0018 二十二歳の高校一年生


真新しいシャツに腕を通す。
今日は試着じゃない。左側にボタンのついたシャツにも慣れないといけないんだ。
学校指定の真っ白なパンツの上に、赤と緑のチェックのスカートを穿いてホックを留める。校則で決められた長すぎず短すぎない膝丈の高さを鏡でチェックする。
明るめの紺色のジャケットを着て、左胸に校章と学年章を付ける。
『私立創啓学園 T−4』
22歳になって二度目の高校一年生になる。それが僕だ。

4年前、高校二年生の時に悪戯がすぎて補導された。
たいした罪ではなかったけど、友達に裏切られ、大人達に騙され、僕は4年もの更正施設への実刑を受けた。
出所後、嘆き悲しんでいた両親の頼み、せめて高校くらいは卒業しなさいの言葉に逆らう事は出来なかった。
しかし年齢は言うに及ばす、前科もある僕を受け入れてくれる高校など探すだけ無駄だった。その中で唯一お金さえ積めば入学できたのがこの創啓学園だったのだ。
学校まではたった三駅。電車に乗り込むと、中は僕と同じ制服の女の子達で一杯だった。胸のリボンは青色、二年生の先輩だ。僕は丁寧に頭を下げた。
「先輩、おはようございます」
深々と頭を下げて、先輩が上げていいと言われるのを待つ。学年の上下関係が厳しい創啓学園の校則の一つだ。

「5つも年下の女の子を本当に先輩として敬えますか?」

最終面接で校長が僕に訪ねた質問が頭によぎる。

「本当にもう一度高校一年生からやり直せるんですね」

そう、これは罪を犯した僕の罰なのだ。

「同級生はあなたより6つも下の女の子ばかりですよ。
 その子達と仲良くできるのですね?」

うん。年齢は忘れ、そして性別さえも忘れないといけない。

「では、あなたを本学園の女子生徒として入学を許可します。
ただし校内、いや校外や家庭でも今後三年間はあなたは女子として扱かわれます。
くれぐれも15歳の普通の少女として学園生活を過ごして下さい」

辛い宣告だったが、僕には逃げる場所さえ無かった。

「はい、分かりました。高校一年生の女の子として先輩を敬って、同級生と仲良くしてこの創啓学園で学校生活を送らせて頂きます」

そうして僕は二度目の高校生になった。

「上げていいわよ」
先輩のお許しが出たので頭を上げる。背はぼくより少し低いけど、とっても大人びて威厳があるように見える。
事件を起こす前は二年生なんて後輩で子供だと思ってたのに、不思議な気分だ。
「あなたね、今年入学してきた年上の男の子って」
「はい」
「男なのにこんなに可愛い制服着て恥ずかしくないの?」
「はい、恥ずかしいです。でも先輩と同じ制服を着ることが出来て光栄です」
「あはは、口は達者なのね。パンツも女物なの?」
「あっ!いやっ!」
先輩は僕のスカートをめくり上げて下着をチェックをされます。
「んふふ、本当に女の子みたいな反応じゃない。いいわ、合格よ。
 でもできたらパンツには名前を書いておきなさい。あとその膨らみもなんとかしなさい」
「そ、それは……」
「馬鹿ね、冗談よ。からかい甲斐のある子ね」
先輩は上品に笑った。本当に僕の方が下級生みたいだ。
「そうだ、あなたテニス部に入りなさい。可愛がってあげるから」
「で、でも……」
「先輩命令よ、あなたが短いスコートを穿いてフリルのアンスコをちらちら見られて恥ずかしがっているところ、想像しただけで楽しいんだもん」
「で、ですけど……」
「うちの部は厳しいわよ。一年生はまず基礎練からビシビシ鍛えてあげるからね。もちろん先輩には絶対服従、できの悪い子はパンツ脱がされて校庭を走らされるからね」
「ま、まさか……」
おちんちんをぶらぶらとさせて校庭を泣きながら走る自分の姿が目に浮かびました。
そう、僕は先輩の後輩である、高校一年生の女の子。
22歳の新入生は、17歳の先輩に決して逆らう事は出来ないのだ。