18歳の女子児童5
第19章 2日目の朝
虹歩は思わず頭からシーツを被ってまだ寝ている振りをした。子供っぽい行動だが、虹歩としては他にこの場から逃げる方法が思いつかなかった。
「ん、どうした?まだ寝てるのか・・・・起きないと遅刻するぞっ。」
言うがはやいか、律月は虹歩の体重なんてまるで無いかの様に強引にシーツを引きはがした。虹歩は半回転してベッドに俯せになってしまう。
「どうだった久しぶりのオムツの感触は?気にいったなら学校にもあてて行くか?」
「あ・・・あの・・・」
虹歩が絞った様な声を出した。
「あの・・・律月・・・お兄ちゃん・・・・オムツは・・・その・・・自分で外すから・・・」
「どうした?『お兄ちゃん』だなんて、今日は嫌に素直じゃないか?・・・でも、だめだ。虹歩のオムツ係はお兄ちゃんなんだからな。」
律月は虹歩のパジャマの上着を捲ってオムツを手のひらでポンポンと叩いた。オムツの上からでもしっとりと伝わる感触に律月はさすがに驚いた。
「虹歩・・・お前まさか・・・・。」
それは律月にとっても驚きだった。いくら小学生扱いされ、面白半分にオムツをあてられているとはいえ虹歩は18歳の高校生なのだ。
「オムツ・・・使っちゃたのか?」
虹歩は観念したように、律月に目を合わさない様にしてこくりと頷いた。
「よし、気持ち悪かっただろう。今、濡れたオムツを外してやるからな。」
律月は虹歩の体を仰向けにすると、オムツの前当てを外し始めた。テープの剥がれる音が虹歩の羞恥心をかき立てるが、不思議と抵抗する気は起こらなかった。
「あーあ、びっしょりだよ、虹歩」
律月の言うとおり虹歩のオムツは一晩分のおしっこで黄色く染まっていた。本来は濡らしてしまっても表面はサラサラな様にされている乳幼児用の紙オムツだが、理音の指示であてていた一枚の布オムツの為に、虹歩は股間までびっしょりと濡れていた。
「気持ち悪かっただろ?今拭いてやるからな。」
律月は風呂場からお湯で濡らしたタオルを持ってきて虹歩の股間を拭いてやる。それは、小学生にもなってオネショのなおらない妹と優しい兄そのものの光景だった。しかし、律月の中に眠るサディスティックな血は、優しい兄を演じているのに不満だった。
「しかし、恥ずかしい奴だなあ、本当にオネショしちゃうとは思わなかったよ。約束通り、今日からずっとオムツだな。」
「そ・・・そんな・・・。」
放心状態でおとなしくオムツを外されていた虹歩も、我に帰って急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「約束は約束よ。」
いつのまにやってきたのか理音がきっぱりとした口調で二人に割って入った。
「さて、どうしたものかしら?ベッドが濡れなくて済んだのはよかったけど・・・。」
「そりゃ、お仕置きしかないんじゃない?オネショのお仕置きっていったら、お尻叩きって決まってるよね。」
律月がいかにも楽しそうに答える。
「お・・・おしりだけは許して・・・」
虹歩は震えた。今までの経験で理音のお尻叩きがいかに辛いモノか身に染みているし、お尻には今も例のモノが入っているのだ。
「うん、それも考えたんだけどね・・・・ねえ、律月君。生まれたばかりの赤ちゃんがお漏らししたらお仕置きする?」
「ううん?それは仕方ないよ。まだ小さいもの。」
「そうね・・・。今の虹歩ちゃんも同じだと思うの。これだけ恥ずかしい目にあっても、オムツを使っちゃうなんて本当の赤ちゃんと同じだわ・・・そんな虹歩ちゃんのお尻を叩いても、赤ちゃんと同じでどうしてお尻叩かれているのかわからないんじゃないかな?」
