して再開された。

「あひぃいいん、いきなりそんな、んはあぁああああぁぁぁぁああん!」

 これが三度目。 巨根と短小が重なり合う。
 噴き上がる快楽に、悦んでいるとしか思えないほど大きな嬌声を上げる夏樹。
 防戦一方で、それもいともたやすくペニスを薙ぎ倒され、責められて、快感と屈辱に耐えきれず早々に諦めの気持ちを持ち始めて行た。

「・・・・・・ ん? もう抵抗はやめちゃったの? ・・・・・・ それって負け、を認めるってこと・・・・・・ 自分が、メスだってわかったってこと・・・・・・?」

「う、うるさい・・・・・・ ふぐぁ!?」

 射精に導くためではなく、夏樹のプライドを微塵も残さないためのピストン運動が開始される。 じゃぶじゃぶ水音を立てて、ノエルの巨大な亀頭が逃げる短小ペニスにのしかかり、根元から亀頭の先までを激しく往復して摩擦した。

(くやしい・・・・・・ くやしいのに、なんでこんな、う、う、ううぅううん・・・・・・)

 瞼を閉じれば身体中のあちこちから痛みと鋭い快感が散ってくるのがよくわかる。 目まぐるしく変化する感覚についていけず、夏樹はただ芋虫のごとく身をよじらせている。 しかし淫らな蝶に生まれ変わるための調教はなお続き、見た目は麗しい二人の少女にぴったりと挟まれて、胸と性器を揉みくちゃにされる。
 首筋を鮮やかなピンク色に染めながら、鎖骨には匂いのある汗がたまる。 固くなった乳首に柔軟な胸周り。 陰部も内腿も甘く痺れ、夏樹とノエルのいやらしい先走汁が膝の下まで垂れている。
 屈服したペニスは滾りを失い委縮していたが、ビクビクした反応は最初の頃よりもずっと強い。 勃起はしていないが射精はしたいようで、兜合わせで巨根に押しつぶされる毎に気持ちよさそうにし、夏樹の表情も締りがなくなった。
 まるでペニスがペニスに犯されているような錯覚に、ぬめり気のある糸を絡めてドロドロに混ざり合っていく。

(き、きもち、いい・・・・・・ なんで、なんで、こんな・・・・・・いじめ、られているのに・・・・・・)

 気持ち良くなんてなりたくないのに、嬉しい喘ぎ声と性的な震えが止まらなくなっている。フタナリ少女と女装男子に責められるという倒錯的なシチュエーションが、身体を炎上させる。
 夏樹には段々とペニスとしての感覚が薄くなってきて、その代わりに女性の恥部を想像するようになっていく。自分の不甲斐なさに涙さえ出そうになるのを堪えて、あぁ、あぁ、と鳴き声もまた悲しい女の嬌声と化す。
 そして兜合わせの勝利―― オスとしての勝利を確信したノエルは、二本のペニスを指で束ねて大きく腰を振った。 まるで小さな男の子の子宮がそこにあるかのように、勢いに任せて腰を振り続け、執拗なまでに肉棒を刺激し合う。 手淫とも、セックスともつかない濃厚かつ猛烈な愛撫に、夏樹は壮艶なる白昼夢を垣間見た。

(ああ、ああ。あああ・・・・・・)

 甘い痙攣をはじめながら『く』の字に腰が折れ、引けたお尻が背後の詩音と密着する。 そうすると今度は、「ごめん」の一言で乳首が取れそうになるほど思い切りひねられて、激痛により再び背筋をピンと伸ばす。 その繰り返し。 夏樹の股間を犯す巨大なフタナリペニスはさらにその腰の動きを速め、グリグリと亀頭をねじり込んでくる。 か弱き肉壺と化した夏樹はあらゆる感覚に悶え困窮しながらも、ゆっくりと高みに登りつめていく。

「ふふ・・・・・・ イクんだ? ・・・・・・ 夏樹・・・・・・ オチンチン潰されて・・・・・・ イっちゃうんだ・・・・・・ いやらしい子・・・・・・ 情けない子・・・・・・ でも、かわいい」

 セックスどころかキスさえしたことのなかった童貞が、恐怖と快感でよがりながら理性を塗りつぶされていた。 快感神経を身勝手に改造されて、オスとしての機能を喪失する代わりにメスとしての悦びに目覚めつつある。
 股間を圧迫されて痛みと苦しみで辛いはずなのに、無意識に腰は二人に媚びて跳ねまわる。 ハートを描くようにいやらしくお尻を振って、このまま快楽の虜になっていいとさえ一瞬だが思ってしまった。

「ふぇあっ! んふぇぁ、んはぁあぁぁぁ・・・・・・!」

 ガコンと、ノエルの巨根に股間を直撃する。 潰れた夏樹の短小ペニスが小刻みに震えだし、身体全体もそれに反応するかのようにみっともなくわななき、口をパクパクさせながらほんの少し腰を引いた―― その瞬間、思考が薔薇色に染まった。
 ビュッ! ビュルルル! ドビュビュビュ――!
 男として白旗を上げるように、負け犬の精液が二人の身体を汚す。 夏樹は自分一人で立つことができず、詩音に支えられながら二度、三度固さのなくなったペニスを跳ね回らせ、赤黒い大人ペニスの前にひれふした。

「んぐつ! あ、んんんんんんっ!」

 射精を終えた夏樹を突き飛ばし、詩音はそれが当然であるかのようにノエルの前にかしづき、白濁液で汚れたフタナリペニスを飲み込んだ。

「ああああああああああああああああああ」

 情婦よりもいやらしく首を前後させ、男であるはずの詩音が女のノエルに口奉仕していた。 リズミカルに、かつ深いストロークで、頬をこけさせてまで行うバキュームフェラに射精したばかりの夏樹もゾッと血の気が引いていく。
 保育園にいたころから親友のことは知っていたが、そんなあさましい表情を見たのは初めてだった。 とても人間のすることとは思えない。
 そして、夏樹では満足させられなかった巨根は詩音の口の中に精を放った。

「んっぐ、んぐ」

 奴隷の詩音は主人から受け取ったものを一滴も零さず口に含む。 ノエルと、夏樹の精液を混ざり合ったものをしっかり撹拌させながら――

「んぐぐぐぐ――――――っ!?」

 ―― なんと、夏樹の口の中に流し込んだ。

(なにしやがんだ、このぉ〜〜〜〜〜っ!?)

 無理やりに唇を重ね、彼が力のない足をばたつかせていることにも気にも留めず、その味と匂いと食感をまざまざと伝えてきた。 同時に、新しい主従関係も明確になる。

(が、がああああ、ドロドロとしたものが、なかにぃいいいい――――)

 混ざり合った精液は一気に喉奥まで一気に達し、逆流したものが夏樹の鼻から垂れる。 むせ返るほどの口内汚染、しかし吐き出そうとする気持ちはノエルの冷たい視線の前に霧散してしまう。 短い間だったが、散々と心に鉄杭を打ち込まれて、気持ちが完全に逃げてしまっていた。

「ふわぁ、夏樹・・・・・・ 全部飲めたんだ? はじめてなのに、すごいよ」

「うん、えらい、夏樹・・・・・・ よく、がんばったね・・・・・・いい奴隷だ・・・・・・」

 ノエルと詩音の物優しげな笑みも、今は耳を塞いでおく。身も心も穢されて、生気のない瞳で機械的に精液を飲み下していく。 その顔は汗と涎にまみれ、若々しい青年の闊達さは見る影もなくなり、ただ蹂躙されるだけの雛鳥となった。
 ペニスは当分再起不能、かもしれない。
 乳首が真っ赤なルビー原石のように輝いている。 身体中風呂上りの熟女のように濡れぼそり、獣の情欲を誘う妖しい匂いを漂わせていた。
 ―― しかし、長い夜はまだ始まったばかり。

「まだ・・・・・・ 終わりじゃない・・・・・・」

「え?」

 信じられないものを見る目で、夏樹はノエルの下半身を見た。

「・・・・・・ 夏樹は・・・・・・ 兜合わせの勝負に負けたんだから・・・・・・ 罰として・・・・・・ このまま、これでお仕置き、してあげる・・・・・・」

 そこには一度の射精では全く萎えることのないフタナリペニスが、夏樹を見下し待ち構えている。
 彼はもう、悲鳴すら上げることさえ許されなかった。







               3.


 できうることならすべてが夢であってほしいと夏樹は願う。
 しかしノエルは更なる淫獄へ突き落そうと企て、裸の夏樹にふさわしい衣装を用意していた。

「・・・・・・ 裸だと寒いでしょう・・・・・・ 今度は、それ着て・・・・・・ 小学生の女の子になるの」

 夏樹に拒否権などなかった。
 後ろ手の拘束から解放されたものの逃げる気力などなく、疲労と屈辱に震えながら“スクール水着”をあてがった。

「うぐっ。 これ、新品じゃないのかよ」

「うん・・・・・・ 新品じゃない・・・・・・ 後輩のユリコのもの・・・・・・ 確か、夏樹が好きだった人、だよね・・・・・・ ?」

「ど、どうしてそれを、詩音か・・・・・・」

「・・・・・・」

 詩音の名前を出されると、夏樹はなにも言えない。
 初恋の甘酸っぱい記憶を凌辱に利用されて、ノエルに対する憎しみが増すばかり。 しかし彼女の妖艶な眼差しを見ると、身体に植え付けられた淫靡な炎が目を覚ます。

「・・・・・・ でも、心配・・・・・・ しないで・・・・・・ 名札変えれば・・・・・・ ほら、これはもう・・・・・・ なつきのもの・・・・・・ 君は・・・・・・ 今日から・・・・・・ 小学生の女の子・・・・・・ かわいい、わたしの・・・・・・ マゾ奴隷・・・・・・」

「〜〜〜〜っ!?」

 途端にその布きれ一枚が、呪われた防具のように思えてならなくなった。 これを着たら今度こそ自分は元には戻れない。 途方もない不安を抱きながらも、フタナリ少女を悦ばせるための水着を着て女装する。

(俺がちっちゃいのをいいことに、こんなの、俺に似合うわけ・・・・・・)

