0009 いじめっ子に復讐を2

 
「お、おい、誰かに見られたらどうすんだ!・・・よ・・・」
真っ昼間の往来に連れ出された陽向は小声で晴樹に言った。晴樹はわざと大声で言い返す。
「大丈夫だって。どこから見ても女の子だから。君が陽向君だって気付く人なんていないよ!」
「わっ!わっ!わっ!」
陽向は慌てて晴樹の口を塞ぐ。ここはいつも通っている通学路でもあるのだ。夏休みとはいえ同級生に会う可能性は低く無かったのだ。
「それよりさぁ。」
晴樹はニタリと笑って既に真っ赤になっている陽向を見て言った。
「さっき約束しただろ。今の陽向君は女の子なんだから、ちゃんと女の子らしく喋ってよ。」
「だ、だって・・・」
「だっても何も無いよ。今から人の多いところに行くんだから、君だって男の子だってばれたくないだろ?」
「ひ、人の多いところ!?」
「そっ。今から楽しいデートに出掛けるんだからね。恥をかきたくなかったら、女の子らしく可愛らしい行動を心がけるんだね。さぁ行こうか。」
どこにそんな力があったのか、晴樹は陽向が虐めていた時には思いもしなかった腕力で彼の手を握ると駅に向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと待てよ・・・晴樹!」
陽向は叫ぶが、晴樹はそれを無視してどんどんと歩いていく。
「あ・・・あの・・・・」
陽向は決心して言った。
「あの・・・晴樹・・・くん・・・あ、あたし・・・・」
そこでようやく晴樹は立ち止まった。
「どうしたの?ひなちゃん?」
明らかに晴樹は陽向が恥ずかしがるのを見て愉しんでいた。
「あ、あの・・・靴が慣れなくて歩き難いから・・・その・・・もう少し・・・ゆっくり・・・・。」
その姿はまるで本当に初デートに戸惑う女の子そのものだった。
「オッケー。」
満足した様に晴樹は笑みを返す。
「その女の子らしい編み上げの靴が歩き難いんだね。折角僕の為に可愛くオシャレしてきてくれたのに気付かなくてゴメンネ。あはははは!」
陽向に無理矢理に履かせた、ちょっとだけヒールのあるピンク色の靴を見て晴樹は勝ち誇った様に笑った。
「でも、それよりさ・・・」
晴樹は彼の靴から徐々に視線を上げる。
「な、なに・・・」
「あんまり股開いて歩くとスカート捲れちゃうよ。これから沢山の人前に出るんだから、気を付けないと恥ずかしいパンツ見られちゃうかもね。」
「ひっ!」
陽向は慌ててスカートの裾を押さえ付けた。これからこの姿で街の中に・・・そう考えただけで彼の心臓は破裂しそうなほどドキドキと鼓動してしまっていた。


素材提供:きまぐれアフター様