あまりの言いぐさに反論したい虹歩だったが、まさかお尻を叩いて下さいというわけにもいかず、だまって顔を赤らめているしかなかった。
「でね、考えんだけど、虹歩ちゃんには本当の赤ちゃんがオムツ離れする時みたいなトレーニングが必要なんじゃないかな?」
不安になった虹歩が思わず口を開いた。
「ど・・・どういう事?」
「・・・そうね。虹歩ちゃんに、オムツをあてているのは赤ちゃんだけなのよ。お兄ちゃんお姉ちゃんはトイレでおしっこをするのよ。いつまでもオムツをあてているのは恥ずかしい事なのよ。って理解させてあげる事かな。」
「そ、そんなの・・・当たり前だよ!」
「そうかしら?本当は18歳にもなる癖にオムツを濡らしてしまう様な子が大きな口をきかないの。」
「で、どうするの理音さん?」
理音と虹歩の会話を聞き、S心に火が付いた律月がたまらず理音に尋ねた。
「うん。虹歩ちゃんには『小学生にもなってオムツをあてているのは恥ずかしい事なのよ』って事を理解してもらう為に、今日から家では赤ちゃんとして扱います。」
「そ、それって・・・・どういう・・・」
「それは、帰ってきてからのお楽しみね。」
理音はいつもの笑みを浮かべる。
「さあ、そろそろ学校行く用意しなさい。今日から授業が始まるんだから遅刻するわけにいかないでしょ。早く制服に着替えなさい。まさか、学校にオムツしていく訳にもいかないでしょ。」
理音に捲し立てられ、虹歩は不安ながらも学校に行く支度をする。今日から通常の授業が始まるため教科書やノートは昨日のうちにランドセルに詰めてある。まだまだ着慣れない制服に袖を通し、昨日とは違いずっしりと重いランドセルを背負う。昨日は始業式だけだったので、ある意味虹歩にとっての小学生生活は今日から始まるのだ。
「はい、今日からはこれも忘れないようにね。」
理音が布製の小さな鞄と大きな鞄を手渡す。どちらも可愛らしいプリントの、いかにも小学生女児の持つような鞄だ。虹歩は大きい方の鞄の見て首を傾げた。
「こっちの小さい方は給食用のだよね・・・。こっちの大きい方のは?」
理音はため息をつく。
「あらあら、やっぱり忘れてたのね。今日は体育の授業があるでしょ。」
虹歩はドキリとする。
「じゃあ、これって・・・。」
「そう。体操着よ。」
「あっ!」
虹歩は忘れていた、いや、無意識的に忘れようとしていたのかもしれないが、当然桃鳳学園初等部には体育の授業もある。そもそも、虹歩が女児として桃鳳に通う事になったのも運動能力に問題があったからなのだ。
「虹歩ちゃんが拒むから試着はしてないけど、ぴったりだと思うわ。ゼッケンもちゃんと付けといたからね。」
虹歩は制服を買うときに体操着の試着を断ったのを思い出した。
『制服だけでも死ぬほど恥ずかしいのに・・・。』
「ピン・ポーン」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「あら、こんな朝早く珍しいわね。」
数秒後、玄関へ向かった理音から虹歩を呼ぶ声がした。
「虹歩ちゃん。お友達が来てくれてるわよ、早く用意なさい。」
玄関の前に立っていたのは梨愛だった。
第20章 初めてのラッシュ
「虹歩ちゃん、おはよ。一緒に学校行こ。」
天使の微笑みで梨愛が笑う。
「あら、もうお友達ができたのね。」
理音が虹歩にそっと耳打ちする。
「可愛い子じゃない。虹歩ちゃんも隅に置けないわね。」
虹歩は顔を赤らめた。
「そっ、そんなんじゃないよ!」
梨愛はそのやりとりを見て、可愛らしいが、しっかりとした声で言う。