 しかし、夏樹の予想は大きく外れることになる。
 女子小学生用のスクール水着とはいえ、小柄な夏樹ならば少しきついだけで着用できてしまう。 伸縮性のある生地を伸ばして肌を通すと、ザラついた独特の質感に驚く。 JSサイズの型にはめられて、ぴったりと身体に張り付いてくる。 夏樹の委縮したペニスはU字に尖った股間の中に隠れ、幼くも美しい身体のラインがより強調されてしまった。
 身体中の汗が染みこんだスクール水着はその色を濃くして、より淫らなデザインとなっているような気がした。

(ううう、この水着をユリコちゃんが・・・・・・ 変態かよ、俺・・・・・・)

 夏樹は同じ水着を自分が好きだった女の子が来ていたのかと思うと、彼女の過去までも穢してしまった気になり、また罪悪感と背徳感で身体の火照りが蘇ってくる。
 開発途中の乳首の上には『なつき』という自分の名前が入っているのだが、ここではその意味合いが大きく変わり、一人の幼い少女として学生水着にまた官能をくすぐられてしまった。

(くそ、お尻が食い込んで・・・・・・ なんか。なんか・・・・・・)

 むちっとはみ出したお尻の食い込みが気になって、縁側に指を入れてそれを正す。 身体を締め付けられている気がして、スクール水着は裸の時よりもずっと居心地が悪い。 それも二人分の視線に肌をジュクジュクと焼きながら、夏樹は不誠実な興奮を覚え始めていた。
 最後に前髪をすべてアップにしてまとめれば、あどけない容姿が包み隠さず明るみに出て、仕草までもがちょっとエッチな女子小学生となった。

「やっぱり思った通り・・・・・・ 似合う・・・・・・」

 長い腕を伸ばして、ノエルは『な』の部分に浮き出た乳首の形を指で挟む

「んぎゃあ、なにを・・・・・・ ま、またそこかよぉ! いい加減、そこは、や、やめぇ」

 クニクニと右と左の乳首を転がされ、すっかり快感の味を覚えてしまった身体は跳ね、白い電気が迸る。
 するとそれを非難するように詩音が声をかけた。

「やめろじゃないよ。夏樹。 『ありがとうございます、ご主人様』か『もっと夏樹の乳首をいじめてください』だよ」

 意外な言葉に夏樹は目を丸くし、水着と身体を抱きしめながら聞き返す。

「し、詩音? なんで――!?」

 夏樹は戸惑いながら、様子がおかしい詩音に問う。 彼は何も言わずに、ノエルの目線にだけ従っていた。

「仕方がないんだよ、夏樹。 ボクたちはもう奴隷なんだから、奴隷は、ご主人様に媚びて敬わないと、可愛がってもらえないんだから」

「・・・・・・ し、詩音」

 信じられないっと言った表情で親友の顔を何度も見直すと同時に、同情する。

「夏樹だって、もうすっかり感じちゃってるじゃないか? ボクを助けるためにここにきたはずなのに・・・・・・ 情けない。 最低だよ」

「ち、ちがう! こんなの本当の俺じゃない!」

 気持ちが割れ、目頭が熱くなり、夏樹は自分がこんなにも弱い人間だとしったのは初めてのことで、けれども快感熱だけは依然身体の中に胎動し、鳥肌をつくりながら駆け抜ける。 女子小学生の衣装にひきずられるようにして、

「・・・・・・ うん、そうだね・・・・・・ 夏樹は・・・・・・ 男の子をやめて・・・・・・ 女の子になるんだから・・・・・・ 今までの夏樹は全部嘘っぱちなんだよ・・・・・・ ホントの君は、わたしのペット・・・・・・」

 ノエルは乳首からようやく手を離し、見下しながら夏樹の頭を撫でる。 精神が疲弊した夏樹はそこにあるはずのない温かみさえ感じてしまって、

「違う、そういう意味じゃ・・・・・・ なくてぇ・・・・・・」

「よしよし、いいこいいこ」

 ノエルが馬鹿にしたように頭を撫でる。
 このように泣いているときに頭を撫でられるなんて、本当に小学生低学年以来だった。 ただし、年下に慰められたのははじめてだった。

「俺は、俺の友達を穢したお前を許さない」

「・・・・・・ ふふっ・・・・・・ こんなときまで・・・・・・ 友達思いなんだね・・・・・・ 君は・・・・・・ やっぱり・・・・・・ おもしろい・・・・・・」

 その後、ノエルは黙ったまま頷くと、詩音は一礼して洗面器をもってきた。 夏樹の不安を煽るように水音を奏でながら、作っているのは透明なローション。 一方でノエルは、夏樹のスクール水着をズラしてお尻の穴を露出させた。

「―――― !?」

 決して人目につくことはない不浄の穴が突然外気にさらされて、括約筋は窄まり、神経が集中する。 嫌がる夏樹を力づくで前のめりにして、突き出されたお尻をまじまじとノエルが見つめ続けた。 ふぅうと固く閉ざされたその菊門に息を流し込まれると、腸道の入り口から染み入るような感覚が突き抜け、顎をかち割った。

「・・・・・・ ふふふ・・・・・・ 夏樹のお尻の穴・・・・・・ ほぐしてあげね」

 恐ろしい一言を聞くと同時に、ノエルの手が夏樹のお尻を這う。
 生温かいローションに濡れた指が、お尻の谷間を割って尻穴に詰め込まれる。

「う、うわあ、あ、ああああ、き、きたねぇ、なんてとこさわって――!」

 お尻の穴にいきなり栓をされ、排泄器官としての不完全さに恐怖がおられる。 出したいものが出せずに詰まる圧迫感と、逆流して腸壁を引っかく不快感。 なによりも冷たい指の感触に全身が総毛立った。

「すこーしずつ・・・・・・ すこーしずつ・・・・・・ いれるの」

「ぎぃぃいいい――――っ!」

 仰け反る夏樹の呼吸に合わせて沈み込み、穴の中に芯を通す。 最奥にたどり着くと腸壁を押し出し、嬌声を上げる夏樹を愉しみつつノエルは、菊門を押し広げるように指をかき回した。

「・・・・・・ ああぁ・・・・・・ お尻の穴が・・・・・・ 指に食らいついてくる・・・・・・ えっちな穴・・・・・・ 食いしん坊さんだね・・・・・・」

「あぎぃ、あ、がぁ!?」

 珍しく楽しげな声をだし、ノエルはさらに深々とナカを抉る。ぐりぐりと、ひねりをくわえて腸道を開き、未曾有の痛みと緊張を夏樹に与える。

「や、やめ、やめろぉ、やめてく、れぇ・・・・・・」

 人間性を否定する尻穴開発に心が脆く崩れかかる。 拳に爪を食い込ませて屈辱を耐え抜くが、ノエルに腸壁をしごかれると、その忍耐力が尻尾を巻いて逃げていく。

「どうして・・・・・・ やめなといけないの? ふふ・・・・・・ 夏樹のココは・・・・・・ もっと太いのが、いいってさ・・・・・・」

「――――っ!?」

 最初は人差し指で、その後は中指、二本となって、それも根元まで埋める。 夏樹のナカで長い指を広げ、鉤状に曲げ、身を引き剥がされるような痛みと爽快感が脳をゆさぶった。そして、奥の粘膜を掻きだすような動きで括約筋を揉みほぐしていく。

「あ、ああっ、あ、ああああっ!」

 ジュッポジュッポと、腸内の空気とローションが混ざり合った卑猥な音楽が奏でられる。
 大切な排泄器官が、フタナリ少女を悦ばせるための淫猥な楽器にされてしまった。

「いいよ・・・・・・ 夏樹・・・・・・ もっと・・・・・・ 恥ずかしいところ・・・・・・ 全部、さらけだして・・・・・・ 」

 高くつきだした臀部は微痙攣し、赤くふやけた腸内が柔軟に指の動きに合わせて形を変え始めた頃、生理的な嫌悪感の中に快楽が織り込まれていく。悔しさと情けなさに犬歯をむき出しにするが、ノエルは胸の内を見透かしたような目で夏樹を見ている。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

「吐息・・・・・・ 変わってきたね・・・・・・ 気持ち、いいんでしょ・・・・・・?」

 赤面したまま顔を左右に振る夏樹だったが、ノエルの言っていることは本当だった。 気持ちがいいどころかもどかしくなって、奥に感じる敏感なスポットにもっとゴリゴリ来てほしいとさえ思う。 けれども喉まで出かかった駄犬の言葉は、唇を噛みしめながら堪えて耐えた。

「・・・・・・ ごまかしても、無理・・・・・・ わかる・・・・・・ お尻の穴、ヒクヒクしているから・・・・・・ 夏樹は、やっぱり・・・・・・ 素質、ある・・・・・・ メスイヌの、素質・・・・・・」

 ノエルは犬の躾のように丹念に夏樹をいじり、そして人間性の皮をはいでいく。 右手の二本の指は大口を開けた菊門から一番敏感なスポットを探し当て、 逆の手では再び乳首を摘まんだり捏ねたりして、爽やかな痛覚を絞り出す。 豪胆かつ繊細な動きで的確にオンナの急所を突きつづけ、童貞の夏樹はぼろ雑巾のように朽ち果てながら下劣な舞を踊った。

「いやだ、お尻でイクなんて、ぐぅううう、こんなんでイキたくないぃ!」

 ズブ、ズブブ、ズブブブブ―― ノエルの指が入るときの圧入感と、抜ける時の排泄感に気が触れそうになるほど、夏樹は今女として羞恥心にも被虐心にも極上の蕾をつけていた。

「ふふふ・・・・・・ もちろん、こんなんじゃ・・・・・・ イカせて、あげない・・・・・・ イクときはね・・・・・・ 君は、わたしに・・・・・・ 泣いて、おねだりするとき・・・・・・」

 腸壁をめくりあげるような勢いで、再び絶頂の扉が開かれる寸前、ズボッっと大きな音を立ててノエルの指が引き抜かれる。

「ふわわあぁああ、あ、ああああ!?」

 ローションと腸液の混じった卑猥な液体が床に零れ落ち、水たまりをつくって、切なく悶えるメスの貌を映しだす。肛門愛撫の虜にされ、限界まで発情した身体は、指という栓を失って物寂しく震えていた。

