天使達の悪巧み 第九章 あたらしいおうち

「ね、ねぇ、それもうちょっとそれ隠してよ」
ドラッグストアを出てからも莉緒の心は少しも休まらなかった。和葉が買ったばかりの紙オムツのパッケージを殊更目立つように振り回しながら歩くのもその理由の一つだ。
「あれ?ひょっとして莉緒ったら一丁前に恥ずかしいのかな?」
「そ、そりゃあ・・・・・・」
「あらあら昼間のお漏らしも治らない赤ん坊のくせに、偉そうな口きくじゃない」
「あ、あれは・・・・・・」
「ようやく思い出した?自分がまだお漏らしの治らない幼稚園児だって。ほら見てみなさいよ、ここに『お子様のトイレトレーニングにぴったり』って書いてあるでしょ。ようやく莉緒もオムツを卒業してこんなお姉ちゃんパンツを穿けるんだから、むしろ喜んでもいいくらいなのよ。ねっ、みんなに自慢しなさいよ。あたしは今日からトイレトレーニングするんだよって」
「ちょ、ちょっと!」
和葉が大きな声で言ったため、すれ違った学校帰りの女子中学生達がクスクスと口に手をあてていった。
「あの娘達も、まさか莉緒が18歳の男の子だなんて思ってもみないでしょうね。だって幼稚園の体操服を着て下はオムツ丸出しなんだもん」
莉緒は下を向いて黙ってしまう。彼としては18歳の男の子だと思われても、幼稚園児の女の子だと思われてもその恥ずかしさに変わりは無かったからだ。
しばらくそのまま歩き続けながら、和葉は突然少し真面目な声で言った。
「ねぇ、お兄ちゃん。そんなに幼稚園に通うのは嫌なの?」
「えっ?」
見上げれば和葉は前を向いて歩いたままだ。その表情は冗談を言っているようには見えない。
「そ、それはもちろんだよ・・・・・・っていうか、いつの間に決定した事になってるんだよ!俺はもう高校も卒業したんだぞ!」
「そうそう。だのにまだお漏らしの赤ちゃんだけどね」
「だ、だからそれは!」
「ううん、いいの。だからね、お兄ちゃんさえよければもう幼稚園は許してあげる。その代わりに別のお願いがあるの」
「別の・・・・・・お願い・・・・・・?」
莉緒は嫌な予感を感じる。確か自分がこんな羽目になった原因も同じような和葉の言葉からだったではないか。
「ううん、正確にいうと私じゃ無くって・・・・・・」
和葉はそう言って立ち止まった。
「どうしたんだよ。家はまだ先だろ。話はまた後でいいからさっさと帰ろうよ」
「違うわ。もうおうちについたのよ」
「はっ?」
和葉の視線の先には二人の家の数倍はあろうかという大きなお屋敷が建っていた。白い西洋風のモダンな建物はメルヘンハウスといったあだ名でもつきそうな可愛い邸宅だ。
「実はね。今朝母さんから連絡があって、任期が延びたんだって。あと一年」
「はぁっ!?お前なんでそんな大事な事俺に!?」
「だって幼稚園児の子供にそんな事言っても仕方無いでしょ。とにかく、今日からここが莉緒のおうちになるの」
「ちょ、ちょっと!わけがわからないよ!」
和葉はそう言いながら門脇のチャイムを押す。門の向こうに備え付けられた監視カメラがピントを定め、玄関の扉が開いた。
「わーい!和葉さん、こんにちは!」
出てきたのは和葉の友人の姉の子供。優子だった。
「あれ、莉緒ちゃん。パンツとスカートはどこに忘れてきたの?」
昼間自分でオムツをあてた事を忘れたかのように、その小悪魔はニヤリと笑った。

「でね、優子ちゃんのお父さんも先月から単身赴任で外国に行ってるんだけど、間の悪い事にお母さんまで入院しちゃったのよ。ううん。入院っていっても実は二人目のお子さんの妊娠が原因でね。少し難産になるってことで大事をとって入院してるだけだから心配ないの。だけどねそれで優子ちゃんもしばらく寂しい思いをするでしょう?」
数分後広い応接室に通された二人は、優子と向き合う形でお茶を飲んでいた。和葉と優子は丁寧にティーポットで入れた上等そうな紅茶。莉緒の前には女児向けアニメャラクターのプリントされたプラスチック製のコップに入れられたミルクが湯気を立てている。
「それで私ママにお願いしたの。パパがいないの我慢するから大きなお人形が欲しいって」
優子はティーカップを優雅な手つきで置くと、まだ幼さの残る声で言った。
(なんだ、こんな風にしててもやっぱりまだお子様なんだな)
莉緒は少しの間自分の姿も忘れてほくそ笑んだ。
「それを聞いていた叔母さん・・・って真琴おねぇちゃんがね。じゃあ私がプレゼントしてあげるよって」
「それは良かったね。でもそれが僕と何の関係があるんだい」
少しでも大人の威厳を保とうと莉緒は虚勢を張った。
「初めはね、おじいちゃんとおばあちゃんがこの家で一緒に暮らしてくれるって言ったんだけど、二人ともまだ現役で働いてるし迷惑がかかると思って」
「偉いわね優子ちゃん」
和葉の言葉に優子はえへへという風に笑う。