「虹歩ちゃんと同じクラスの白川梨愛です。お家が近いので一緒に学校に行こうと思って伺いました。」
「梨愛ちゃんっていうの?しっかりしてるのね。虹歩って赤ちゃんみたいなとこがあるから学校でもお姉さん代わりになってくれたら助かるわ。」
「赤ちゃんだなんて・・・」
虹歩が不満げにつぶやく。
「あら、そう?今朝の自分を思い出してみる?」
理音が意地悪く虹歩の顔を覗き込む。
「い、行ってきます!」
まさか梨愛におねしょの事をばらされてはたまらない。虹歩は慌てて家を飛び出した。
「ちょっと・・・僕も一緒に行くよ。」
気がつくと玄関には制服姿の律月が立っていた。
慣れるどころか、少し冷静に自分の格好を考えられる分恥ずかしさは増していた。ましてや、昨日とは違い今日はラッシュ時の電車に乗らないといけないのだ。左手は梨愛と、右手は律月と手を繋ぎ虹歩は朝の道を駅へと歩いた。
「いいなあ虹歩ちゃん、こんなに格好いいお兄さんがいて。」、
「そ、そんな事・・・。」
虹歩は否定しながら、梨愛がどこまで知っているのか恐怖する。ひょっとしたら律月が女の子・・・自分の妹だということも知ってるのかもしれない。
「僕も、梨愛ちゃんみたいなしっかりした可愛い妹がいたらいいのにな。こいつったらまだ本当に赤ちゃんみたいでさ。」
「お姉さん?にも同じ事言われました。虹歩ちゃんたらお家では赤ちゃんなのね。でも、可愛らしい虹歩ちゃんにはぴったりかも・・・。」
虹歩を置き去りにして笑い合っている二人に、虹歩は何も言い返す事ができなかった。
「ほら、赤ちゃんの虹歩、電車の乗り方わかるか?」
律月がからかう様に言う。
「そ、そんなぐらいわかるもん!」
ランドセルの脇にぶら下げられた可愛らしい定期入れを機械にかざし、二人に連れられて虹歩は改札をくぐる。小児用の赤いランプが点灯し可愛らしい音が響くが、小学生の制服の虹歩を駅員は全く不審に思わない。虹歩にとってはそれも屈辱であった。
朝のホームは通勤・通学の人々でごったがえしていた。慌ただしい人々は他人の事など気にしている余裕は無さそうだった。それでも、律月の凛々しさと梨愛の愛らしさは目を引き、時折舐めるような視線にさらされる虹歩はその度に体を赤らめた。
「ほら見て、あの子可愛い♪」
目の前を通り過ぎる二人組の女子高生が梨愛を見て高い声を上げる。
「ほんとだ。桃鳳の子かな?・・・あっ!見てみて、隣の子もすっごく可愛いよ。」
振り向き様に指さされ虹歩は面食らう。
「あーほんとだ!二人ともモデルさんみたいね。あんな子、妹に欲しいわ。お母さんに頼もうかな♪」
遠慮無く大きな声で話しながら立ち去る二人に虹歩は小さく呟いた。
『・・僕の方が・・・・僕の方が本当は年上なのに・・・』
すぐにやってきた電車はすしずめ状態だった。長年人混みを経験していない虹歩にとって、それは未知の乗り物の様だった。
「こ・・・これに乗るの?次のにした方が・・・」
困惑している虹歩の頭を律月が軽く叩く。
「ばかだな、これから更に込んでくるんだよ。すくのを待ってたら遅刻しちゃうぞ。」
「梨愛ちゃん、はぐれない様にしっかり手を繋いでるのよ。」
10歳も年下の女の子にそんな風に言われても、今の虹歩は頷くしかなかった。
学校までは一駅なのでできるだけドアの近くにいたい虹歩だったが、人混みに押されどんどんと車内に押し込まれる。その反動で二人の手も離れ、虹歩は泣きたい程の孤独感に襲われた。
『律月・・・・梨愛ちゃん・・・どこにいるの!』
二人を探す虹歩だったが、体を回すことも出来ず、背の低い虹歩には目の前に立っているOLの背中しか見えなかった。