「・・・・・・ ふふ」

 ノエルの嗜虐的な笑みの下、夏樹の内腿からは愛液のように先走り汁がふきこぼれ、絶頂を前にイケなかった事実に虚無感を広げていた。

「してもらってばかりじゃ・・・・・・ ダメ・・・・・・ 夏樹は、奴隷・・・・・・ わたしは、主人」

 軽くお尻を叩かれて、痛みはないのに驚きで「うひぁん」と恐ろしいほど可愛らしい声を漏らしへたりこむ夏樹。 眼前には、完膚なきまでに敗れたホンモノの肉棒が迫っていた。

「・・・・・・ はぁはぁ、こ、こっち、向けるな、汚らしい」

 一度は手で突き返すも、ノエルの視線は巨根に引き込まれ夏樹は顔を紅潮させる。 懸命にその誘惑に抗い無視しようとしている姿は、どこか健気で可愛らしかった。

「そろそろ、欲しくなってきた・・・・・・?」

 夏樹は落ち着きがなく、スクール水着が先ほどより肌を縛り付けているように思えてならない。 男のプライドをへし折る調教のせいで頭の芯が痺れつづけ、肉欲の悦びが徐々に夏樹をおかしくしている。
 肛門の風通しが良すぎることも、勃起した乳首と裏地と擦れて痛みとなり、なのにペニスは縮こまったまま震えて恥骨の裏が甘く響きわたっていた。

「はぅっ、んはぁ・・・・・・ ふぅ、ふぅ、ふぅ」

 夏樹は弱々しく首を振るも、堪えられなくなるのも時間の問題だった。 時折生唾を飲んで、ますますスクール水着女子っぽくなっていく。

「・・・・・・ 奴隷は・・・・・・ 奉仕するの・・・・・・ ご主人様に・・・・・・夏樹、わかる?」

 いそいそと夏樹の隣に近寄り、詩音は耳元で囁く。

「ほら、よく見て。 すごく立派なオチンチンでしょう。 ぼくたちのと全然違う。太くて、固くて、熱い。 臭いも・・・・・・ すんすん。 かいでみてよ。オスの香り、きっと、夏樹も、病み付きになる」

 鎖のように絡み合う太い血管を脈打たせながら、極太のフタナリペニスが夏樹の鼻梁を押し付けてくる。 懐かしい、けれども自分のモノとはまるで異なる強烈な刺激臭に、頭の冷静な部分が刈り取られる。 ぷっくり噴き出した先走り汁が夏樹の頬や鼻梁を塗りたくり、据えた一滴が鼻の下を通って唇へ滑り込むと、彼は無意識のうちに男汁を舐めとり静かに狂乱していた。

(これがオス? 凄い、詩音の言う通り、本当に逞しくて・・・・・・なら、俺のはいったい・・・・・・ ああ、いや、馬鹿なことを考えちゃダメだ)

 誇らしげに首元の首輪に手をかけた詩音と同じく、夏樹はフタナリペニスを見上げる。 それは二匹の雌に見つめられるとより猛々しく睾丸が膨れ、傲岸不遜にいきり立つ剛直は我が物顔で夏樹の頬を叩いた。

「ほら、呼んでる。 夏樹、舌出して。 大丈夫、夏樹ならできるよ。力抜いて・・・・・・ 舐めてさしあげて」

 頭が邪熱に犯されている。
 親友に頭を撫でられるなんてはじめてのことで、なぜだろう、とても温かい気持ちで夏樹は惚けているうちにそれを迎え入れてしまった。

「・・・・・・ れろ」

 警戒心の強い野良猫がおそるおそる人間のエサに手を出すように、夏樹の舌が肉棒の表面をなぞる。 汗の酸っぱさと苦みに嗚咽を拾い、しかし同時におへその下あたりがキュンっと疼いてしまう。

「・・・・・・ 夏樹・・・・・・ 口を開けなさい」

 閉ざされた唇とキスするみたいにノエルの巨根があてがわれ、プニプニとその感触を楽しんでいる。

「あ、あ、あ・・・・・・」

 怯えた顔して、夏樹は呆然とホンモノのペニスに睨まれている。

「・・・・・・ 怯えているの、夏樹・・・・・・ 恐いんだね・・・・・・ でも、もう少し・・・・・・ もう少しだから」

 優越感に浸りながら目を細め、ノエルはその手でフタナリペニスを撫でまわす。 ピタリと制止させたまま夏樹の後頭部を両手で掴み、刀を鞘に納めるようにねじ込んでいく。

(こいつ、俺の口に、は、入って―――――っ!?)

 夏樹は驚愕する。
 自分のペニスよりもはるかに大きいペニスが、しかも美少女のものが、再び力で押し負けようとしていた。 取り返しのつかない敗北と引き換えに、甘い淫夢を見てしまったことを心から恥じた。

「んむっ、んんんむ、ぐぐぐ」

 わずかに開けた唇から男根が侵入し、舌を押しのけ喉を擦りあげる。 苦しみのあまり瞬きもできず、歯を立てることなんて考えもせず、自分がペニスキャップとなる光景をまざまざと見せつけられながらこれを記憶し、心に凌辱の痕を刻み込む。

「お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉ――――っ!」

 小さな夏樹の顔が膨れ上がり、信じられないほど長く太いペニスがすっぽりと収まった。 夏樹は今にも気絶しそうなほど目を剥き、痛みと屈辱で壮絶な表情を浮かべる。 強烈な苦みと悪臭が鼻腔を突き抜け、喉の粘膜をこすり上げる生々しい音が骨身に響いた。

(あ、ぐ、ご、ごんなの、きつ、すぎぃるぅ)

 顎が外れそうなほど大きく開かされ、イヤでも唇がペニスの表面に吸い付いついてしまう。 ノエルが腰を動かすと、牡汁を啜り、唇が捲れあがるほどのおしゃぶりを交わした。

「夏樹、夏樹、なつきぃ・・・・・・」

 正義感が強く、兄弟のように育った親友がスクール水着を着て、か弱い女の子のように泣きながらペニスをくわえ込んでいる―― それを見ている詩音の表情は確かに興奮していて、自慰行為にまで及んでいた。

「うん・・・・・・ うん・・・・・・」

「んぎゅう・・・・・・ かはっ・・・・・・おぶうっ! むぷ・・・・・・ ふぐっ・・・・・・ あ・・・・・・ ぐふう!」

 苦し気なうめき声を繰り返しては、鼻先を何度もノエルの腰にぶつけられる。 圧倒的なオスの質量に夏樹はなすすべもなく、息吸うたびに喉が締まってペニスはその刺激に悦ぶ。 喉奥を突きこまれ嘔吐感でえづいてしまいそうになるも、その震えさえ快感としてとられてしまう。 口が便器のような扱いを受けて、満足に呼吸さえさせてもらえず、次第に反抗する気力もなくなっていく。

「くきゅ・・・・・・ はぶっ・・・・・・ ふごふぉ・・・・・・ へ・・・・・・ へ・・・・・・ じゅるうぅ・・・・・・あへぁ!」

 酸素が欠乏し始め、巨根がぴったりと隙間なく喉を埋めた時、その一体感に夏樹の思考が霞んだ。 息苦しさも忘れて肉竿の脈打つ鼓動と燃えるような熱さに、心惹かれる。 自分のモノにはない逞しさとメスを悦ばせる技術に、羨望と劣情が絡み付いて心臓を高鳴らせていた。
 相手を気持ちよくさせるはずの奉仕が、いつの間にか自分も悪くない感じがして、信じたくはないのに身体が心地よさそうにビクつく。 侵入するペニスを抑えつけるための舌使いと喉の応答が、微妙に媚び諂うような動きとなっていた。

(・・・・・・んんっ・・・・・・ あ、これぇ・・・・・・ 気持ち・・・・・・ いい、のか? )

 口内の様子が変わったことを喜んで、ノエルは目元をたわめながら肉棒を引き抜く。 解放された夏樹の口から大量の唾液がこぼれ、顎も、舌も、喉も、痛みで感覚が麻痺してしまっていた。

「もっかい、おあずけ・・・・・・ ふふ、夏樹、予想以上にうまくて・・・・・・ すぐイキそうだった・・・・・・ 危ない危ない・・・・・・」

 ノエルは珍しく茶目っ気を出し、額に浮かんだ汗を拭きとった。

「・・・・・・ えっちだね、夏樹は・・・・・・ 口でするの・・・・・・ 興奮した? ・・・・・・ 喉、力づくで突かれるの・・・・・・ 好き、なんだ? ・・・・・・ ほら・・・・・・ 涎が塗れ・・・・・・」

「〜〜〜〜っ!?」

 抑揚のない声で、淡々といやらしい言葉を送るノエルに夏樹は身を縮める。 口数も少なく、何を考えているのかわからないが、その全てを見透かしたような視線にゾゾゾと鳥肌が立つ。
 身体の火照りは未だに納まらず、むしろジンジンと頭を麻痺させ、夏樹は自分自身が恐ろしくてたまらない。
 ノエルが手を伸ばすだけでも肩は仰天して跳ねるのに、そのまま顔を優しくさすられると恐怖よりも安心感を覚えるまでに至ってしまった。  彼女の目に吸い込まれそうになり、もしこのまま、彼女のモノになれば、もっと可愛がってもらえるのだろうかと、希望的観測を頭に描くと、

「そろそろ、かな? おいで、詩音・・・・・・」

「はい・・・・・・」

 すっと身を潜めていた詩音が、ノエルのもとにかしづく。
 夏樹はまた自分に何かされるのではないかと警戒していたが、彼女は桃の皮をむくようにまずは詩音のスカートはぎ取った。

「し、詩音・・・・・・?」

「はぁぁ、はぁぁ、な、夏樹・・・・・・ ぼ、ぼく、ぼくぅ・・・・・・」

 そこには目とペニスを充血させ、今にも溶け出してしまいそうな親友の姿があった。 認めたくはないが、ともに男として育ったはずの親友は今、あられもない夏樹の姿を視て欲情し、興奮のあまりに肩を震わせている。
 切ない表情に涙をためて―― 負けてはいけないと、いつかのように発破をかけてあげたい夏樹ではあったが、メスとして見られることを意識して夏樹自身が異様な興奮状態。 心臓が二つに分かれたみたいに、下腹部の奥から熱い律動をつくっていた。

「ま、まさか、んっぐ、まさか・・・・・・ 詩音、お前が――」

 最悪の光景が頭をよぎったとき、夏樹はベッドに仰向けに押し倒されて、お尻を高く、詩音に脚を開かされた。

「うん・・・・・・ そう・・・・・・ これから夏樹はね・・・・・・ 詩音に犯されるんだよ」

「―――っ!?」 

 熱く盛のついた小さな身体に冷たい氷の芯を入れられた錯覚を覚える。
 筆舌に尽くしがたい感情が渦巻いて、夏樹を孤独の世界に突き落とした。







               4.