「それなら真琴おねぇちゃんが世話を見てくれるっていうの。ママも真琴おねぇちゃんなら中学生とは思えないほどしっかりしてるから安心だって」
(ならいいじゃないか)
莉緒は内心そう思いながらも、嫌な予感が更に強くなっているのを感じていた。
「でさぁ、せっかくだから私もここで真琴と一緒にしばらく暮らそうと思って」
「えぇっ!?」
和葉の思いがけない提案に莉緒は驚いた。
「い、いや、それはいいけど、じゃあ俺は・・・・・・」
「だから言ってるじゃない。今日からここがおうちだって」
「ま、まさか・・・・・・俺も一緒に?・・・・・・」
「もちろんよ。ちょっとしたままごとみたいで楽しいでしょ。もちろんままごとなんかじゃなくって朝から晩まで一日中、いや、ごっこじゃなくって本当に家族になるんだけどね」
「えぇっ!?・・・・・・じゃ、じゃあ・・・・・・俺は・・・・・・さしずめ優子ちゃんの・・・・・・あ、兄役?・・・・・・まさか父親役じゃないよね!?」
少し照れながら莉緒は呟く。今までこんな事をさせたのは一種の照れ隠しだったのか。やっぱりみんな年下の女の子なんだ。大人がいないと寂しいんだな。と彼は勝手に結論を出してしまったのだ。
「・・・・・・えっと・・・・・・莉緒ってば話聞いてた?」
「うん?だから俺が父親役としてここで暮らせばいいんだろ。じゃあもう恥ずかしいから着替えてもいいかな」
「呆れた」
和葉は額に手をやる。優子はただ微笑んでいるだけだ。
「真琴が優子ちゃんにお人形をプレゼントするって言ったでしょ。つまり父親役は真琴だってことなの」
「えっ?じゃ、じゃあ俺は?」
「まだ分からない?莉緒はそのお人形役。ううん、お人形なんかじゃなくって優子ちゃんの可愛くって小さな妹になるの。優子ちゃんだってお人形よりその方がいいでしょ」
「うん、もちろん」
優子は今まで聞いた事の無い子供らしい声で頷いた。
「じょ!じょうだん・・・・・・な、なら・・・・・・お前は・・・・・・和葉はなんの役なんだよ・・・・・・」

顔面蒼白になった莉緒は恐る恐るそう声に出した。
「うん?私は優子ちゃんのママ役に決まってるじゃない。この歳で二人の娘の母親なんて照れるけど、まぁ真琴と一緒なら楽しいかな」
「じゃあよろしくね、赤ちゃんの莉緒」
優子が立ち上がって莉緒の頭を撫でた。

(嘘だろ!?こんな・・・まさか・・・・・・・)
自分が優子の妹として暮らす。あまりにも予想外の状況に莉緒の頭は激しく混乱していた。しかも本当の妹である和葉が母親役をするというのだ。ましてやその和葉の同級生である真琴が父親だという話に至っては莉緒の想像を遙かに超えたファンタジーだった。
「じゃあお家を案内するね」
優子が椅子を引いてすっと立ち上がる。
「ちゃんと莉緒ちゃんのお部屋もあるからね。安心していいよ」
ニコリと笑いかける優子の口の端が、莉緒にはいつか見た時のように悪魔的に見えた。
「ちょ、ちょっと!俺は承諾してな・・・・・・」
莉緒がなんとか自分の意思を示そうと叫びかけたその声は、更に大きな声にかき消された。
「たっだいまぁ。あれ?もうみんなお揃いか?」
リビングの扉を、少し頭を下げるようにして窮屈そうに入ってきたのは身長180センチ近くある真琴だった。
「あら。チャイムもならさずに入ってきたの?真琴ったら相変わらず行儀悪いんだから」
「なんだよ。今日からここは俺の家なんだから当然じゃん。なぁ優子ちゃん」
真琴は和葉の冗談めいた小言など気にせず、中学バスケ部の大きな鞄を脇に放り投げると、テーブルの上のお菓子に手を伸ばした。
「駄目!子供が真似するでしょ!」
その手を和葉がびしっと抓る。
「いてててっ」
「ちゃんと手を洗ってからにしなさい。パパ」
和葉はそう言って真琴を見上げるが、その表情は明らかにこの状況を楽しんでいた。それに合わせるように優子がクスクスと笑いながら言う。
「大丈夫よ、和葉ママ。私は真琴パパみたいにおてんばじゃないから」
「おぉっ!言ってくれるじゃん、優子ってばさ」
もう既に仲の良い家族のように振る舞う三人に、莉緒は益々狼狽するばかりだった。
「それより私はいいけど、この子が真似したら大変でしょ。莉緒はまだ小さいんだからすぐに大人の真似をしたがるのよ」
優子が大人びた表情で言う。その立ち振る舞いは完全に莉緒の姉という立場を意識していた。
「んふふ、優子ちゃ・・・優子もしっかりお姉ちゃんね」
今度は和葉が母親めいた口調で言う。
「そうだったな。そういえば、莉緒も可愛い格好してんじゃん。幼稚園から帰ったところか?」
真琴に言われ、莉緒は自分の服装をようやく思い出す。幼稚園の体操服に下は紙オムツのみ。この格好で外を歩いて来たとはいえ、いくら真琴は見た目が青年男子風だとはいえ、三人の年下の女の子達に18歳の自分が幼児めいた服装をしているのを見られているのだ。
