0002 替え玉受験

「くそっ!誰も気付かないでやんの・・・」
亮太は受験票を握りしめながら舌打ちした。
コートを着ているとはいえ、冬の凍える風が初めて穿いた制服のスカートの裾から吹き込み、無理矢理穿かされたショーツの中の小さなおちんちんを更に小さくさせる。
「まったく・・・絵那のやつがきちんと勉強してないからこんな羽目に・・・。」
亮太は双子の妹の今朝の様子を思い浮かべて更に腹を立てた。彼女は事もあろうに自分の代わりをして大学受験に出掛けようとする兄の姿を見て『可愛い』と爆笑したのだ。
「そんなに似合ってるのかなぁ・・・」
亮太は思わず教室のガラス戸に自分を映してみる。そこにはウィッグを被っているとはいえ、とても男子には見えない妹そっくりの女の子がいた。
「なかなかいけてるじゃん・・・って!何考えてんだよ俺!?」
亮太は自身に見とれている自分に気付き、真っ赤になって頭を振る。
「なぁ、あの子可愛くね?あの制服、港雲女子のだぜ。」
そんな男の子の声が遠くから聞こえ、更に亮太の羞恥心を刺激した。
「こんなんじゃ、お小遣い1000円アップなんかじゃ割に合わないよ・・・。」
彼は軽はずみに替え玉受験を引き受けた事を後悔しながら席に着く。途端に隣の席に座っていた少女が大声で叫ぶ。
「あれ!?菅原・・・亮太・・・くん!?」
「う、うわぁぁぁっ!!」
それは亮太のクラスメイトである光紀という女子生徒だった。
「こ、これは・・・あの・・・妹の・・・」
必死に説明をする亮太に光紀は理解を示しながらも、楽しげにこう言った。
「じゃあ黙っておいてあげるけど、これから亮太君は私の奴隷ね。」
携帯のカメラ音と共に、絶望に暮れる彼の女子制服写真が光紀のカメラに収まった。

一ヶ月後、亮太の甲斐あって絵那は合格通知を手にした。そして別の日に受験した亮太自身も。
だが一緒に合格した光紀の命令により、楽しいはずの大学生活も妹と入れ替わって女子学生として過ごす羽目になる事を亮太はまだ知らなかった。