「あぁ、夏樹・・・・・・ なんて、いやらしくて、可愛いの・・・・・・」

 親友が喉を鳴らして嚥下したのを見てしまい、互いに可笑しくなってしまっていることを自覚する。 しかし、詩音の方が欲望に対してはるかに従順で、夏樹の脚をM字に開かせたまま身体を強引に摺り寄せてきた。

「それにココ、ヒクつかせて・・・・・・ 切ないんだね?」

 欲情の対象として夏樹を下に見ながら、スクール水着のラインを指でたどり、胸のあたりで『の』の字を描く。 『なつき』という名前を愛おしそうに触れつつ、浮き上がってくる乳首を爪弾き撫でた。

「遠慮・・・・・・ しなくていい・・・・・・ あなたの・・・・・・ 好きにしていいよ・・・・・・ 詩音・・・・・・」

「ふわぁぁぁぁ、あ、ありがとうございます、ご主人様」

 ノエルの許しを得て、極上のため息をもらす詩音。 従順な種付け犬となって、赤々とした逸物を夏樹に向ける。 それはノエルの物に比べれば太さも固さも劣るものの、平均男子サイズで夏樹を鳴かせるには十分すぎた。

「約束・・・・・・ したからね・・・・・・ 夏樹の・・・・・・ はじめては・・・・・・ 詩音にあげるって」

「ど、どういう、こと・・・・・・だよ、詩音?」

 ノエルの言葉を聞き、恐る恐る親友の顔を見る。 真実を知りたい―― いや知りたくない。 相反する想いを抱きつつ、祈るような気持ちで詩音に語りかけた。

「ごめん、ごめん、夏樹・・・・・・ ボクなんだ、・・・・・・ 夏樹を奴隷にしてくださいって、・・・・・・ 頼んだのはボクなんだ」

 ぬちゃり、と粘着質ある音を立てながら、詩音のモノと夏樹のモノがスクール水着越しに触れあった。 二つは競い合うように脈動し、愛憎の蜜があふれて絡み付く。 詩音はゆるやかに腰を前後させ、裏筋同士がもつれて広がる邪な熱に、夏樹はその頭を放蕩させていった。

(詩音が、俺を? そんな、それじゃあ、俺はいったいなんのために・・・・・・)

 心の底から信用していた仲間に裏切られたことは、夏樹にとって身を切られることよりも辛いことのはずなのに、ペニスから目が離せない。 夏樹は今、男に挿入られることを想像して、興奮している。
 スクール水着の締め付けがより一層強くなった気がして、ウズウズと乳首が固く尖った実を付けて、胸周りのしこりが取れないまま物欲しそうに身をくねらせた。

「うんぅ、う、んんっ、うぅ」

 擦れ合う肉棒は悦動を伝えながらも、水着の裏地を気持ち良く蠢いている。 喉もお尻の穴も、スクール水着も、全部気持ちよくなるものだと教えこまされてしまったのだった。

「本当に、夏樹には悪いと思っている・・・・・・ でも、君なしじゃボクは耐えられないんだ」

 股間を合わせたままで、詩音は頭を深々と下げた。

「し、詩音、詩音・・・・・・ お前はぁ、ああ、今・・・・・・ 普通じゃない・・・・・・」

「当たり前じゃないか・・・・・・ だって、こんなにもエッチで可愛い夏樹の姿を見て、普通でいられるわけない。 それに普通なんて、ボクと夏樹の間じゃ、関係のないことだよね?」

 夏樹も詩音もとても儚く弱い人間になってしまった。 かつては互いに汚らしい言葉で口喧嘩もしたが、今はお互いを思いやる言葉だけで泣きそうになり、触れ合っているだけなのに、口や鼻から悩ましい吐息を相手にふきつける。

「やめろぉ、詩音、やめて、くれぇ・・・・・・ こんなの、おれ、はぁ・・・・・・ああぁつ」

 熱くてきつくてもどかしい、弱々しく囀るばかりの夏樹は、両の眉を忙しく上下させている。 親友に右手を奪われると開けた脇に涼しげな風を感じ、右手を抑えられると捕縛された悦びを感じてしまう。 詩音の涙が肌の上に零れ落ちてきて、優しかった彼をここまで追い詰めているのはノエルではなく自分だったことがなにより哀しい。

「わかってくよ、ボクがどんな想いでご主人様にお願いしたのか・・・・・・ お願いします、ご主人様、お願いします、夏樹をわたしのようにいやらしい奴隷にしてください。 どうか、夏樹をわたしの可愛い妹としてお世話させてくださいって」

 セミのようにしなだれかかる詩音を、夏樹は強く拒絶できないでいた。 互いの熱を交換し合い、血潮の流れさえも覚えてしまい、満足にならない呼吸。 切なそうな表情で、見ているだけで胸が締め付けられた。

「はぁ、はぁ、はぁ、うはぁあああううぅ、夏樹だってさ、も、もう分っているんだろ? 自分が、まがい物のオスだって・・・・・・ そう、本当は、ボクと同じか弱いメスだったんだって」

 堪え切れずに詩音は腰を振って、ヘビが食らいつくようにして夏樹のペニスがいじめられていた。
 ―― また負けてしまう。
 無残にフタナリ巨根ペニスに押しつぶされたことを思い出し、夏樹のモノは魔法にかかったように急速に萎えていく。 だが、不可思議なことに快感だけはそれまで以上に滲みだし、延々と腰と頭に響いていった。

「あ、あ、あああああ・・・・・・」

 計り知れないショックを受けたまま、夏樹は呆然とペニスだったものを見つめる。 固さのなくなったスクール水着の股間を、グリグリと詩音のモノがねじり込まれた。

「ほら、見てよ、ほらほら。 夏樹のモノ、もうチンポじゃなくてペニクリになっているじゃないか。 ボクのにだって負けちゃう・・・・・・ 夏樹の方が、ボクなんかより全然可愛い女の子で、スクール水着も、きっときっとランドセルだって似合っちゃう」

「〜〜〜〜っ!?」

 親友の言葉に傷ついて、夏樹はとうとう堪えていた涙をこぼした。 勇ましさも猛々しさも流れていく。
 勃起していないのに股間に触れられるとおへそのあたりが甘く疼いてたまらない。 他人のペニスで潰されているのに、女の子だって言われているのに、自分でするよりもずっと悦んでいる。

「どうしてなんだ、詩音。 どうして、どうして、こんな俺のために、こんな馬鹿なこと――」

「決まっているじゃないか ――― 好きだからだよ」

 そして話がまとまらないうちに、詩音は親友としての、最後の一線を越えた。

「ぐ、ぎゃぁあああぁあぁあああああああああ―――――っ!?」

 先走り汁を潤滑油にして、夏樹の菊門が再び大きく真っ赤に開花する。 目も眩むほどの赤と白の閃光と飛び交い、赤焼けた鉄を流し込まれたような衝撃に、少年は女として初めて哭いた。

「この熱い気持ちがただの友情なのか、それとも愛しているってことなのか、よくわからない。 でも、そんなことはもうどうだっていいんだ」

 小さなメス穴がオスの逞しさの前にメリメリと痛々しい音を立て、括約筋が切れそうになるほど伸び、腸道を拡張させていく。
 舞台女優のような悦に入りながら、親友は腰骨をぶつける勢いで腰を突き入れる。 瞬く間に最奥へ到達した剛芯は、誰にも触れられることのなかった敏感スポットに焼きを入れた。

「んぎゃぁああああっ、あああ、あ゛あ゛あ゛あ゛――――っ!」

 力で押さえつけられた夏樹は、肛悦の花を散らされ泣き叫ぶ。 ペニスはいやらしい穴を完全に塞いだ。 尻穴に全身が吸い込まれるような痛痒と快感が起き、18年の知識と教養を一変させるに十分すぎる衝撃となる。
 解き放たれた獣欲はもう歯止めがきかず、詩音は容赦なく腰を前後させた。

「だってボクは、ご主人様のメス奴隷なんだから。 身も心もご主人様に捧げたから。 だから、この想いもね、ご主人様は受け取ってくれたんだよ」

 詩音はノエルを見て微笑み、その下で犯され、はしたない喘ぎ声を連発する夏樹。
 男らしい腰使いに翻弄され、変えられることに悦びを知った身体は容易く翻弄され、開かされた脚を虚しく宙にバタつかせていた。

「堕ちてよ、夏樹。 ねぇ、堕ちて。 ボクは、キミとならどこまだって堕ちていける気がするんだよ」

 その瞳は生まれたての仔馬のように純粋で、その唇は狼のように滴り濡れている。 夏樹を息苦しいほど抱きしめ、ピストン輸送を早めて滾々と責め続ける。

(お、おれも、ぐはぁ、き、きもちは、いっしょ、だよ? だけど、おまえ、それはぁ―― はぐぅぅぅぅ)

 挿入れられるときは亀頭に腸壁をしごき抜かれ、出るときはカリ首に粘膜を無茶苦茶に引っかき回される。 ただのメス穴と化したそこは媚びるようにオスのモノを締め付け、生き物のように啜りあげる。

「ふがあ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」

 互いの乳首がぶつかり、せめぎ合い、つぶし合い、プツプツとした突起を苦しみ愉しみながらさらに動物的なまぐわいはその激しさを増していく。

「ふぁぁぁ・・・・・・、そ、そんな、激し――、―― ひゃうぅ、激しすぎぃるぅ!」

 指では届かない深い所にも鈍い痛みと強烈な圧迫感が暴れ回り、腰砕けになるほど粘膜をこそぎ落とし、夏樹は四肢を細かく痙攣していった。

「ああ、夏樹。 感じているんだね。 ボクのオチンチンで、感じてくれているんだ。すごいよ、すごい。 すごく、エッチ、だ。ボクも、気持ちいよ、夏樹のナカ、本当の女の子のみたいで、きつくって・・・・・・」