「い、いや!これは!その・・・・・・」
「うん。この子ったら幼稚園でもお漏らししちゃったみたいで」
「ち、違うの!それは!・・・・・・」
否定したい一心で、つい莉緒は真琴に向かって本当の娘のような言い方をしてしまった。優子が口を押さえて笑いを堪える。和葉もおかしそうに真っ赤になった莉緒を見ている。
(くっ、くそぅっ・・・・・・笑いたければ笑えばいいよ。俺はこんな生活拒否してやるからな)
二人よりも男性的な真琴はきっと爆笑するに違いない。いや、年下なのにこんな姿の自分を軽蔑して冷笑するだけかもしれない。莉緒がぎゅっと手を握ったその時、真琴は意外な言葉を口にした。
「いいんだよ。莉緒はまだちっちゃな赤ちゃんなんだから」
声変わりしていないかのような莉緒よりも、ずっと落ち着いた低い声で真琴はそう言った。
(あ、あれ?・・・・・・)
「二人とも、笑ったら莉緒が可哀想だろ。これから莉緒は俺たちが守ってやらないといけないのに」
(な、なんだろこの感覚・・・・・・懐かしくて暖かい・・・・・・)
「あれ?莉緒ちゃん泣いちゃったの?」
優子の言葉に、莉緒は自分の頬に涙が一滴流れるのに初めて気がついた。
「ひょっとしてオムツが濡れてるのかな?」
「ば、馬鹿!まだ大丈夫だよ!」
「あははは!『まだ』だって!」
「じゃ、じゃなくって。僕はもう大人だからお漏らしなんてしないから!」
「あら『俺』じゃなくって『僕』になったの?いい子だけど、女の子が『僕』なんておかしいわよ」
「だ、だから!僕は・・・・・・自分はこんな、ままごとみたいな生活は・・・・・・」
莉緒が下を向きながらようやく自分の気持ちを口にしようとしたその時、再び真琴の低くて暖かい声が響いた。
「そうだぞ莉緒。今はいいけど幼稚園や将来小学校に通うようになったら女の子なのに『僕』なんて言ってたらお友だちにいじめられるんだぞ。莉緒はとっても可愛い女の子なんだから『あたし』か『莉緒』っていうのが似合ってるよ」
「そ、そんな・・・・・・僕は・・・・・・」
「莉緒っ!」
「は、はいっ!」
真琴の少し厳しくなった声は何故か莉緒の背筋を伸ばさせた。
「言えるよね。『自分は女の子です』って」
「で、でも・・・・・・」
「莉緒、パパの言うことをききなさい」
和葉が同調するように言う。
「『莉緒はひよこ幼稚園に通う女の子です』。ほら言ってごらんなさい」
「そ、そんな・・・・・・」
「あれ?莉緒は自己紹介もできない本当の赤ちゃんなのかな?いいわ、なら明日から幼稚園に行かなくてもいいからずっとベビーベッドに寝ていられる赤ちゃんにしてあげる。もちろんお外に出る時はベビーバギーに乗せてあげるからね。可愛い赤ちゃんの莉緒をみんなに見てもらえるね」
「だ、だめ!そんなの駄目!」
今でも十分に恥ずかしいのにこれ以上幼児扱いされては敵わない。なにしろこの三人なら本当にしかねないのだ。
「い、いうから・・・・・・」
莉緒は唇を噛みしめてオムツの裾のフリルをぎゅっと握りしめた。
「り、莉緒は・・・・・・ひ、ひよこよ・・・ようち・・・幼稚園にかよう・・・お、お・・・・・おんな・・・・・女の子・・・・・・です・・・・・・」
そう言い終わり、耳まで真っ赤になった莉緒を大きな手が背中から抱きしめた。
「ひやぁっ!!」
気がつけば莉緒は空中に浮いていた。真琴が彼の脇の下に手を入れて軽々と持ち上げたのだ。
「偉いぞ莉緒。それでこそパパの可愛い娘だ」
「だってママの可愛い娘だもん」
「さすが私の可愛い妹ね」
「い、いいから!下ろしてよぉっ!」
三人が自分を褒める声を聞きながら、莉緒は必死にオムツから出た脚を本当の赤ん坊のようにじたばたさせるしか無かった。

結局この生活を拒否する機会を逃し、三人に押し切られるかのように莉緒は末娘という立場を受け入れざるを得なくなってしまった。
それはもちろん莉緒の状況に流されてしまう性格によるところが大きく、また激しく抵抗すれば例の優子との恥ずかしい写真や、今日の幼稚園での出来事などで脅迫される事は彼にも分かっていたからだ。
だがそれ以上に、そのささやかな抵抗さえ出来なかった理由に彼はまだ気がついていなかった。ましてやそれが彼を今以上に辱めていく事に、この時の莉緒は無自覚だった。


「・・・・・・ねぇ、いつまでこんなの続けるんだよ」
リビングでの『家族』の会話が30分も続いた頃、莉緒はしびれを切らしたようにくぐもった声を漏らした。話の内容は優子の小学校で起こった出来事、今日の夕飯のメニューについて、真琴のバスケット自慢などだったが、唯一の男の子である莉緒にとってはまるで女子会の中で一人ぽつんとしている気分だったのだ。
「ごめんね、莉緒にはまだ大人の話は退屈だったよね」
