0001 今日から女子高
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「大丈夫かな。ちゃんと女の子に見えるかな・・・。」
優輝は鏡の前で制服に着替え頬を赤らめた。
「それにしてもママったら、大きなブラ買いすぎだよ。」
胸に詰め込んだヌーブラを押してみる。その弾力はまるで本物の女の子の胸みたいだ。
「女子の見ている時は短くて可愛いなって思ってたけど、うちの制服のスカートってこんなに恥ずかしいもんなんだ・・・。」
自分でスカートの裾をちょっと捲ってみて、優輝は暗鬱たる気分になった。昨日から、どんな姿勢になればパンツが見えてしまうか散々シミュレートしてみた彼だったが、出た結論は「大きな動きをしない」だけだった。ついこの間まで男子生徒として学校に通っていた彼にとってそれは容易な事では無かった。
「お兄ちゃん、似合ってるじゃん。」
妹の愛菜がすっかり女の子となった兄の姿を見て笑う。
「仕方ないわよねぇ。学校で女の子といやらしいことしてたんだから。」
「う、うるさいぞっ!」
県下一風紀に厳しいと言われる緑律学園においてタブーとされる男女交際、それも放課後の教室でキスをするという重大な校則違反を犯した優輝に命じられたのは、男子生徒としての権利を剥奪し、卒業まで女子生徒として通学するという処分だった。確かにこの格好では女の子と交際できる筈も無い。
その恥辱の処分に激しく抗った彼だったが、折角入った名門校を退学するなど両親が許す筈も無く、優輝は泣く泣く女子高生として通学する事になってしまった。
「あらあら、女の子が乱暴な口をきいちゃだめでしょ。」
母親までもが、すっかり彼をもう女の子扱いだ。
「ほら、これあげるから鞄に付けて。これくらいしておかないと今時の女子高生らしくないでしょ。」
愛菜が自分の鞄からぬいぐるみを一つ外すと優輝の指定鞄に取り付けてしまう。
「そういや、緑律の通学電車って痴漢が多いらしいよ。お兄ちゃんも遭わない様に気をつけてね♪
自分が痴漢に遭い、スカートの裾から手を入れられ、おちんちんに気が付かれる事を想像し、優輝は足を震わせた。
「あははは、お兄ちゃんったら可愛いんだ。大丈夫よ、そんなに可愛くしてたら絶対男の子だってばれないから。」
「う・・・うん・・・あっ!もうこんな時間!遅刻したら大変な事になっちゃうよっ!・・・行ってきま〜す!」
優輝は慌てて鞄を抱えて玄関を飛び出た。これからどんな恥ずかしい学校生活が待っているのかも知らずに・・・