 つがいのような一体感を通じて、禁断の果実に手をだしたという背徳的な感情に血潮が源泉のように熱い。 激痛の波の後には必ず甘い余韻がひっかかり、痛みすらもやがて気を失わせるほどの陶酔感に変わっていった。

「セックス、しているんだよ、ボクたち? ボクと夏樹が、セックスしている。 愛し合っているんだよ?」

「せ、せっくすぅ? ひんっ。 ――― んぬ・・・・・・。 これが、せ、せっくすぅぅぅぅ・・・・・・」

 夏樹がセックスという言葉を知ったのは小学3年の時。 はじめてアダルトビデオを見たのは6年生の時。 ワルガキらしくおっぱいの大きさやスカートの色などにも興奮したが、いつか自分にとっての大切な人と一夜を共にすることを期待していたセックスという夢。
 時には理想の女性像について話、時には草むらで犬や猫の交尾を苦笑しながら見ていた二人が今、こうして女の子の目の前でケダモノのようにまぐわっている。 なのに身体は悦びに打ちひしがれ、もっともっととあさましく貪っていた。

(ああああああああああ、硬くてェ、熱くてェ、ナカにぃ、俺のナカにぃ、詩音がぁ、しおんがぁいる゛ぅぅううううう―――)

 知性を失った顔をして、絶え間なく続けられる性的刺激の連鎖に夏樹はよがり声を上げる。 メスとして従順に、親友のオスをしっかりお尻の穴で銜え込みながら、乱暴にされると満腹感にも似た優しい気持ちに包まれた。

「ねえ、夏樹。 お願いだよ。 ご主人様の奴隷になってよ。 可愛いメスに。 ボクの妹にさ、馬れくぁって」

 夏樹は目を腫らしながら素早く首を横に振る。
 しかし、被虐心に苛まれた彼はペニスが抜けそうになると悲しくなり、自ら進んで腰を動かし、脚で詩音の腰を掴んでは快楽を追い求めていた。

「二人一緒に、ご主人様に仕えよう、ね? そしたら今度こそ、ボクたちはずっと一緒にいられるんだよ? ご主人様はお優しい方だから、きっと夏樹のことも愛してくれるよ」

 耳元で優しく囁かれると、新たな悦びの蜜に穴が痙攣する。 繰り返される性的な刺激に耐えながらも、確実に気持ちが傾いている。

「ぬぁぁぁぁぁぁ・・・・・・っ、いっしょって、いっしょって、そんぁのぉ」

 うっすらと目を開き、わずかに正気の灯った瞳で媚びるような眼差しを送る。 もっと優しくしてくれるのなら、もっと可愛がってくれるなら、などと健気な願望を浮かべたり沈めたりして、とても思考はまともでいられなかった。

「ダメだよ、夏樹。 ご主人様は自分に媚びてくる女の子が好きだから、夏樹も愛嬌をふりまかないと、ほら、笑って、にぱーっていつかみたいに可愛らしい笑みを見せてよ」

「あ―――っ、ああぅぅぅぅうううう」

 気を緩めれば夏樹は簡単に口を割ってしまいそうになる。 自分の弱く儚く情けない部分を圧倒的な力で征服してくれるオスに、束縛されたい気持ちが渦巻く。 突き上げられる衝動にいくつもの淫夢と邪悦を期待し、夏樹の顔がヘナヘナと覇気を失った。 親友の腰使いに完敗し、彼と彼の主人の女にされていく。
 陶酔した悲鳴を上げ、雄汁が溢れた結合部分に意識と神経を集中し、肌が溶けて癒着するほど愛し合う。
 このまま二人で劣情に赴くままどこまでどこまでも堕ちていきたい、きっとそれは存外悪くない。 それほどまでに調教は少年にとって熾烈で、淫欲に傾倒しつつあった。

 ―― そんな時にまた、二人を見守っていた人影が顔を露わにする。

「本当に・・・・・・ 君たちは、仲がいい・・・・・・」

 どこか羨むような声で、温かい眼差しで、館の主人は詩音の肩に手をかけた

「はぁ、はぁ・・・・・・ ご、ご主人様? まだ、いいでしょう? まだ、まだ!」

「・・・・・・っ」

 夏樹はもう抵抗することを諦めてしまっていて、なにも怖くはなかったのだ。 しかし、ノエルが詩音の身を起こしたことで、尻穴からペニスが抜けることによって、一瞬とはいえ自分が見捨てられるような錯覚を覚えてしまった。
 気が付けば、その手で詩音の手を引いていて・・・・・・

「・・・・・・ 心配しなくてもいいよ・・・・・・ 約束は、守る・・・・・・ でも二人を見ていたら・・・・・・ ふふっ、ちょっと意地悪、したくなってきた・・・・・・ ごめんね・・・・・・」

 クールな表情のままノエルは健気な愛奴の身体をつーっと首筋から胸のくぼみにまで指を這わせる。 くすぐったそうにゾクゾク震える詩音の胸を、ノエルは鷲掴みにして乳首を隆起させた。

「きゃっ、ご主人様!?」

 驚く詩音の乳首はピンっと鋭利にとがっていて、夏樹に負けず劣らずのサーモンピンク。 ノエルは悪戯にそこ爪弾き、その固さと大きさが十分であることを確認すると――

「じっとしていて、ケガ、しちゃうから」

「冷た、ひっ!」

 ―― どこからか、結わえるための“テグス”を取り出した。

「な、なにを・・・・・・?」

 詩音の不安を感じ取った夏樹も弱々しく声を上げる。 二度、三度、乳首を指で弾かれた詩音の顔は被虐心の強いメスらしい表情を浮かべ、そして悲鳴を奏でながら、従順に胸を張って自分を主人に預けた。
 ほどなくして詩音の可愛らしい右の乳首に、一本のテグスが結わえられ――

「は、はうぅぅぅ」

 ―― さらに左の乳首にも別のテグスが結わえられる

「ううううっ。 ひ、ひどいです、ご主人様」

 涙目で拗ねた様な声とは裏腹に、根元からビニル糸で結ばれてしまった乳首は残酷極まりない。 今にもくびり落ちそうな姿で赤々と隆起し、夏樹はその下で何度も目を瞬かせていた。

「・・・・・・っ」

「あんっ、あんっ、ふぁっ、きゃんっ」

 ノエルの糸引き人形のようになった詩音は、激痛にも甘い悲鳴をあげるばかり。
 最初は右の乳首に結ばれたテグスをクイクイっと引かれ、それが終わると今度は左の乳首に結ばれたテグスを引かれる。 左右どちらの感度もよく、途中で外れてしまわないことを確認すると、

「ま、ま、まさか、お、おまえ、まさか・・・・・・」

 夏樹はこの後の展開を予想し逃げようとしたが、下半身がまだ詩音とつながっていることを忘れていた。 暴れることでまた痛みと快感があふれだし、結果的にテグスを引っ張られている詩音の方にも被害がこうむった。

「な、なつき、やめっ、い、いだぃ!」

「だ、だけど、詩音! このままじゃ!」

「ぎゃあ!」

「うがぁ!?」

 ノエルは左右のテグスを張ったまま、詩音の身体を手繰り寄せる。 鋭すぎる痛みに顔が歪む男の娘。 乳首が切れてしまいそうになるほど締め付けられ、その行きつく先は――

「うわ、あ、あああ!?」

 ―― 肌蹴た乳首に繋がる糸。
 スクール水着を腰まで下ろされて、右の乳首も、左の乳首も、夏樹と詩音はテグスで結ばれる。
 その距離はわずか15cm。
 悪魔が踊る、細く短い銀の糸。
 少しでも詩音が身を起こそうとすれば互いの乳首をくびることとなり、夏樹と詩音はお互い離れてしまわないよう深く密着しあう。 それでもテグスの結び目は固く、まるで表皮を剥ぎ取られたように痛みと神経が集中している。

「これで本当に・・・・・・ 二人は・・・・・・ 一つ、・・・・・・ ふふ、じゃあ・・・・・・ 私も参加する・・・・・・」

 夏樹は心底震えあがった。
 心の準備も、拒絶の声を上げる暇もなく、二人分の体重が骨盤を開かせる勢いで夏樹にのしかかる。

「はぁぁぁああああぁぁぁんっ、そんなご無体なっ!? あ、ああ、でも、これ、い、いい、いいいいいっ!」

(あががががががががががが―――っ!?)

 狂喜する詩音のペニスが夏樹を犯し、そして詩音のお尻をノエルが犯している。あれほど盛んだった詩音でさえ今はメスの一人として、あるいはノエルのペニスカバーとして働く。
 沈みかけた小舟に慌てて皆が乗り込むような格好で、腰から足首まで過密に縺れ合い、切ない鼓動も、湿った吐息も、感情や感覚さえも、どこから夏樹のモノでどこまでが詩音のモノなのかわからない。

「夏樹、夏樹、わかるかい? ボクたち、ぜぇ、ぜぇ、ボクたち今、ひ、ひとつ、になっている・・・・・・ ご主人様のモノで、串刺しにされちゃっているよっ!」

 大の男が二人がかりでも太刀打ちできず、少女の暴君ペニスがひとまとめに蹂躙していた。 逞しいのは大きさ太さだけではない、狩猟犬のように洗練された腰使いに、夏樹も詩音も色欲に塗れた涙声を上げた。

「きひぃいぁああああっ!? お、お尻が、お尻がこわ、おれ、壊れちゃう――」

「くぅぅぅぅぅ、あ、すごすぎぃるぅううう――」

 痛みや快感よりもなお激しい感覚。
 詩音が突き上げ、ずっぽりと埋め尽くされた夏樹の尻壺を、そこからもう一度さらに一発ノエルがついてくる―― ノエルのペニスの勢いが詩音のペニスを通して夏樹を穿ち、内臓を吐き出すほどの圧迫感に口と鼻から炎を噴出した。

「ふはぁぁっ、ふはぁぁっっ、あう、ふはぁぁぁっぁ!?」

 二人がぎゅうぎゅう詰めで夏樹という肉壺を犯し、指一本だって満足に動かせない。
 リズミカルに動く詩音の腰使いと、それを後ろから吹き飛ばす勢いで押しつぶすノエルの暴君。 夏樹はどのタイミングで追い打ちがくるのか全く分からず、常に新しい悦びに慄くばかり。