『だ、大丈夫だよ・・・次の駅で降りればいいだけなんだから。』
必死に自分に言い聞かす虹歩だったが、次の瞬間体をこわばらせた。
『な・・何っ!?』
太ももに冷たい手の感触・・・初めは偶然だと思ったが、その感触は舐めるように大体からお尻の方に近付いてきた。
『ま・・・まさか・・・痴漢!!??』
電車はすでに動き出している。逃げ出すことも悲鳴を上げることもできず、虹歩は硬直した。
『お、お願い・・・やめてよ・・・・冗談だよね・・・・』
虹歩の願いもむなしく、その『手』は制服のチェックのミニスカートをまくりあげながら虹歩のお尻をまさぐりだした。
『ああっ、ぼく・・・ぼく・・・男の子なのに・・・痴漢されちゃってるっ!!』
男であるがために、大声をあげる事もできず、虹歩はその行為に耐え続けなければならなかった。やがて、『手』はお尻では飽きたらず股間をまさぐり出した。柔らかな生地でできた女児ショーツの厚いステッチ部分を撫でられ、不覚にも虹歩は少しだけ・・・ほんのすこしだけ感じてしまう。
『ああっ・・・そんな・・・ぼく変態さんみたいだよ・・・。こんなの嫌だよっ!』
抵抗しない虹歩に、『手』はますます大胆になり、今度はもう片方の『手』が完全にスカートをまくり上げ、腰の部分からショーツの中に侵入してきた。次第に大胆になる動きは優しく虹歩のお尻を揉み始めた一方の手は股間の前部をまさぐり始めた。
『あっ・・・!だめ・・・・前を触られたら・・・男の子だってばれちゃうよ!』
虹歩は必死に右手でスカートの下から、股間の『手』を牽制した。しかし、その抵抗に『手』は一段と興奮をましてしまった様だ。ニョロニョロと蠢くその10本の指が前と後ろから虹歩のお尻をなめ回す。
『あっ!!だめっ!!』
一瞬、手の動きが止まった。『手』が虹歩の『男の子』に触れたのだ。それは電車が駅に着くのと同時だった。
『あぁんっ!恥ずかしいよ・・・男の子だってばれちゃった・・・・きっと、男の癖に、女子小学生の制服・・・こんな短いスカートで電車に乗ってる変態だと思われちゃった
んだ・・・』
虹歩は大粒の涙を流し、紅潮した顔で慌てて電車から飛び降りた。
第21章 恥ずかしい体操服
痴漢をされた事など、梨愛には、まして律月には言えなかった。虹歩はお尻に残る気持ちの悪い感触を感じながら学校へ向かった。
校門で律月と別れると、梨愛は一変した。
「どう、お尻のは?」
その笑顔は先程とは似て非なるものだった。
「梨愛ちゃん・・・・気持ち悪いよ。早く抜いて・・・」
「二人の時は、『ご主人様』でしょ。はい、言い直して」
「・・・ご主人様、お尻のものを抜いて下さい・・・」
こんな小さい女の子に向かって、お尻のものを抜いて下さいなんて・・・・しかし虹歩には、そう懇願するしかなかった。
「じゃあ、授業の前におトイレ行こうか。」
二人は教室にランドセルを置くとトイレに向かった。初めての女子トイレ、しかも小学校の女の子用のトイレに入るのはためらわれたが、おどおどしてると返って怪しまれる。虹歩は梨愛に手を引かれたまま、その女の子の聖域に足を踏み入れた。
さすがに桃鳳のトイレだった。小学校のトイレとは思えない、たくさんの広い個室に便座にはウオッシュレットまで付いている。二人は誰にも見られないように、二人で個室に入った。
「じゃあ、後ろを向いてスカートを捲りなさい。」
梨愛が昨日の放課後の口調で命令する。虹歩に逆らう権利など無かった。虹歩は梨愛のなすがままに後ろ向きにされ、手を便座について前屈みになり、お尻を梨愛の方に向けた。「おとなしくしてるのよ」