「そ、そんなじゃ」
優子に言われて莉緒は慌てて否定する。だが皆は徹底的に莉緒を幼児扱いするつもりだった。
「そうそう。莉緒の為にDVD用意しといたのよ。一緒に見るでしょ?」
和葉は立ち上がると、我が家でもあるかのようにテレビボードの引出から一枚のビデオソフトを取り出した。
「ほら、これ。『ママといつでもいっしょ』のDVDだよ。莉緒、この番組好きだもんね」
パッケージには可愛い着ぐるみと、にこやかに笑った小学校一年生くらいの女の子がプリントされている。女の子はまるで魔法少女のようなカラフルな衣裳を着ていた。
「さっ、こっち来て一緒にみようか」
優子がお姉さん面をして莉緒の手を引く。
「ちょ、ちょっと・・・・・・」
和葉がディスクをデッキに入れると、すぐに大きなテレビにポップな題字が映り、スピーカーが軽やかなメロディーを奏で出す。
「テレビの前のみんな、今日もママと一緒に見てくれてるかなぁ?」
画面の中で女の子が莉緒に笑いかける。不意に彼は遙か遠くの懐かしい記憶を喚起させられた。
(そ、そうだ・・・・・・)
かなりの長寿番組である『ママといつでもいっしょ』は莉緒が本当に幼児だった時から幼稚園前の子供には定番の人気番組だった。まだ母親が忙しくなく、和葉が生まれていないかもしれなかったその頃、自分は母親と一緒にいつもこの番組を見ていたのではないか。
(母さん、どうしてるのかなぁ・・・・・・)
莉緒がそんな懐かしさに捕らわれた時、和葉が現実を呼び起こした。
「ほら、お姉さんに答えないと駄目でしょ。ママと一緒に見てるよぉって言ってみなさい」
「で、でも・・・・・・」
隣では優子はにやにやと二人のやりとりを見ている。
「さっき、優子ちゃんの妹になるって言ったばかりでしょ。それともいつかみたいにせっかんされたいの?」
紙オムツの上からお尻を触られ、莉緒はドキリとした。
「あ、あぁっ・・・・・・」
莉緒の頭に数ヶ月前の出来事が昨日のことのように思い浮かぶ。真琴の前でアリスドレスを着せられてお尻を叩かれたあの日の事が・・・・・・
「お、お前、もしかして・・・・・・」
もしかしてあの頃から、こんな風にするって企んでたのか。という言葉を莉緒は寸前で飲み込んだ。もし「うん」と言われた時、自分はもう立ち直れなくなると思ったからだ。
「どうしたの?言えるよね、莉緒は賢くていい娘だもんね」
物理的な恐怖と精神的な恐れの両方に駆られ、莉緒は仕方無く口にするしか無かった。
「う、うん・・・・・・マ・・・ママと、一緒に見てるよ・・・お、お姉ちゃん・・・・・・」
優子だけでなく、テレビの中の小一くらいの女の子にまでお姉ちゃんと呼ばされる屈辱に莉緒はぎゅっと唇を噛む。
「ほら、莉緒もこのおうた知ってるでしょ?歌えるよね?」
「ねぇ、たっちしてお姉さんと一緒におゆうぎしてみようか」
番組は着ぐるみの寸劇から歌のコーナー、招待された一般の幼児達がお姉さんと踊るコーナーと変わっていった。
「脚を広げて、おててをまわしまーす」
テレビの中では、女の子に合わせて幼児達が必死に同じ動きをしようとしている。みんな母親におめかしされて、可愛いドレスやタキシード風の可愛い洋服を着ているのが可愛らしかった。
「はーい、莉緒ちゃんもお上手ねぇ」
優子が莉緒の手を持つと、女の子と同じような振り付けをさせる。まるで出演している幼児達と同じ扱いをされているようで莉緒は恥ずかしくて堪らない。
「や、やめてよ、僕・・・も、もう・・・・・・」
もう大人、とはとても言えなかった。だがこのままされるようになっているのも癪だ。莉緒はやっとの思いで不満を口にした。
「あ、あたし・・・もう・・・よ、幼稚・・・幼稚園だもん・・・・・・」
自分でも言っていて恥ずかしかったが、テレビの中の幼児達は皆2歳から3歳くらいの年齢だ。莉緒としては精一杯の意思表示をしたつもりだった。
「ふーん、そうかなぁ?」
だが優子は彼の顔を覗き込みながら不思議そうな顔をして言った。
「う、うん・・・・・・」
そう言いながらも恥ずかしさに俯く莉緒を見つめる優子の視線が少しづつ下がっていく。
「でも、テレビの中のお兄ちゃんとお姉ちゃんはみんな、パンツだよねぇ。まだオムツの莉緒があの子達よりもお姉ちゃんなの?」
たちまち莉緒の顔は真っ赤になった。
「これ優子!莉緒をいじめちゃいけません」
和葉がまるで母親の様に言う。
「だって、莉緒がお姉ちゃんの振りするから面白くって」
「オムツしてても莉緒はもう幼稚遠に通ってるのよ、莉緒だってオムツが取れないのを気にしてるんだから、からかわないであげなさい」
まるで本当に幼稚園に通うのにオムツの取れない妹をからかう姉を諭している母親のような口調だった。
(ぼ、ぼく・・・この子たちよりもちっちゃい子供なの?!)