「んんっ、んっ? ふ、はっ、ふはあぁ―― いづううううっ!?」

 しかしいくら警戒していても、ノエルは一瞬の油断も見逃さずに一突きにしてしまうので――

(ひいいいいいいいいい、ち、ちくび、ちくびがぁ、とれちゃう、とれちゃうよぉおおおお)

 ―― テグスがピンっと引っ張られ、乳首を締め付け激感が巻き起こる。 同じく詩音の方でもけたたましい悲鳴が上がり、二人のメスが共に被虐の音楽を奏でていた。

「ひっぐぅ、これ、これ、はずひてぇ、これ、これぇ、うううう、はずひてぇええええ! 敏感すぎて、ひっ、おねがい、おねがぃいいいいい!」

「なつきぃ、なつきぃ、なつき――――っ、―――」

 一思いにフタナリ少女に貫かれた夏樹と詩音。 友情の深い二人が互いのテグスで繋がれ乳首を引っ張り合い、震える糸に汗が伝う。 肉欲に翻弄される下半身とは対照的に、ギリギリと裂ける痛みに泣き叫びながら身をよじり、真っ赤に充血した乳首が惨たらしさを物語っている。

「・・・・・・ はぁ、はぁ・・・・・・ 二人とも・・・・・・ いいよ・・・・・・ すごくいい・・・・・・ 特に・・・・・・ くっ・・・・・・ 詩音・・・・・・ いつもより締め付けが・・・・・・ あっ・・・・・・ 強い」

「あ、ああ、――うれしっ、あ、あ、ああ、ご主人っ、さまぁ! ボクも、あ、ああああっ、夏樹のなか、なか、しま―― っ!」

 二人をハメている肉棍棒はただ犯すだけではなく、感じさせるための繊細なテクニックも有している。 知らず知らずのうち、無垢な少年たちもその麻薬のような悦動を受け、赤く爛れた腸内をあさましいメス穴へと変えてしまっていた。 快感神経が網羅され、肉棒を愛おしそうに熱く抱擁し、カリ首の爪弾きにさえ痙攣する腸道はすでに完熟期を迎えしている。
 腰を突き上げる大きな震えと、武者震いにも似た小刻みな震えを重ねながら、ノエルはまた一突きして牝姉妹を鳴かせる。

「夏樹も・・・・・・ 詩音も・・・・・・ ぜんぶ、わたしのもの・・・・・・ ふふっ・・・・・・ さぁ、二人とも・・・・・・もっと・・・・・・ 可愛い声で、鳴いて・・・・・・ わたしに、聞かせてよ・・・・・・」

 氷のごとく冷たかったフタナリ少女は今、淫らな奴隷が二人になったことを歓び表情を緩めた。

「ふぇあ、ああ、あ、んはあぁあ!」

「ひむっ、ひっ、ひんっ、ひ、ひあぁ―――」

 夏樹も詩音もおへその下に大きな荒波を立てながら、下腹部の筋肉が激しく撹拌されて悶えている。 亀頭を叩きつけられる前立腺が、その屈強さにキュンキュンとした疼きで反応し、強すぎる快感に息苦しそうにしていた。

(なん、だよ、これぇ、なんなんだよぉ・・・・・・ これぇ・・・・・・ こんなの、こんなことされたら――)

 痛みと思っていたそれはもう悦びでしかなく、ノエルが腰を飛翔させながらのしかかってくることすら心地よい。 夏樹は煮込みすぎたトマトのように顔が蕩けて、涎塗れの口元、舌が吊りそうなほど伸びきっていた。

「な、なつ―― はぁ、な、つき――っ、―――― き」

 詩音もまた果てる寸前だった。 彼の場合はオスメスどちらの快感も合わせて感じ入って、焦点の定まらぬ瞳で夏樹を探している。 ただその顔は幸せすぎて、美貌が崩れていた。

「・・・・・・ みんなで、うぐっ・・・・・・ イク、んだよ・・・・・・ 夏樹・・・・・・ わかって・・・・・・ いるよね?」

 奴隷となる夏樹に対するはじめての命令だったのかもしれないが、夏樹はそれを聞いていないフリをする。 するとノエルは詩音に耳打ちをし、命じる。

「―――― ひっ!?」

 詩音の手が、スクール水着の中から夏樹のペニスを掴む。 勃起しないまま女性のクリトリスのようになっているそれを、指ですりつぶすように愛撫した。

「やぁんっ、あっ んぁあ、あっ、やあっ!あっあっあっぁっぁっ、いやぁあああ」

 敏感スポットの3点責め。 それも拷問のような厳しい悦虐にも、夏樹は歓びの嬌声を上げた。
 ただでさえ感じすぎて辛いのに、辛いのもまた感じるのに、頭の中で7色のスパークが繰り返される。 連結された乳首を固く引っ張り合いながら、腰を暴れさし、その未曾有の刺激にメスの嘶き声を上げた。 絶頂を超えたさらにもう一段階上の扉はもうとっくに開かれていて、しかしこのまま二人を残して逝ってしまうことに、夏樹はどうしようもない孤独感を覚えてしまった。

「どうして・・・・・・ 黙っているのかな? ちゃんと答えないと・・・・・・ このままにして、一人だけ外に放り出すよ・・・・・・君に、耐えられるかな?」

 ノエルは口調こそ穏やかだったが、彼女の顔もまたふやけている。
 詩音もぶるぶる震えて自らの快感にも堪えながら、急かすように夏樹のペニスを握り締める。 もぎとっていいのか、ダメなのか、力の入れ具合は凶悪だった。

(ま・・・・・・ まけ、る・・・・・・ おれ・・・・・・ まけて、しまう・・・・・・ でも、でも・・・・・・おれ・・・・・・ しおんが、いて、くれるなら・・・・・・)

 隷従することに、今はもう違和感を抱かなくなっていた。
 それよりも、このまま一人だけイってしまうことのほうが寂しくて死んでしまうかもしれない。
 冷静だったのはほんの一瞬のこと、再び煮崩れトマトのような顔をすると、甘美な誘惑にもう耐えられなかった。

「も゛、も゛・・・・・・ もうじわげ、ございま・・・・・・ ぜん・・・・・・」

 乳首と、尻穴と、ペニスへの扱きに痙攣しながら、顎を動かす。
 自分でも驚くことに、まだプライドが残っていたのか、それが精いっぱいの敗北宣言だった。
 ノエルは慈悲深く手を伸ばしかけたが、寸前のところでぐっとこらえ、ノエルは首を振る。

「ご主人様は?」

「ぅぐっ・・・・・・ そんな゛・・・・・・ ぞんな゛っ・・・・・・」

 あともう一歩。
 隷属を証明する最後のキーワード。
 不思議なことに嫌味ではなく、ノエルは失楽の崖先に立つ夏樹を迎えるように優しい声で聞き返す。 彼女は本当に、詩音が言うように優しい人物なのかもしれない。 そんなことを、ぼんやりと思った。

「・・・・・・ 詩音」

「あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ、チンチン、クリクリしないでぇえええええええ! いやぁああああああああああああっ!?」

 夏樹のペニスは通常時よりもずっと委縮したが、詩音の指淫に爆竹のような極みに打ちひしがれる。 カケラに残ったプライドを瞬く間にすりつぶし、快感法悦の涙をこぼしながら、絶対的なオスの支配力に屈服する。

「もうしわけっ、もうしわげございません、ごしゅじん、さまぁ、 おゆるし、くだ、ざい。 夏樹も、夏樹もいっしょにぉ、い、いがぜで、くだざぁいませぇ! ひどりに、し、しないでぇ! みんだ、い、いぎだいのぉ!」

 涙を流し、ノエルの予言どおりにかしづく夏樹。
 矮小な自分があまりに恥ずかしく、夏樹は詩音の身体を抱きしめ顔を隠しながらなんとか告げた。

「ふふっ・・・・・・ それでいいの・・・・・・ イイコイイコ・・・・・・ みんな、いい子・・・・・・ いい奴隷・・・・・・ それじゃあ、みんなでイこう――」

 ノエルは慈母のように満ち足りた表情をし、頭を撫でられない代わりに夏樹の膝をさすった。 それになぜか、あるはずのない母性や父性まで感じてしまった。
 夏樹はゆっくりと、自分の心が変わっていくのを、遠くの視線から眺めていた。
 そして可憐な花びらを一枚ずつめくるように、淫靡なめしべだけをのこして、ノエルは腰を律動し始める。 詩音も夏樹ももう自分で動けるほど元気ではない。 テグスで繋がれた二匹の卑しい雌奴隷を、味わい、可愛がり、そして遥かなる高みの世界に導くための宴が始まる。 血肉を咀嚼するよう音が響き、しかしそこにはメスたちの歓喜した声が響き渡る。
 夏樹は詩音に犯されることに法外の幸せを感じ、その後ろから突き上げてくるノエルを強く意識していた。

「きゃぅうっ、きゃうっ、きゃぅうっ、きゃふぅう!?」

 堕ちる――

「ひぃぃいいっ、ひっ、な、なつきぃ! ご、しゅじん、ざ、まぁ――」

 堕ちてしまう――

「はぁ、はぁ、はぁ、ふたりともっ・・・・・・ さいっこう・・・・・・ くっ、こんなの、・・・・・・ はじ・・・・・・ めてぇ、うううっ!」

 年端もいかない少女に全てを奪われる――

「あ、あああああああああ、ダメダメ、もう、ダメェえええええええ!」

 なすすべもなく、支配される――

(お尻がゴリゴリって、あああくうう、ち、ちくびぃ、痛いのに、痛いのに、そのあと、ジンジンって血がめぐってぇええ、ひうううううう)

 ―― なのに、夏樹は幸せだった。

 茨の鎖に抱擁されて悦ぶ血だらけの天使が降りたって、三人に祝福を与えた。
 オスメスの隔たりを超え、ただ強いものに身を委ねるだけの安心感が、媚び諂うことへの卑しさを打ち負かす。 ときめいて、待ち焦がれ、幸せすぎて恐ろしい。 腰をうねらせようにして貪り、古い自分の皮を脱するように、あらゆる感覚と脈動を逃さないため、全身の血潮を煮え滾らせ快感神経を太く絡み付かせる。 開かれた脚を釣り上げられた魚のようにして、荒れ狂った性の旅路に乗り出した。