梨愛は虹歩に覆い被さるようにすると、後ろから両手で虹歩の股間に手を伸ばした。
「あっ!なにするの!」
「あれー、ショーツ濡れてるじゃない?もうお尻で感じるようになったの?いやらしい子ね。」
それは今朝の痴漢に感じさせられたシミだった。恥ずかしさと惨めさで虹歩は泣きたくなる。
「ほら、なんとか言いなさいよ。私はお尻で感じる変態さんですって。」
梨愛は虹歩のものを左手で握りしめ、上下運動をはじめる。
「あ、ああっだめっ!」
女の子にこんな事をされて感じない男の子はいないだろう。虹歩のおちんちんは次第に大きくなり、それと同時に梨愛の右手がお尻のプラグにかかる。
「ほら、虹歩ちゃんの幼児みたいなちっちゃいおちんちんが気持ちいいって言ってるわよ」
「そんあ・・そんな事ないもん!」
そう言いながら虹歩は、屈辱の中にこれまで味わった事のない快感を感じていた。
「こっちはどうかな?」
梨愛は右手でプラグを動かしはじめる。
「ああっつ、そんな事しちゃだめっつ!」
梨愛は左手の上下運動を激しくすると、虹歩の限界と同時に梨一気にプラグを抜き取る。それは、お尻の刺激と同時に射精する感覚を虹歩に覚え込ませるためだった。
「ほら、出すときは『いっちゃう』っていうのよ」
「ん・・・んっ・・・あーっ!!いっちゃう!いっちゃうよー!!」
朝から梨愛に犯されてしまった虹歩は初めての授業も身が入らなかった。1時間目の国語、2時間目の算数。どちらも虹歩が予想していたより遙かに高度な授業で・・・・それはもちろん小学校で教わる内容には違いないのだが、虹歩の理解を超える応用問題や深いところまで踏み込んだ授業に、ときおり理沙に指名された虹歩は何も答えられず、年下の同級生達に冷ややかな目で見られた。
「ほら、3・4時間目は体育だから更衣室に行くわよ。」
桃鳳では、低学年でも更衣室が用意されている。虹歩にとってそれはある意味、女子トイレ以上に足を踏み入れにくい場所だった。そしてそれ以上に、自分が女子の体操服に着替えなければならない事実に虹歩はめまいさえ感じた。
クラスでただ一人の味方であるかもしれない梨愛に案内され、虹歩は理音の用意してくれた体操服入れを持って女子更衣室に向かう。小さな女の子らしい元気なおしゃべりの中にも、更衣室独特の雰囲気が感じられ虹歩は身を固くした。
桃鳳の女子体操服はエンジのラインの入ったシャツに、昔ながらの紺色のブルマだった。ずっと考えないようにしてきたが、もうここにきては逃げられない。それが分かっていても虹歩は鞄からブルマを取り出し途方にくれてしまった。
「虹歩ちゃん。ブルマは初めて?」
梨愛が囁く。もちろん男の子の虹歩にとってブルマ・・・・今時は小さな女の子でも恥ずかしいその衣装は初めてのものだった。
「はーい。みんな早く着替て運動場へ出なさい。」
理沙が皆を促す。着替えるのが遅れたりして目立つのは嫌だ。もう、ためらっている余裕はなかった。虹歩はスカートをはいたままブルマに足を通す。足首のすこしきついゴムの感触が虹歩の羞恥心を刺激する。少しでも、遠回しにしたくて先にシャツを着る虹歩だったが、女児用の下着を梨愛に指摘され真っ赤になってしまう。
「ほら、急がないと授業に遅れちゃうわよ」
なれない着替えに焦る虹歩を梨愛が楽しそうにじっと見つめる。虹歩は思いきってスカートを脱いだ。まるで下着一枚の下半身の感覚に虹歩は愕然とした。
『こんな格好で外に出るの・・・・女の子ってこんなのなの・・・・』
気がつけばもう更衣室には梨愛と二人きりだった。