他愛の無い家族ごっこと思いながらも、二人から徹底的にオムツの取れない幼児扱いをされ続けた莉緒の心は段々と理性と正気を失っていく。
「ぼ、ぼく、大丈夫だもん。もうオムツなんていらないもん!」
莉緒がそう叫んだ瞬間だった。
「あ、あれ!?うそっ!?」
突然わき上がった強烈な尿意が、彼に今の立場さえも忘れさせていく。
「や、やだっ!こんなのうそだよぉっ!」
莉緒の小さなペニスの先から、包皮を少し膨らませたあとにおしっこが流れ出していく。その時を待ってたかのように、一瞬静かになったテレビの間隙を突いて部屋中にジョロジョロという音が響きわたった。
「み、見ないでっ!お、おしっこ止まって!止まってよぉっ!」
太ももを内側に擦りつけ必死にもがく莉緒だったが、一度流れ出したおしっこは止まる筈も無かった。
「うわぁ、いっぱいでてるねぇ」
たちまちオムツは膨らんで股下を垂れ下がらせ、股間の『お漏らしうさぎさんマーク』を薄くさせていく。
「あらあら、本当にオムツ使っちゃったのね」
ようやく莉緒の尿意が消えかけた頃、彼は両目に涙を浮かべていた。もう股間にはうさぎさんはいなかった。
「いいのよ、莉緒はまだ幼稚園なんだから。その為にオムツ穿いてるんでしょ?」
「ごめんね、私が意地悪言ったから漏らしちゃったんだよね。莉緒はまだ小さい私の妹なんだから、オムツでも恥ずかしくないんだよ。ねっ、もうちょっと大きくなったら、みんなみたいにパンツのお姉ちゃんになって、一人でトイレも行けるよ。それまで私とママと頑張ってトイレトレーニングしようね」
本当の姉のように優しく言う優子の声は、その時の莉緒にはもう演技には見えなかった。
「うわーん、ママぁ!おねぇちゃ〜ん!りお、おもらししちゃったよぉっ!」
莉緒の両目に溜まった涙が堰を切ったように頬に流れ出す。それは二人の言葉を演技だと思ってしまえば自我が崩壊してしまうという、莉緒の本能が取らせた無意識の衝動だった。
「うんうん、いいのよもう泣かないで」
だが、二人の腕に抱かれながら莉緒は恥ずかしさと共に、もう何年も忘れかけていた安心感という媚薬をそっと思いだし始めていた。


「ここが莉緒ちゃんのお部屋よ」
濡れた紙オムツのまま莉緒が案内されたのはリビングのすぐ隣にある部屋だった。
「さ、先にトイレに・・・」
足をモジモジとさせながら恥ずかしそうに言う莉緒に優子が優しく言う。
「トイレ?トイレなんてまだ莉緒ちゃんには早いでしょ。その為にオムツしてるんだから」
「で、でも・・・濡れた・・・そ、その・・・オムツは・・・」
莉緒にしてみればすぐにでもその恥ずかしい下着を脱いでしまいたかった。年齢相応の尿を吸い取った幼児用のオムツは、すっかりと股の部分を吸収剤で大きく膨れあがらせて今にもずり落ちそうなのだ。
「赤ちゃんはそんな事気にしなくていいのよ。さっ、部屋に入ってみて。莉緒ちゃん気に入ってくれるかしら?」
そこまで言われて莉緒はようやく気がついた。目の前の部屋のドアには『りおのおへや』と書かれた、子供ドレスを象った可愛らしいプレートが掛けられていたのだ。
「ぼ、僕の・・・部屋・・・?」
訝しげに首をかしげる莉緒の背中を押しながら和葉がドアを開ける。
「そう、莉緒の新しいお部屋よ」
「えっ!?」
部屋の中を一目見て莉緒は驚きの声を上げた。
6畳ほどの洋室はピンクを基調としたパステルカラーの家具で彩られ、中央には大きなベビーベッドが置かれている。
ベッドの頭の方角、部屋の入り口近くには学習机。それも中高生が使うようなシンプルな物ではなく、明らかに新小学一年生用に販売されているようなファンシーなデザインだ。ベッドと学習机には同じ柄の可愛らしいカーペットが敷かれており、その脇には子供用の小さなチェストとハンガー付きの棚が添えてあった。
「どう?」
「ど、どうって?」
「何よ、折角莉緒の為に優子ちゃんと私でコーディネートしたのよ。もうちょっと感激してくれてもいいでしょ」
何が何か分からず戸惑うばかりの莉緒に対し、和葉が部屋を案内する。
「まずこれが学習机ね。一通りの小学一年生用の教科書と教材は揃えておいたから。それから鉛筆や消しゴムとか文房具も莉緒の気に入りそうな女の子向けキャラクターので統一しといたのよ」
和葉は引出から女児向けキャラクターの大きくプリントされた筆箱を取り出す。
「もう少し大きくなったら莉緒はここでお勉強をするのよ。もちろん小学生の女の子としてね。ほら、ちゃんとこれも用意してあるんだからね」