(く、くる、すごいのが、すごいのが、く、くる!? きちゃう・・・・・・ こ、こんなのしっちゃったら・・・・・・ こんなにキモチイイこと覚えさせられたらもうぅううう、屈服しちゃうしかないじゃないかぁあああ――――)

 夏樹と詩音の目がかち合った。 彼女のペニスがわななき、それを咥えている自分の肛壺の締め付けも強くなっているのがわかった。 そして二人を鳴かせているノエルの腰使いもまた迅さを増して、分厚い雷雲を抜けていく。 不規則な三人の律動が、いつのまに一つの大きなうねりとなって今―― 突然、目の前がぱぁっと開けた。

「あうぅぅひぃいいいいい、きゃぁあんっ、はへっ、あひぃいぃいいいい」

「あぁぁぁああぁぁっぁあ、イグゥゥ、イギ、イグゥゥウウウウウ」

 蓄積された快感電流が一度に発射され、弾かれたように夏樹と詩音は上下に身を反らす。 充血乳首を結ぶ細糸は、その限界まで張りつめ激感と化す。しかし桜梅桃李が咲き誇る二人の思考は、虐げられることに涎を零し、甲高い声を上げながら、むしろ戯れのようにテグスを引き合い感じ合う。 同時にオスの子種汁が勢いよく潮を吹き、夏樹のナカに注ぎ込まれ、焼きのついたカマドのように赤々と悦んでいた。

「ぃいあああ、なつきぃ、なつ、きぃいいいいいいい―――っ!?」

 邪恋を実らせた先輩奴隷は、嬉しさのあまり背中が折れるほど仰向けに反り返った。 二人結ぶ細いテグスがキリリと悲鳴を上げ、縊られた乳首を徹底的に刺激した。

「ひゃいうぅああああ、あ、こわれひゃ、ふ、うぅうううううう」

 後ろの穴から、そして乳首から、真っ赤な花びらが咲き乱れる。 夏樹は途方もない絶頂を叩き込まれて。

(いだぁあああぁぁぁぁああああいぃぃぃっ、キレキレキレキキキキキレチャ―――)

 ―― ぶちん。

 最大の快感と激痛が、テグスが切れると同時に性感帯を鋭く突き刺した。

「ぎゃぴぃいいいい――――」

 絶頂の極みにさらなる悦楽が飛来して、全身の筋肉が一度に痙攣する。 下腹部が暴走し、繰り返し快感の連鎖が続く。 その刺激に応じて夏樹の精子は黄金水と共に放出され、詩音と共に身体を穢した。 汚らしい温もりさえ今は気持ち良く感じてしまい、絶頂してしなだれる同胞の身体を優しく抱きとめた。 詩音は満ち足りた表情を浮かべながらもまだ甘すぎる余韻を引きずっており、そして夏樹もまた灼熱感が冷めることはない。
 びゅくぅ、びゅっ、びゅくくくくくっ! 
 ノエルがクールな表情を崩して射精する。 詩音のナカから肉棒を引き抜くと、彼の身体に入りきらなかった精液が泥のように噴出した。 呆れるほど大量の、しかしオスの圧倒的な熱量に夏樹はもう感服するしかない。
 天を仰いで寝そべった夏樹の頬や額にも、ノエルの白濁液が容赦なく降り注ぐ。 酸素を求めて開いたはずの口から飛び込んできて、脳髄さえも犯された気がする。 精液はあっという間に頬や鼻先を白濁化粧し、鎖骨のくぼみにまで垂れてきて、髪の毛一本までノエルの逞しさが染みこんでくる。

(すごい・・・・・・ すごすぎるぅ・・・・・・ これが、ほんとのオス・・・・・・ ああ、胸がドキドキする・・・・・・)

 吐き気すらこみあげてくるその濃厚な牡臭に、いつしか夏樹は陽だまりのごとき安寧と幸福を感じてしまっていた。 舌に絡み付いた濃い粘液を自ら進んで呑み込むと、満身創痍の身体に優しい温もりが宿る。

(ず、ずるいよ、こんなの・・・・・・ キモチよすぎる・・・・・・ おんなのこって・・・・・・ こんなにも、キモチ、イイんだぁ・・・・・・)

 のぼせた頭で浮かびあがるのは薔薇色に染まるマゾの思考。 本当のオスを知り、詩音が変わってしまった理由もわかった。 こんなにも熱く、激しく、いじめられてしまったら、もう恨むことすらできないではないか。
 夏樹は少しだけ悔しそうに唇を噛みしめる。 それはほんの小さな嫉妬であり、詩音に対する羨望だった。 自分よりも一歩はやく快楽に目覚めたカノジョのことをずるいと思う気持ちと、またこれから一緒に歩みだせるのだという照れ隠しが混じり、もうノエルの存在などほとんど気にならなくなっていた。

(おれも、詩音と一緒なら、どこまでも堕ちていける・・・・・・ だから、もっと気持ちいいことを、夏樹におしえて・・・・・・)

 甘い未来を思い描いた元男子高校生は、ようやく安心したように頬を緩めた。 幼子のようにあどけない顔つきで、そっと隣に倒れる親友であり恋人でもある詩音をみる。 言葉は交わさなかったが、お互い心からわかりあえたような気がして再び眠くなるようなキスをかわすと、夏樹はたまらずに親友の身体を抱き寄せる。
 そこには、一人のご主人様に仕える仲睦まじい奴隷姉妹の姿があった・・・・・・







 ―― 1か月後。

「えー、これがあの、夏樹なの!? ウソ、信じらんない、なんというか・・・・・・ すっかりか、かわいくなった、ねぇ?」

 どこにでもありふれた通学途中の朝のこと。
 驚きの声と共に好奇の目線で“有坂なつき”を取り囲む女子生徒たち。 ノエルの新しい恋人奴隷として、また詩音の妹となった夏樹は、ピカピカの首輪に手を当てながら、モジモジと詩音たちから離れて一人ご挨拶にやってきた。

「お、おはよう、ございます・・・・・・ みなさん・・・・・・ いろいろと・・・・・・ ご心配を、おかけしました」

 目の前にいる三人の女子高生は、かつて何度も詩音とのことで口論になった同級生だ。
 まずはしばらく姿を見せなかったことを謝罪しながら、調教済みの夏樹は心を入れ替えたことを白昼の通学路で告白する。
 それがどのような結果になるのか、わかっているからこそ下腹部がキュンと疼く。

「あらら、夏樹ぃ・・・・・・ しおんちゃんに続いてアンタまで調教されちゃったんだ?」

「・・・・・・」
 
 夏樹はかちゃりと首輪をならしながら、

「は、はぃ・・・・・・ そうです・・・・・・ ご主人さまと・・・・・・ しおんおねえさまに、たっぷり、調教して・・・・・・ いただきました」

「それで、その恰好は? それってさ、近所の私立小学校の制服だよね? もしかしてぇ〜、夏樹、そこにかようの?」

「・・・・・・」

 いやらしい目線に射抜かれて、夏樹は真っ赤な顔をしたまま頷く。
 今日から、本当に小学一年生になった夏樹。
 首輪と同じく赤い光沢を放つランドセルを背負い、頭には黄色い通園帽。 そして丸襟ブラウスと吊りスカートというフォーマルな小学生の恰好をしていた。
 しかしあどけない容姿と、詩音にしてもらったお下げ髪、なにより儚げな表情が女子小学生という違和感を、徐々に薄くさせて行った。

「へぇー、あのやんちゃな夏樹が女の子になって小学校に通うんだぁ。 言葉使いまですっかり変わっちゃって、かぁいいんだ」

「きゃあ」

 突然、スカートの上からお尻を撫でられ仔猫のような声が上がった。

「あははは、きゃあだって・・・・・・ もうすっかり女の子してるし」

「あ、あああ、う、うぅんん」

「ねえ、やっぱりさ、わざとなの?」

「え?」

「本当はさ、そうやって、ノエルさんに捕まって調教されるために生意気なことばっかりしてたんでしょう?」

「ちが、〜〜〜〜っ!?」
 
 夏樹は否定をしたかったのだが、すぐに思い直して、

「・・・・・・ はい、おっしゃるとおりです。 なつきは調教されるために、ご主人様の奴隷にしていただきたくて、生意気なことしてました・・・・・・」

「やっぱり」

「あ、あはぁん、て、手つきが、い、いやらしいですぅ」

 再びお尻を揉まれて、モジモジと大げさなほど内股になりながら快感に耐える夏樹。 成熟したマゾヒズムは朝も夜も関係なく、元同級生たちの悪戯な手にも身体を火照らせていく。

「それにしても、なっちゃんのお尻。 小ぶりで柔らかいねェ、お姉さん、こういうの大好きだよ。 マシュマロみたい」

「どれどれ、あたしも確認」

「あっ、あっ、あっ、ダメ、いや、お、おやめくだ、さい・・・・・・ きもちよくなっちゃう」

 手が一つ増え、左右から尻たぶをこねくり回されて、すぐさま夏樹の顔に紅葉の花が咲く。 淫らに揺れる腰は、むしろ誘っているかのような動きで毎夜の艶めかしい感覚が蘇ってきた。

「あはぁん、口ではイヤイヤ言っているけど・・・・・・ でも本気で抵抗はしないんだねぇ。 ちゃぁんと調教されているみたいで、えらいぞ」

 夏樹は褒められた、けれども頭をくしゃくしゃに撫でられるのは少し不快で、

「あぁ! いわ、いわないで・・・・・・ ごしょう、ですから」

「ノエルさん・・・・・・ ご主人様にはなんていわれているの? あたしたちが悪戯したら、抵抗していいっていってた?」

「そ、それは、そのぉ・・・・・・いあぁん!」

 夏樹が口ごもっている間にも少女たちにお尻を弄ばれて、蝶のように翻る小学生のスカートが、彼女たちの目を愉しませる。 お尻と共に内腿をさすられ、快感の火花が散ると、さらにエスカレートして後ろから股間や胸をまさぐられてしまう。
 だが、それでも夏樹は逆らえない。
 それはご主人様に命令されたからではなく、肌が敏感になりすぎてしまって身体の筋肉が硬直してしまうからだ。 少女たちにとってはちょっと強めのスキンシップ程度だったが、夏樹には執拗なまでの焦らしプレイに思えてしまう。
 やがて一人の女子生徒の指が、コツンと、菊門にされた蓋を刺激すると、下半身を飛び上がらせて驚いた。