「恥ずかしいでしょ?男の子の癖にブルマなんて。さあ、みんなに虹歩ちゃんの可愛いブルマ姿披露しましょうね。」
梨愛の意地悪な言葉に虹歩は違和感を覚える。
「梨愛ちゃん、それって・・・・」
「ん?学校指定のジャージに決まってるじゃない。もしかして虹歩ちゃん持ってこなかったの?」
梨愛はブルマの上にくるぶしまである赤いジャージをはいていた。
「まだ寒い季節だし、なにより3年生にもなってブルマなんて恥ずかしいもの♪虹歩ちゃん勇気あるわね」
「そ・・・・そんな・・・・」
「白川さん、水野さん何してるの?」
理沙が業を煮やしてやってきた。有無をいわさず運動場に連れ出された虹歩の目に映ったのは、短パン姿の男子生徒と、一人残らず梨愛と同じ赤いジャージ姿の女子達だった。
「なによ、あの子・・・・3年生にもなるのにブルマのままなんて。」
「男の子の気を引きたいのかしら、いやらしいわね。」
虹歩に聞こえるように口々に話されるその声は虹歩を絶望させた。
第22章 ブルマーでドッジボール
理沙の指示で児童たちは運動場の真ん中に集められた。子供達は自然に男の子と女の子の集団に分かれるが、虹歩はどちらの集団にも入れずに二つの集団の間に所在なげに立ち尽くす。
最近は男の子も成長が早い。桃鳳の生徒ともなればなおさらだ。男の子はちらちらと不自然に虹歩の方を振り返る。その視線が虹歩の下半身、ブルマーとそこからすらりと伸びた可愛らしい足に向けられているのは明白だった。
『ああ、恥ずかしい・・・早く体育の時間なんて終わってほしい・・・。』
腹痛でも訴えれば、この場から逃げられるかと考える虹歩だったが、またそんな目立つ事はしたくなかった。今はただ目立たない様に時間が過ぎるのを待つのが虹歩に出来る精一杯の事だった。
「はい、今日はドッジボールをしまーす。」
理沙の発表に子供達から喜びの声が上がる。ただ走るだけの徒競走や退屈な器械体操に比べれば子供達が喜ぶのは当然だろう。
『ドッジボールか・・・』
しかし、虹歩はドッジボールという、他人にボールをぶつけるその乱暴な遊びが好きではなかった。球を当てられるのはもちろん、人にボールを投げつけるなんていう行為は虹歩の性格からして苦手なのは当たり前かもしれない。
みんなで運動場に白線を引き、出席番号順に児童達は男女混合の赤白2チームに分けられた。虹歩は赤組。被っていた赤白兼用の帽子を裏返して赤色にすると、虹歩はおっかなびっくりとコートの中に足を踏み入れた。
「いくぞーっ!」
ゲームが始まった。クラスでも一番大きな男の子が外野から虹歩達目がけてボールを投げつける。野球でも習っているのか、虹歩よりはるかに大きなその男の子投げるボールは、もの凄いスピードで虹歩の隣に立っていた別の男の子の足にぶつかる。とてもキャッチできる様なボールではない。
「たっくん、あいかわらずすげーな!」
同じ外野の子供達から喝采の声が上がり、たっくんと呼ばれた男の子は自慢げに胸を張る。ぶつけられた男の子は頭をかきながら外野へ向かうが、その子の足が赤くなっているのをみて虹歩は青くなった。
『う・・・うまいこと軽く当たって外野に行かなくちゃ。』
しかし、虹歩のその極端に怯えた表情は却って男の子達の標的になってしまった。
『恥ずかしがり屋で気が弱そうなのに、大胆に一人ブルマ姿のちょっと可愛い転校生』の虹歩はいつのまにかコートの真ん中で一人ボールを必死に避けていた。他の生徒はコートの端に寄り、外野の男の子達の眼中には虹歩だけしか入ってない様だった。