和葉は机の横に掛けられた赤いランドセルを持ち上げると机の上に置いた。
「莉緒がこれを背負って小学校に通う姿を見るのが楽しみだわ。我が子をここまで育てたんだって実感で泣きそうになっちゃうかも」
「ちょ、ちょっと・・・」
いくらなんでもやりすぎだ。あくまで家族ごっこだと考えていた莉緒は先ほどまでの陶酔感が一気に覚めていくのを感じていた。
「ほら、もう小学校の制服も用意してあるのよ」
和葉はハンガーに掛けられた一着の洋服を手に取る。それは莉緒もよく見る近所にある私立小学校の女児制服だった。小中一貫式のその学校の制服はクリーム色を基調とした上品なセーラー服だ。中学生用のものはシンプルな上着と一般的な紺色のスカートだが、小学生用のものは吊りスカートに前開きのセーラー上着になっている。リボンも中学生用が大人っぽいエンジ色なのに対して、小学生用は大きめのリボンタイになっている。そして和葉が持っている上着のリボンの色は低学年を表す鮮やかなピンク色のものだった。
「まだこれに袖を通すのは早いけど、幼稚園を卒園したら頑張ってここの小学校に入ろうね。そのためには、ひよこ幼稚園でもいい園児でいなくちゃ駄目よ」
見ればハンガーには既に幼稚園の制服が掛けられている。和葉は園の鞄をチェストの上に置いて一息ついた。
「それからここには普段着が入ってるから」
和葉がチェストを下の段から順に開け、次々に衣類を取り出して莉緒に見せていく。プリーツのミニスカートから、たっぷりとフレアーのついたバレエのチュチュのようなスカート。リンゴのアップリケが可愛い胸当てのついた赤いジャンパースカートの丈は膝上どころか股下すぐくらいしかなさそうだ。
「今風っぽく、こんなのも揃えたからね」
裾がフリルになっているショートパンツや大きなリボンの描かれたTシャツ、大人びているがどこか可愛らしい肩掛けバッグなどを和葉が楽しそうに並べて見せる。
「それからもちろん、女の子らしいのもたっぷりあるから安心してね」
襟にたっぷりとフリルのついたブラウス、三段にもなった水色のお嬢様風スカート、真っ白のサンドレスに大きなエプロンがついたミニドレス、ピアノの発表会でしか使えないようなお姫様ドレスに裾にスカートがついた幼児用の水着まで、そのどれもが小学一年生の女の子さえ子供っぽいと恥ずかしがりそうなデザインのものだった。
「最後にここが下着ね」
お臍まで隠れそうな真っ白なグンゼのパンツは小さなリボンと控えめなレースが可愛らしい。ちょっとおしゃまな女の子が好きそうなリボン柄やハートの総柄のパンツもあるが、莉緒がひときわ顔を赤くしたのは前面に女児向けアニメキャラクターが大きくプリントされている女児パンツだった。
今風のタンクトップ型上着に昔ながらのレースのついたスリップ、ほとんどカップの無いファーストブラまで用意してあったのには驚いた。
「でもさっきまでの様子を見てると、莉緒はまだ幼稚園でも早かったみたいね」
だが一通り衣類を説明し終えた和葉はトーンを落とした。
「えっ?・・・」
「やっぱり莉緒は赤ちゃんからやり直す方がいいみたい。ねっ、優子ちゃん」
「うんそうだね。ちょっと残念だけど、ゆっくりと時間を掛けて可愛らしい女の子にするのも面白いかも」
「ま、待って!」
たまらず莉緒が叫ぶ。濡れたオムツのままでは格好が付かないことを意識しつつ彼は泣きそうな声で二人に言った。
「ど、どういう事だよ。ここが僕の部屋だとか、小学生とか、赤ちゃんだとか。さっぱり分からないよ!」
「分からなくても当然だよ、だって莉緒はまだ赤ちゃんなんだもん」
和葉はそれでもゆっくりと話し出す。
「莉緒は今日からここで暮らすって言ったでしょ。それで莉緒はもう一度赤ちゃんからここで人生をやり直すの。小さな女の子としてね」
「そ、そんな・・・勝手に・・・」
「私ね、お兄ちゃんを見ててずっと思ってたんだ。私より小さくて弱くって可愛らしいお兄ちゃんはきっと間違って男の子に生まれてきたんだって。ママがいなくなってからは尚更その思いが強くなって、お兄ちゃんを女の子に生まれ変わらせるのは私の役目だって感じるようになったの」
「な、なにを・・・なにを言ってるんだよ・・・」
「そんな悩みを真琴に話したらね、すっかりと彼女も同意見になってくれちゃって・・・その思いが確信に変わったのが数ヶ月前の事なの」
「あん時は驚いたな。絶対こいつは女の子だって思ったもん」
いつの間にか真琴が部屋の入り口に手を掛けて立っていた。