「おや、夏樹、お尻の穴のところになにか固いものがあるみたいね」

「あ!」

「これってあれじゃない? アナルプラグってやつ、うっわぁー、本格的ぃ。 なになに、アンタ、こんなんつけて小学校に行くつもりだったの?」

「あ、あの、その・・・・・・」

「変態じゃん、こんなの。 朝っぱら発情してたのはそういうわけなのね」

「・・・・・・」

「可愛い顔して凄いことしているのね。 下着も、アニメのキャラパンだしぃ・・・・・・あれ、夏樹? もしかして、泣いているの?」

 不意に気づいた三人が、同時に手を止め夏樹を見た。
 一か月間の度重なる調教と、花嫁修業。 男の子だった時には訳なく追い払えた少女たちが、今の夏樹にはもうできない。 悲しくて、恥ずかしくて、たったひとつの絆とも言うべき首輪を握り締めてしまう。
 やっぱり、自分は詩音のようには行かないのだと、受け入れられるはずがないと、そう投げやりに考えると、大粒の涙がボロボロと止まらない。

「えっぐ、う。うう・・・・・・」

 すると、少女たちはお互いに顔を見合わせ、一同にバツの悪そうな表情を浮かべた。

「ちょ、ちょっと、夏樹? マジ、泣かないでよ。 ね、ねぇってば・・・・・・ あんた、らしくないじゃん?」

「だ、だってぇ、だって・・・・・・ みんなが、みんなが・・・・・・ い、いじめるから・・・・・・ 」

 恥の上塗りになることはわかっていたが、それでも泣きじゃくる夏樹は本当の女子小学生のようにメソメソと泣き言を零した。

「あぁ、ごめんごめん、わたしたち、言い過ぎた。 ほんっとごめん、許して。 そんなつもりじゃなかったのよ、ほんとに」

「あたしもごめん。 調子に乗りすぎた」

「ごめんなさい」

「うう・・・・・・」

 皆が一斉にハンカチを差し出して、夏樹の頭をヨシヨシと撫でまわしてくる。
 ついこの間の自分なら屈辱しか感じないのに、どうしてたが今は心がほっこりする。 ちやほやされていることに、どこか喜んでいる。

「ねぇ、機嫌なおしてよぉ。 もうからかったりしないからさぁ、うちらは・・・・・・ ほら、カワイイあんたと遊びたかっただけなんだって」

「う、うぅ」

「嘘じゃないよ。 うちら三人、密かに夏樹のファンだったんだから。 ちっちゃくてかわいい夏樹のことが大好きで・・・・・・ ほら、うちの携帯みて? ぜんぶあんたのカワイイショットなんだから」

「その恰好だって、もう信じられないくらい似合っている。 私たち的にはドストライクだよ。 だから超〜、テンションあがっちゃって・・・・・・ あーんもう、すごく、カワイイよ、なっちゃん」

 夏樹は溢れ出した涙が急に止まって、呆然と少女たちを見ていた。
 入れ替わりにこみあげてきたのは確かな喜びと、そして新しい自分自身のプライドだった。 男子高校生という殻を一度脱ぎ去って、女子小学生として新たなスタートを切った夏樹は、詩音だけでなく、多くのお姉さんたちと共に歩き出すことになる。
 そのことが、まだどこか恥ずかしくて・・・・・・ 受け入れられたことは素直に嬉しくて、身体がムズムズとこそばゆくて、でももう一度聞きたくて。

「も、もういっかい、言って、ください・・・・・・ お、お姉ちゃん」

 涙をぬぐい、上目づかいで夏樹はおねだりする。
 夏樹の頭の中に彼女たちと年は同じだという感覚はもうない。 自分が男の子であるという自覚も、もうなかった。

「もういっかい、夏樹のこと、ど、どう思いますか?」

 夏樹は小学生の服のまま、ひらりと一回転その場で回った。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 三人はまたもう一度お互いの顔を見合わせ、そして今度は優しく笑って答える。

「可愛い」

「超、可愛い」

「天使みたい」

「は、はううぅわぁぁぁあああ」

 ただその褒め言葉だけで嬉しくなる。
 耳まで真っ赤にして恥ずかしがる様は、もう心がすっかり女子小学生のそれ。
 淫らなことをされることよりもずっと幸せで、ぽわわぁんとした夢見心地。 魔法を使って空を飛ぶことだってできるくらいに、夏樹の心が晴れ渡る。

「あ、ありがとう、お姉ちゃんたち・・・・・・ なつき、小学生に行ってからも、頑張ります」

 いつかの日。
 夏樹はもう忘れてしまったけれども、今日と同じように女子高生たちに励まされて駆けだしたあの朝と同じく、夏樹は胸を張って女の子らしくその場を後にする――



 ―― だがしかし、行きかけてきたとことでまた、夏樹は女子高生たちのもとに走って戻ってきた。



「はぁ、はぁ、はぁ、あ、あのね・・・・・・ お姉ちゃんたち」

 夏樹は息を切らせながら、別れたはずの女子高校生たちに呼びかける。

「どうしたの? 忘れ物?」

「おトイレとか?」

「バカ、空気読め」

 三者三様の話を聞き流し、彼女たちの耳を寄せると、真っ赤になりながら自分の感謝の気持ちを打ち明けるのだった。

「あのね、・・・・・・ ああいうのは・・・・・・ その・・・・・・ えっちなのは・・・・・・ えと・・・・・・ なんていうか、その・・・・・・ べ、ベッドの上とかなら・・・・・・ い、いいよ。 そ、それだけっ!」

 翻るスカートの中、プ○キュアのパンツがはっきりと見えていた。
 夏樹は小学校に向かってまた、駆け出す。
 残された三人は互いに顔を見合わせ、長年の祝願が叶って狂喜した。

「「「きゃああああああああああああああああああ」」」

 けたたましい黄色い歓声を残して、女子小学生奴隷夏樹は新しいスタートラインに旅立った。







「ふふ、ボクたちの出番、なくなっちゃいましたね?」

「・・・・・・ 構わないよ・・・・・・ あれが、夏樹・・・・・・ なんだから・・・・・・」

「確かに、夏樹って、友達が多いですから誰かさんと違ってね」

「相手を選んでいるだけだよ、わたしは・・・・・・」

「ふふ、夏樹、小学校でともだち100人できるかしら?」

 密かに夏樹のデビューを見守っていた二人が、通学路を歩きながら取り留めのない話をしていた。

「ところで、ご主人様? 夏樹は、あれで“完全に”堕ちたと思いますか?」

「・・・・・・」

 不意な質問に、ノエルは長い間を置いてから応えた。

「・・・・・・ いや・・・・・・ 七分堕ち、くらいだと思っている・・・・・・」

「あら、どうしてですか?」

 詩音が一歩前に出て、愛らしく首をかしげた。

「・・・・・・ 夏樹は・・・・・・ 詩音・・・・・・ 君のためにわたしの奴隷になることを選んだから・・・・・・ だから・・・・・・ 君がいる限り・・・・・・ 完全にわたしのものにはならないよ」

「鋭いですね。でも、ボクもそう思います。 夏樹はああ見て本当にタフだから、あのくらいじゃ、すぐにまた立ち直りますよ。 油断してたら、ご主人様でも、足元をすくわれちゃうかもしれません」

 だが、ノエルは言葉をつづけた。

「それは・・・・・・ 君も同じだろ・・・・・・」

「うん?」

「詩音・・・・・・君も・・・・・・ 本当は、堕ちていないだろう?」

「なんだ、気づいていたんだ?」

 驚いた様子もなく、詩音はにっこりと少年らしく微笑んだ。

「うん・・・・・・ 詩音・・・・・・ 君は最初からお芝居・・・・・・ 奴隷のフリ、をしているだけ。 今までのすべて、夏樹を自分のモノにするためだけの計画・・・・・・」

「ふふっ、ご明察。 さすがボクらのご主人様。 その通り。 ボクの目的は最初から夏樹だけ。 夏樹さえ手に入れば他はどうだってよかったんだ。 奴隷かどうかなんて別に大した問題じゃない。 だから、君のことを利用させてもらったんだ。 君の家も、性癖も、全部ね・・・・・・ おかげで最高の結果に終わったよ」

 夏樹と一緒にいたい、それは詩音のたった一つの願いだった。
 だからこそ親の不良債権を逆に利用して天原ノエルに近づき、奴隷になったふりをして、夏樹をおびき出した。

「じゃあ・・・・・・ これからどうするんだい・・・・・・ ? 二人で天原の家を乗っ取るの?」

「うーん、キミをどうにかするのはそんなに難しいことではないけど、ボクも夏樹も、お金とか家柄にはまったく興味ないし、どうだっていいんだよ」

「つまり・・・・・・?」

「つまり、キミが・・・・・・ ご主人様が夏樹のことを大切にすれば、このまま一生だって尽くしてあげるってこと。 よかったね、孤独の王子様、ふふ」

 実にあっけらかんと、そして冷酷に詩音は宣言した。
 彼の愛情は全て歪んだ形となって夏樹にのみ降り注がれており、それがノエルに向かうことは生涯ない。 そしてまた、夏樹もノエルよりも詩音の方が大事だった。

「呆れた・・・・・・その本性、夏樹が知ったら・・・・・・ さぞ、ショックだろうね・・・・・・?」

「ショックどころか、下手したらコロされるかもね、ボク」

「なに?」

 ノエルは珍しく本当に驚いているようだった。

「そういうことも十分考えられますよ。 夏樹は鈍感ですけど、素直で真っ直ぐな子だから。 ははは。 まあ、そのときは一蓮托生ってことで、ね?」

「なぜ・・・・・・ ?」

「なぜ、嬉しそうなのかって? ふふふ、だって、夏樹はボクのために命をかけてお屋敷に忍び込んでくれたんだよ? それでボクは満足なんだよ。 だから夏樹になら、いつコロされたっていい。 ううん、むしろ、死ぬなら夏樹にやられたい」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 二人はしばし見つめ合った。  
 それは恋人同士とは無縁の、冷たい身も凍るようなひと時だった。

「ひとつ、君に、言いたいことがある」

「はい、なんでしょうか、ご主人様?」

 詩音は、慇懃に一礼する。

「・・・・・・ わたしも夏樹のことが好きになった」