彼らは、虹歩がボールを受け止める勇気など無いことを百も承知で、わざとゆっくりなボールを投げたりして、踊りでも踊ってるかのように必死に逃げ回る虹歩の姿を見て笑いあっていた。その滑稽な姿に端で避けている女子児童からも失笑の声が漏れる。
「お尻だったら当たっても痛くないかもよ。」
「そのブルマーのお尻突き出して、『ここに当てて下さいって』男子にお願いしたら?」
虹歩はそんな声に恥ずかしさと腹立たしさを感じながらも、次々と飛んでくるボールから逃げ続けるしかなかった。
「コラッ!転校生をあんまりいじめないの!」
さすがに見かねた理沙が声をあげた事が、虹歩にとって更なる不幸だった。
理沙の声に驚いたのは男の子達では無く、虹歩自信だった。ふいに動きを止め、理沙の方を振り返った虹歩の鼻に目がけて、「たっくん」の投げたボールが見事に命中してしまったのだ。
「あうとーっ!」
大声で喜ぶ男子達。虹歩はその声を遠くに聞きながら仰向けにゆっくりと倒れて行った。
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真っ白い天井。微かな薬品の香り。どうやらベッドに寝かされているらしい。
「あれ、僕はまだ療養所にいたのかな?」
そんな筈はなかった。虹歩の記憶に最近の数々の恥ずかしい記憶が残っていたからだ。
『ああ、体育の時間に倒れたんだっけ・・・。とすると・・・』
「あら、目が覚めたのね?」
側のカーテンを開け現れたのは長い黒髪に細い眼鏡、いかにも女医という感じの女性だった。長身に白衣が良く似合っている。桃鳳ともなれば、初等部の保健室にも女医が常駐しているのだろう。
「診た感じは大丈夫だったけど。どう?どこも痛くない?」
女性にしては、低く落ち着いた声が静かな保健室に響く。
「あ・・、はい。僕、いや・・・わたしどれくらい寝てたんですか?」
「ほんの1時間程度よ。大丈夫、ボールが頭に当たって軽くショックを受けただけだから。」
ああ、そうだ。虹歩の頭にぶつかる寸前のボールがはっきりと蘇った。
「どう?立てる?」
そう言われて体を動かそうとした虹歩は下半身に違和感を感じた。
『あれ・・・たしかブルマーをはいていた筈なのに。』
虹歩はシーツの下に手を滑らせ自分のお尻に触れてみる。柔らかいコットンの感触。
「あ、あの・・・。」
「ああ、覚えてないのね。ブルマーなら脱がせちゃったわよ。」
「ど!どうして!・・・」
「あらあら、こんなブルマーを履いてたら風邪をひくでしょ。」
そういいながら、虹歩の目の前に突き出されたビニール袋には、ぐっしょりと濡れたブルマーと見覚えのあるショーツ。虹歩が今日履いていた子供用のショーツが入っていた。ショーツはほのかに黄色く染まっていた。」
「あ・・・あ・・・。」
ショックで口を開けたまま声の出せない虹歩に現実が突きつけられる。
「そっ、あなたは転んだショックで漏らしちゃったのよ。水野さん。」
「そ、そんな・・・あっ!!」」
虹歩はもっと深刻な事に気がついた。今履いているのは新しいショーツだ。だとすると、誰が履き替えさせてくれたのか。その時虹歩はようやくお尻の中が妙に楽になっている事にも気が付いた。
「そ、その・・・えっと・・・」
なんと尋ねてよいかわからず、戸惑う虹歩の気持ちを全部分かっているかの様に女医は二三度うなずくと、白衣の左のポケットに手を突っ込んだ。
「自己紹介がまだだったわね。私、保健室担当医の香川莉香。よろしくね、水野虹歩『くん』」
ポケットから出された莉香の左手には、先ほどまで虹歩のお尻に入っていたバイブが握られていた。