「そこからは、驚くほど順調に話が進んだの。真琴の姪に優子ちゃんっていう妹をほしがっている女の子がいること、彼女の家がもうすぐ彼女一人になることや、彼女のおばあさんが幼稚園の園長をしていることとか、もう私達にそうしろというみたいに」
そんなにまで計画された事だったのかと莉緒は愕然とした。だがこの状況を受け入れてしまうにはまだ莉緒にはプライドが残っていた。
「ち、違う!僕は男の子だよ!和葉のお兄ちゃんだよ!」
「そうかしら?」
和葉は莉緒を部屋の隅にある姿見の前に連れて行く。
「自分の姿見てみて、これが本当に男の子?もう高校も卒業した私の兄だっていうの?」
「そ、それは・・・」
とても正視していられずに莉緒は目を逸らす。
「もういい加減に認めちゃいなさい。自分は可愛い女の子だって・・・」
「お、女の子・・・僕が・・・」
「そう、それも、とっても小さな、まだ赤ん坊のね・・・」
和葉はそう言って莉緒の体操服を脱がす。
「だ、駄目!」
「まぁ、上着を脱ぐのが恥ずかしいなんてやっぱり女の子じゃない」
そう言われれば、莉緒は顔を赤らめて抵抗する事も出来ない。
「ほら、脱ぎ脱ぎしましょうねぇ」
言いくるめられ、鏡の前で突っ立っているしか出来ない莉緒の背後から、今度は太くて長い手が伸びた。
「そろそろお昼寝の時間だね。さぁ、ベッドに行こうか」
「うわぁぁっ!」
足をばたばたさせる莉緒を軽々と持ち上げると、真琴が彼の身体をベビーベッドに横たわらせてしまう。ベッドは莉緒には少し小さかったが、それでも彼の身体はその中に完全に収まってしまう。逆に少し小さいが故に身動きが取れない事に莉緒は気付いた。
「じゃあ、新しいお洋服を着ましょうねぇ」
和葉がチェストの引出からベビー服を取り出すと莉緒の頭から被せる。フリルとリボンに立体のうさぎのアップリケがついた愛らしい幼児用の上着だ。
「はーい、濡れたおむちゅも替えましょうねぇ」
なすがままの莉緒の足下に今度は優子が手を掛けた。
「ま、待って!」
叫んだ莉緒だったが、優子はそのまま莉緒のオムツのテープを外してしまう。
「あらあら、いっぱい出まちたねぇ」
クスクスと笑い声が聞こえ、莉緒はもう目を開けているのさえ辛くなってしまった。
「うん、いい子ね。すぐにおむちゅ替えてあげるから大人しくしてるのよ」
もうこれ以上抵抗しても筈の上塗りになるだけだ。莉緒は仕方なく強く目を閉じて恥辱の瞬間の過ぎるのを待つしか無かった。
「はーい、きれいきれいにしましょうねぇ。相変わらず可愛いおちんちんね。まぁ赤ちゃんなんだから皮が剥けてるのも変だけど」
だが優子はいちいち解説しながら莉緒の包茎ペニスを弄ぶ。
「シッカロールも塗っておかないとオムツかぶれになっちゃうからね〜」
お尻にパタパタとパウダーをまぶす心地よい感触がする。優子の手は背中側から段々と股の間を通り莉緒の秘所に近づいてきた。
「やっ・・・」
ペニスにパフが当たり、莉緒の口から思わずそんな声が漏れる。優子は意地悪そうに口を緩めた。
「莉緒ちゃんは女の子なのにここが気持ちいいのね」
目を閉じたまま頬を赤める莉緒を見ながら、優子は更に莉緒のペニスをパフでぱたぱたと叩く。
「い、いやぁぁっ・・・」
「んふふ、莉緒の赤ちゃんおちんちん、少し大きくなってきたわよ。ベビーパウダーでおっきくさせるなんて莉緒ちゃんはホントにエッチな赤ちゃんでちゅねぇ」
「や、やめてっ・・・そんなにされたら・・・」
莉緒のペニスは益々大きくなる。優子はしばらくパフの上からその先っぽを弄んでいたが、突如やめてしまった。
「えっ・・・」
「なによ残念そうな顔して。ひょっとして莉緒ちゃんったら、赤ん坊の癖にしゃせーするつもりだったの?」
「う、ううん・・・そんな・・・」
莉緒はもじもじと足をくねらせた。射精寸前だったペニスは欲望の行き先を失ってしまっていたのだ。
「残念でした、莉緒は女の子の赤ちゃんなんだからね。これからもそんな事一生出来ないと思っていなさい」
厳しくそう言うと優子は彼の両足を持ち上げた。
「ほら私莉緒ちゃんの足くらいなら簡単に持ち上げられるんだよ。こんな風に十分に莉緒ちゃんのお姉さんになれるから安心してね」
そう言われても莉緒はただ恥ずかしいばかりだ。
「う、うん・・・いいから・・・早く・・・」
「早く?」
「は、早く・・・して・・・オムツをしてよぉっ!」
欲望を下半身に閉じ込め、いつまでも年下の少女に性器を晒している恥辱から逃れようと莉緒が叫んだ。
