0006 渋滞

 
「ね、ねぇパパ、まだ着かないの?」
僕は両手で下半身を押さえながら言った。もう尿意は限界に達している。
「仕方無いだろ。テレビじゃ5キロの渋滞って言っているから、もう少し我慢しなさい。」
「あ、あと・・・どれくらい?」
車はさっきから全く動いていない。僕は心から焦った声になっていた。
「そうだな・・・一時間もすればサービスエリアには着くだろう。」
「そ、そんなに待てないよー!」
僕は車窓から見える、遙か向こうまで連なった車の列を見て蒼くなった。
「どうしても我慢できないなら、ちょっと外に出てしてくれば?ほら、あそこでしてる子がいるよ。」
今年小学4年生になる妹の奈々がクスクス笑いながら言った。奈々の指さす方を見ると、確かに3歳ぐらいの子供が母親に抱かれてオシッコをしている最中だった。
「母さんが連れてってあげようか恭志?あの子みたいに、シーッっておしっこする?」
ママまでがそう言って笑った。
「じょ、冗談じゃないよ!」
僕は精一杯の虚勢を張った。
「そうだぞ。高校生にもなって小便くらい我慢できなくてどうする。大体、今朝ジュースを飲み過ぎたのは誰だった?」
「そうよね。おいしい、おいしいって、止めるのも聞かずに何杯も飲んでたもんね。」
パパと奈々が僕を責め立てる。だけど僕はもうその言葉さえうつろに聞こえる程だった。
「なかなか動きませんねぇ。」
その時、隣に止まっていた車の助手席から、若い女性がママに声をかけてきた。
「えぇ。子供がオシッコて言って困るってるんですよ。」
ママがそういうと、女性は僕たちの車の中を見渡した。後部座席に乗っている僕と奈々を見て、女性は納得した様に頷く。
「それは大変ですねぇ。失礼ですけど携帯トイレとかお持ちですか?」
「いえ、それが・・・こんな事になるなんて思ってもみなかったんですよ。二人とももう大きいから大丈夫だと思って。」
会話を聞きながら僕は恥ずかしくて堪らなかった。
「そうですか。」
女性は心底同情した様な声で呟いて、後部座席に置いた鞄を引き寄せた。
「あの、もしよければこれをお使いになられますか?先程のSAで無料で配ってたんですけど。」
「まあ!」
ママが女性からなにやらビニール袋に入ったものを受け取ってそんな声を上げた。僕の席からはそれがが何かは見えなかった。
「ありがたく頂きますわ。でも、そちら様は宜しいんですか?」
女性はニコリと笑った。
「えぇ、この子はもう外れていますし。今も大丈夫だって言っていますから。」
よく見ると後部座席には女性の子供らしい5歳くらいの女の子が座っていた。
「それじゃあ、ありがたく頂きますわ。恭志、お姉さんにお礼を言いなさい。」
「あっ、はいっ!・・・お、お姉さん、ありがとう。」
ママに言われて僕は訳が分からないまま、女性に向かって頭を下げた。しかし
「あっ!?えっ!?、あ!い、いいんですよ。」
なぜか女性は驚いた様にして僕から目を逸らした。
「ね、ねぇ・・・何をもらったの?」
僕は少し不安になってママに尋ねた。
「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、車の中でされちゃ大変だからね、ほら。」
ママから渡されたものを見て僕は驚いた。それは・・・
「わーっ!オムツだーっ!」
奈々がはしゃいで叫ぶ。
「見せて見せて!」
奈々は僕からその紙オムツを奪い取ると説明書きを読む。
「ふーん。『○○SA試供品一枚入り幼児用オムツ(女の子用)LLサイズ』だって。見てみて、可愛い柄だよ。」
奈々は勝手に袋を破って中から紙オムツを取り出す。
「ふーん。最近のって可愛いのねぇ。奈々は幼稚園の前にとれちゃったからママもオムツなんて見るの久しぶりだわ。」
僕は二人の会話を聞きながら震え上がった。
「さっ、お兄ちゃん。穿いてみせてよ。それともあたしがあててあげようか?」
奈々が僕の目の前にオムツをちらつかせてイヒヒと笑う。どうやら冗談では無く、二人は僕にその幼児用のオムツを穿かせようとしている様だった。
「い、いやだっ!オムツなんてっ!」
僕は大声で拒否した。先程の女性が僕の方をチラリとみて気の毒そうな目になる。きっとオムツをするのは妹だと思っていたんだろう。
「ぜ、ぜったいイヤだからね!そんなの!」
必死になって僕は声を張り上げた。いくら緊急事態とはいっても妹の前でオムツだなんて、兄の沽券に関わる。
「恭志!我が儘言うな!」
だがパパの一言で僕は凍り付いた。
「せっかくの人様の親切を無駄にしちゃいけないだろう。大体こんな事になったのはお前自身の責任でもあるんだ。」
「そうね。少しは恥ずかしい目をみた方がオシオキになるかもね。」
ママが振り向いて言った。
「奈々、お兄ちゃんにオムツあててくれる。」
「はーい、ママぁ!」
奈々が元気よく返事した。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