「はいはい、莉緒は本当にオムツが好きなのね」
優子は笑みを浮かべて莉緒のお尻の下にオムツを敷き込んだ。
(あれっ・・・)
だが莉緒はその時、先ほどと異なる感触に気がついた。幼稚園であてられた紙オムツの感覚とは明らかに異なるその肌触りに、彼は思わず上半身を起こした。
「な、なに・・・それ・・・」
莉緒のお尻の下には、薄水色のひよこ柄の柔らかい布地が幾数枚も敷かれてた。背中の下から股下まで縦に数枚、同じく背中から腰のほうにも横に数枚が置かれていた。そしてその下には内側がビニールみたいな生地でできた大きなパンツを開いたようなものがさらに引かれている。
「あぁ、これ?オムツカバーっていうのよ、莉緒ちゃんはまだ小さいから知らないよね」
そんな事は無い。莉緒だって紙オムツの無い時代にはオムツカバーに布オムツが使われていたことくらい知っている。だが何故自分が今それをされているのかは皆目分からなかった。それを察したかのように優子が話す。
「だって、これから莉緒はずっと赤ちゃんとしてここで暮らすのよ。それなのにいつも使い捨ての紙オムツじゃもったいないでしょ」
「で、でも・・・」
「それに、吸水性が良くってお漏らしした事が赤ちゃんに感じられない紙オムツは、オムツ離れも遅いって言われてるの。莉緒はそんなにずっとオムツしてたいの?」
そう言われれば莉緒には返す言葉も無かった。もとより今の彼には選択する権利など無かったのだ。
「じゃあ大人しく布オムツしようね。実はねこのオムツは私のお下がりなのよ」
「えぇっ!?」
優子は余っているオムツを一枚手にとって莉緒の目の前に持って行った。恐る恐る目を開けた莉緒の目に、『はなぐみ ゆうこ』の文字が飛び込んで来た。
「保育園じゃ布オムツに名前を書かないといけなかったんだって。どう?私のお古のオムツをあててもらえて嬉しい?」
目の前のいくつも年下の小学生の女の子のお古のオムツをされている。そう思うだけで莉緒は顔から火が出るようだった。その反応を見て優子はこれ以上ないくらい満足そうにした。
「じゃあ、オムツカバーしましょうね。きっと紙オムツより気持ちいいわよ」
実際のところ、経済的に良いとか、オムツ離れが早いなどというのは優子の嘘だった。現在では汚れたオムツを洗濯するコストや濡れた感じが分かる紙オムツなどの登場により、双方ともその効果は否定される事も多いのだ。
それでも莉緒が布オムツをあてられた理由は只一つ、優子を中心として和葉も真琴も、優子のお古のオムツをあてられて恥辱に悶える莉緒の様子が見たかった。ただそれだけだったのだ。
「大事なところかくしまちゅよー」
優子がゆっくりと布オムツを莉緒の股間にあてていく。殊更優しくされるほど先ほどかき消した筈の欲望で莉緒はペニスをぴくぴくとさせてしまう。
優子は横からもオムツを廻しあて、今度はオムツカバーを少しきつめにあてていく。マジックタイプで留めるタイプの前当てを何度か調整する度に特有の音が部屋に大きく響き、莉緒に自分が赤ん坊のようにオムツカバーをあてられているのだという自覚を促させる。
「はい、できた」
気がつけば莉緒は下半身をこれまで感じた事のないような圧迫感に包まれていた。オムツカバーには可愛らしい小熊のアップリケが施され、莉緒が小さな女の赤ちゃんとして扱われている事をいやが上にも自覚させる。
「いい子でオムツできまちたねぇ。もう安心していいでちゅよぉ」
優子がガラガラを手に持って莉緒をあやし始める。
「ほぉら、もうおねむのじかんでちゅねぇ」
続いて優子がスイッチを入れると莉緒の頭上でベッドメリーが回り始める。
(ば、ばかにしてぇ・・・)
もう少し我慢したらすぐにでも逃げ出してこんな服脱いでやる。最初はそのように思っていた莉緒だったが、眠ったふりをしている内に彼を睡魔が襲っていく。
「んふふ、いい子でおねむしそうね」
「無理ないわよ、今日一日いろんな事があったから」
和葉の無責任な声が頭上から響く。
「本当に赤ちゃんみたい」
優子の声が段々と遠くになってきた
「ち、ちがう・・・ぼくは・・・ぼくは・・・」
もうその声は莉緒の口からは出ていなかった。
(僕は本当にもう高校を卒業した男の子なの・・・?)
そのうち、あんなに違和感のあった布オムツとオムツカバーの違和感が段々と心地よい感触に思えてくる。
(あぁなんだか懐かしいや・・・母さんに抱かれているみたい・・・)
莉緒はそうやって、赤ん坊として初めての眠りについたのだった。