僕は暴れるが奈々にあっという間に押さえ付けられた。恥ずかしい事に僕と体格の変わらない、この6つ年下の妹に僕はケンカでは全くかなわない。それどころか最近は勉強さえ怪しいくらいなのだ。
「さぁ、おとなしくしましょうね。」
あっというまに僕は奈々に腕を押さえ付けられて、広いワンボックスカーの後部座席に仰向けに寝転がされる。
「ほら、おとなしくしろってば!」
それでも抵抗する僕のズボンのチャックを下ろすと、奈々は一気にそれをずりさげた。
「お兄ちゃん、まだ可愛いブリーフ穿いてるんだね。」
デフォルメされた飛行機のイラストの描かれた僕の真っ白いブリーフを見て奈々が笑う。普通の高校生の穿く様な、格好いいトランクスなんかは僕の体格ではあまり販売されておらず、僕はいつもママの買って来るまるで小学生の様なブリーフを穿かされているのだ。
「でも、ブリーフ穿いたままじゃオムツできないわね。」
「い、いやっ!やめてよっ、奈々ちゃん!」
僕の声を無視し、奈々がブリーフまでも引きずり下ろす。
「んふふふ・・・お兄ちゃんのチンチンったら、一緒におふろに入ってた頃と変わってないじゃん。」
5年も前の事を引き合いに出し奈々が笑う。そう、僕のオチンチンはまだ皮が剥けていないのだ。
「でも、これなら女の子用のオムツでもぴったりだね。だって、おちんちん大きかったらオムツに入らないもんね。」
そう言って奈々は僕のペニスを指で弾いた。
「おいおい奈々、そのくらいにしておいてやれ。」
さすがに見かねたパパが声をかけた。
「はーい!」
奈々はそう言ってオムツに手を伸ばす。
「じゃあ、オムツしましょうね。赤ちゃんの恭志ちゃん♪」
奈々は僕の足を持ち上げてお尻の下に紙オムツを敷き込む。あまりの恥ずかしさに僕は気絶しそうな程だった。
「ねぇ、見て!あのお兄ちゃん大きいのにオムツされてるよ!」
いつのまにか窓からこちらの方を見ていた、先程の小さな少女が大きな声をあげた。
「い、いやぁっっ・・・・・・!」
そんな小さな子にまでオムツをあてられるところを見られた僕は両手で顔を覆ってとうとう泣き出してしまった。
「あらあら、オムツが泣くほど嬉しいのね。あて終わったらいっぱいオシッコしていいからね。」
奈々がクスクス笑いながら前当てを閉じた。
「あら、恭志似合うじゃない。」
カラフルな水玉模様にウサギのイラストの描かれたオムツ姿の僕を見てママが笑う。
「は、恥ずかしいよぉ・・・・」
僕は涙目でママに訴えた。だが、それは思いもよらず逆効果となってしまう。
「そうよねぇ、男の子なのに、そんな可愛いオムツじゃ恥ずかしいわよねぇ・・・・」
ママはしばらく考えてから思いついた様に言った。
「ねぇ、他の車の人に見られても大丈夫な様に・・・」
「大丈夫な様に?」
奈々が首を捻る。
「上着も着替えさせたらたらいいんじゃない?奈々の上着お兄ちゃんに貸してあげたらどうかしら?」
「うん、それ面白そうだね!」
奈々も嫌がるかと思ったけど、彼女は楽しそうに後ろに積んだ自分のバッグから替えのシャツを取り出す。薄いピンクを基調に、大きなハートマークのイラスト、袖と裾にフリルの入った可愛らしいシャツだ。
「あら、それまだ新しいやつじゃない。このあいだ買ってあげたばかりでしょ?」
ママがちょっと不機嫌に言う。
「だって、わたしこんな可愛い服似合わないんだもん。その点・・・」
奈々は僕をじっと見た。
「お兄ちゃんならぴったしかなって。ほら、着てみてよ!」
「んふふ、確かにそうかもね。」
ママがバックミラーで僕を見て笑った。
「い、いやだぁっ!」
だがその悲鳴も虚しく僕はあっというまに妹の服に着替えさせられてしまった。
「うっ・・・うっ・・うぅっ・・・・」
あまりの出来事に僕は呆然として窓の外を眺めた。そこではさっきとは別の女の子が母親に連れられてオシッコをしている最中だった。
「ほら・・・・シーッ・・・・」
その声が風に乗って聞こえ、僕の中で何かが壊れた。
「あっ!お兄ちゃん、本当にお漏らししてる!」
奈々の声が車の外に聞こえるぐらい響いた。
「あっ・・・あっ・・・あぁっ・・・・・」
我に返った僕だったがオシッコは止まらない。恥ずかしい事に僕は高校生にもなってオムツを使ってしまっているのだ。
段々と下半身が暖かくなる。紙オムツが水分を吸って膨れてくるその様子を奈々が珍しい物でも見る様に見つめていた。
「あらあら、恭志は本当に赤ちゃんになっちゃったのね。」
「本当に使ってしまうとはなさけない奴だ。あとでオシオキをしてやるからな。」
そう言われても僕は何も言い返す事が出来なかった。
「んふふ。もうチッチ出終わった?」
全てを出し尽くして放心している僕の頬を奈々が優しく撫でる。
「濡れたオムツ気持ち悪いけどもうちょっと我慢してるんでちょよー。サービスエリアについたらすぐにオムツ替えてあげまちゅからねー。」
その言葉の真意に気付かず僕は顔を真っ赤にして黙って頷いた。
車は一向に動き出しそうになかった。

(※イラストは『嗜虐な天使達(赤ちゃんモデル編)』より抜粋)